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このコンテンツは、地球・人間環境フォーラム発行の「グローバルネット」と提携して情報をお送りしています。

第81回 企業による海外での森林保全活動〜成功の秘訣

  • 2010年10月14日

特集/シンポジウム報告 みんなで守り育む世界の森〜企業とNGO/NPOのパートナーシップによる森林保全活動 企業による海外での森林保全活動〜成功の秘訣 コンサベーション・インターナショナル日本プログラム代表 日比 保史さん

 「成功の秘訣」というタイトルですが、成功の秘訣を知っている訳ではなく、むしろ教えて欲しいほど現場では毎日苦労ばかりです。
 団体としては、1987年の設立以来、個人としては7年ほど森林問題に力を注いできましたので、その経験や感想を交えながら、企業とNGO/NPOのパートナーシップによる森林保全について提案をしたいと思います。

企業の植林活動の課題

 日本企業のCSR(企業の社会的責任)の中では圧倒的に植林活動が多く、先日も企業を対象に生物多様性をテーマにしたセミナーを開いたところ、集まった企業のほとんどが何らかの形で植林と関わっていました。今年10月に生物多様性条約の第10回締約国会議(COP10)が名古屋で開かれますので、生物多様性に関しても何かやりたいという企業が最近は非常に増えています。企業価値が高まり、社員の満足度が高まるという背景があるように思います。

 これまで企業が取り組んできた植林について、整理するといくつか課題が見えてきます。まず、何のために植林をするのかを社内でしっかり議論している企業が多くありません。社内で協議できないので、パートナーのNGOや地元の行政とも協議できないケースが多々見られます。CSR活動として体外的に示しやすく、担当者が経営陣に理解してもらいやすいために選ぶという話も耳にします。成果を明確に示すために何本植えました、何年までに何本植えますという記述が、CSRレポートでは非常に多く記載されています。
 社会貢献が「甘え」になってしまっている面もあります。一生懸命稼いだ利潤を使って行うのに「甘え」とは何だと思われるかもしれませんが、自発的に行う取り組みだからこそ、社会として何が求められていて、どのような取り組みをすれば社会に貢献するかということについて、突き詰められていない例が多いのも問題です。

大局的に森林の果たす役割を考える

 全体的な森林の状況についてお話します。毎年世界で1,400万haほどの森林が失われているというデータがあります。最大の要因は農地への転換です。鉱物資源を掘る際に開発が行われることや、原木自体を消費することも影響しています。日本は木材の8割を海外から輸入しています。気候変動の影響もこれから大きく関わってくるだろうといわれています。生物種はどのような状況でしょうか。哺乳類だと約2割、鳥類だと1割、両性類だと3割近くが現在絶滅の危機にあるといわれています。その大きな要因が森林の破壊です。

 生態系のさまざまなサービスによって、初めて人間は豊かで安全な、健康な生活、人間らしい文化的な生活が送れます。古代から世界中の人びとが感謝しながらきた生態系の恵みが、最近科学的に整理され、その価値が見直されるようになりました。

 森林には、食糧や木材の供給のほかに、水の涵養や浄化、洪水などの防災機能もあります。2004年末のスマトラ沖地震では、マングローブ林などが残っていた所と、伐採してエビの養殖場などにしていた所ではかなり被害の差があったという報告があります。森林を破壊すると、水が蒸発する作用が失われますので、雨が降らなくなります。雨が降らなければ、今度は地下水や川が枯渇し、逆に雨季が来て雨が降ると、一気に水が流れて洪水が起きます。

 また、森林が失われたことにより気候変動が促進されます。森林は二酸化炭素(CO2)を吸収し固定しているので、森林が失われると大気中にCO2が排出されます。現在、世界の人為的なCO2の排出量の17%は森が失われることで排出されており、そのほとんどが途上国で起こっています。森林が提供する生態系サービスの経済的価値は4.7兆ドルになるという試算があります。1997年の世界のGDPが約18兆ドルなので、その4分の1を占める価値です。

 森林に直接的に依存するのは途上国の人たちです。その多くは絶対的貧困といわれる1日1ドル未満の収入で暮らす人たちで、生態系に密接に依存する人たちです。これらを無視して森林を語るというのは無意味ではないかと思います。

 また、今後の世界人口予想では、今世紀中には90億人ぐらいまで増えるといわれており、今後森林の問題をどうしていくのか。木を何本植えたかと数えるのではなく、人口が急激に増加する中で森林をどう守っていくのか。生物多様性を守るために森林はどのような役割を果たし得るのか。気候変動の問題などを大局的に考えることが社会に対する責任、貢献なのではないでしょうか。

本当の意味での最終目標は

 これまで話した課題に対して、どのように森林事業を実施すればよいのか。一つは最終目的を考えるということです。何本植えるというのは目的ではなく、あくまでも目的に対する指標の一つであるべきです。社会が抱えている問題を解決するために、いかに貢献するかが重要な視点です。

 ある企業から「その地域では苗木が1本50セントするらしいので、50セントで予算を割ると何万本植えられますね」という相談がありました。実は、植林では苗木の費用は、ある意味一番どうにでもなる部分です。それよりも苗木を植えるまでの間、どこに、誰が、何を、いつから植えるのか。植える土地の所有状況や法律はどうなっているのか、地元の人たちはそもそも木を植えたいのか——などを全部調整しなければなりません。
 木を売って大儲けしようというのではなく、今日明日生存するため、子供たちを学校に行かせたいという気持ちの現地の人たちを相手に、「木を植えましょう」「森を守りましょう」ということの意味をまず理解してもらい、さらにそれをプロジェクト化していく難しさがあります。木は成長して森になるまで時間がかかりますし、その間、日本から人が来て維持することはできません。苗木を植えた後、森林に育て、何世代にも渡って維持していくのは、現地の人たちです。植林活動とは、現地の人たちの生活のあり方、人生のあり方を変えてもらうことなのです。先進国から関わる側は、それだけの覚悟が必要です。

「活動」ではなく「事業」を

 次に、植林は活動ではなくて事業として考えることです。私は、個人的には活動というと無責任な響きがあって「活動を頑張っています。でも活動が終わったらそこで終わりです」という気がするのです。しかし、事業というと、目標・目的があって、計画し、実施するための資金や人材も準備することのように感じます。植林や森林保護などは、自然が相手なので、最初に立てた計画通りにいくことはまずないのですが、さまざまなことを想定しながら財務的な計画も立てて実施することが重要だと思います。

 冒頭に、社会貢献が「甘え」になっていると言いましたが、成果をしっかり出していくことを考えながら進めることが事業なのではないかと思います。投入する資金に見合った成果や、目的に応じた成果が出ているのか、効果や効率性をしっかり評価することが重要です。

 また、企業の植林プロジェクトが何十年も続くということはあまりありませんから、プロジェクトが終わってもそこに住んで生活していく現地の人びとへの効果が、きちんと継続できる体制を作り上げることが必要です。そのような状況を作り出すのをすべて一つのプロジェクトの中でやるのは難しいので、まわりのほかのプロジェクトと連携することも必要です。

 また、消費者に「こんなよいことをやっています」と、わかりやすいことだけを伝えるのでなく、私たち人間社会は非常に難しい問題に直面しているのだということを伝えることに力を使ってもらいたいのです。

 これらを実施する上で、さまざまな専門技術や地元との関係、経験が必要になります。そのためににも、さまざまなセクター間との対等なパートナーシップが「成功の肝」だと感じています。

持続可能な森林プロジェクトモデル
出典=コンサベーション・インターナショナル
作成=ポンプワークショップ

(グローバルネット:2010年4月号より)


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