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このコンテンツは、地球・人間環境フォーラム発行の「グローバルネット」と提携して情報をお送りしています。

第71回 鉄仮説と糞仮説でよみがえる沿岸の海

  • 2009年12月10日

鉄仮説と糞仮説でよみがえる沿岸の海

無断転載禁じます

 二酸化炭素(CO2)による地球温暖化問題を解決するにはCO2を悪者扱いするのではなく、有益な無限資源としてとらえ、有効活用を図る方が自然であり無理がありません。植物や植物プランクトンなどクロロフィルを持つものはCO2と水と太陽光で光合成し、糖でんぷんと酸素を作り出しています。糖でんぷんは動物、植物を育てる栄養となり、酸素は水中や大気中に供給され、呼吸に、そして大気の浄化に寄与すると同時にオゾンにも変化します。森や林などの木々ばかりでなく、地球のあらゆる場所で海、川など水のある所ならどこでも誰でも参加、貢献できる地球温暖化阻止の方法があります。
 それは、広い海の「みどり」に注目することから始まります。大海原がCO2を吸収し、溶存してくれるフィールドであり、無限の広がりがある自然の器で、溶存したCO2が水中の生き物や植物で消費、吸収されたり、サンゴ殻・貝殻などの炭酸カルシウムやその他の形で固定化されれば、どんどんCO2を受容してくれます。その上、水中の食物連鎖のエサや栄養に変換してしまうという発想です。これはCO2を地中層に閉じ込めたり、深海底にメタンハイドレードのような形態で沈めておく人工的、人造的な方法とはまったく違う自然による消費、消化です。

海や川で鉄イオンが果たす役割

 一人ひとりが、ほんのわずかな水域に鉄イオン(Fe2+)を供給するお手伝いをする活動として、私たちの日常生活の中で、理由も知らないまま活きている超ハイテクの英知の例を見てみましょう。

  1. 毎日包丁を研ぐ職業、「魚屋」「寿司屋」「料亭」などの排水溝はドブ臭くない。
  2. 農業では鎌を研いだり、鋤・鍬で田を耕すが、今は耕運機で田畑を掘り起こし、その刃の摩耗が鉄イオンの補給につながる。
  3. 今では少なくなったが、農家は赤土を田畑へ客度して鉄分やその他のミネラルの補給をした。
  4. 古い鉄橋の下ではシジミ貝がよく獲れる。鉄イオンの豊富な河川にはヘドロが堆積していない。
  5. エンジンを外さないままの沈船漁礁や自然石漁礁は、コンクリートなど人工漁礁とは比較にならないほど優れた、魚たちのゆりかごをつくる。

 自然の大循環の中で山に森や林がなくなれば、水もかれ、生き物がいなくなるのは当然です。それ以前に、山で作られ、海への重要な贈り物の栄養、腐食酸鉄という安定した鉄成分を含むミネラルの供給が止まり、循環や連鎖が断ち切られてしまいます。  山林の荒廃、針葉樹の植林化、竹林の繁殖、ダムなどのせき止め、水域と陸地との分断。宅地やゴルフ場などの土地開発により山から海への贈り物となる自然の腐食物質の栄養ミネラルが届かなくなりました。同時に、人工の生活排水、産業排水(農業肥料、農薬、動物汚水)、工業排水や化学物質の排出が増えて自然のバランスが崩れ、赤潮、アオコ、磯焼けなど目に見える弊害が発生しています。サンゴや貝、エビなどの甲殻類の浮遊幼生、魚類の稚魚、水草の種子、藻の胞子などたくさんの動植物が、繁殖や定着の場所を求めて、漂い、さ迷っています。

鉄炭だんごが山、川、野、海、空も人も善くする

 私は、腐食酸鉄など鉄イオンの供給が不足しているのではという仮説のもと、30年近く前から百姓の立場で山と野と海の関係を通して鉄炭団子の検証を続けています。山は植林されても間伐されないままの状態、竹林は山を覆い尽くすほど繁茂し、手入れされずに放置されています。これらの邪魔者扱いされている間伐材や竹を有益資源として活用するため、炭化させて「炭」と「液」をつくることを考えました。この炭と町工場から出る鉄の切りくず、切り粉とを密着、固形化した団子を作りました。これを河、川、池、海の中にまくと、水を媒体として炭と鉄の密着部に局部電池ができ、酸化還元反応が起こり、鉄がなくなるまで鉄イオンが湧出します。するとヘドロの中にある養分を微生物や植物などに吸収、消費しやすくし、微生物が増殖します。食物連鎖も活発になります。
 木や竹を炭化する折に副生する木竹酢液のタール分を取り除いた後、灰や石灰を加えて中和すれば、自然植物由来の素晴らしい液体肥料ができるので、田や畑にこれを利用すれば、無駄のない循環ができます。都会でベランダや庭先で野菜や花木を育てるのにも役立つ。限界集落や過疎化も防ぎ、多岐にわたって就労の場がつくれると同時に、山も海も空も人もいきいきしてくるのです。
 水中での食物連鎖の起点は海中林と植物プランクトンですが、供給が減少している必須ミネラルの鉄イオンを「ほんのわずかでいいので供給のお手伝いをする」ことで植物プランクトン界全体の生態バランスをアップさせます。私は以下の愚説をたてて実践しています。

  • 植物プランクトン界の増殖と生態バランスの向上を図れば、「食物連鎖」も「光合成」も活発となり、水界全体が復活する。
  • 水産初の食糧資源も産業資源(バイオエタノール、肥料、微量金属の回収)も増産、開発できる。
  • 水界の活性と復活は水中の腐植有機物質を産み、植物や水中植物由来のクソとフンをつくり、動植物のエサや肥料となると、永続性をもつ自然大循環の始まりとなって地球全体を保全する。

シャーク湾に見た鉄仮説と糞仮説の融合

 次の事実は著名な漁師さんの土産話です。オーストラリアは一枚岩のエアーズロックで有名ですが、これに代表されるようにオーストラリアの大地は鉄の大地で、不毛地帯が広がる一方で、酸素を出すストロマトライト(バクテリアによって酸化し、海水中に沈殿した鉄分でできた岩石)もあります。この不毛の地の湾にジュゴンがたくさん生息し、そのエサとなる海藻のアマモが絶えることなく供給されるように生えてくるのか? という疑問を持った時、「鉄仮説」と「糞仮説」の融合に出会いました。
 太古、大森林だった頃、山から海へ豊富に栄養が運びこまれ、植物と動物の循環、連携ができあがったと仮定すると、海藻のアマモは大繁茂し、そこに水中の食物連鎖が起き、無限の糞が生産され、それが肥料や栄養として消費されます。その時、植物や植物プランクトンにとって必須のミネラル・鉄が不足するはずですが、そこはオーストラリアの大地から鉄イオンとその他豊富なミネラルが無限に供給されてきます。だからサンゴも水産資源も豊かな大海原と美しさを保っています。この自然の営みを見て直感し、何かを反省すべきではないでしょうか。

自然の底力を引き出す謙虚さを

 海のゆりかごの役目をする干潟は激減し、昔、砂浜には砂鉄が黒くきらきら輝いて見えていたのに、今は磁石で探ってもほとんど付着しなくなりました。この砂鉄の量に比例して海産物の減少も連動しているように思えてなりません。鉄イオンを供給して、食物連鎖の被食の頂点にある植物プランクトンを生み、動物プランクトンに食させ、これを貝類が食して大きくなる。貝殻は炭酸カルシウムのかたまりであり、まさにCO2を貝殻の形で固定化した状態です。貝はさらに水中で食物連鎖を生みますが、重要な水産食糧資源ともなり、水の浄化においては、これ以上優れた装置を人は作れないのです。
 人類が生存し営みを続ける以上、排出し続ける化学物質を自然力で消費、吸収、消化してこそ、地球崩壊のベクトルが止められます。賢人(学者、政治)の力でなく「自然の底力」を引き出す人類一人ひとりの配慮と謙虚さが大切だと思います。

(グローバルネット:2009年6月号より)


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