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われわれは過去200年、石炭、石油、ガスなどの化石燃料を燃やし続けてきました。このことが温暖化現象を出現させたのです。 今年の2月2日にIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は次のような結論を出しました。
私の母国インドネシアの話をしますと、海岸沿いでは海面の上昇、海水の浸食で住民は家を失うでしょう。住居の損失は戦争による損失よりも大きく、環境難民のほうが戦争難民より多くなろうとしています。 エネルギー転換における国際金融機関の役割は重要です。1992年のリオ会議以来、世界銀行グループが火力発電を含む化石燃料開発プロジェクトに融資した金額は280億ドルにも上ります。1992年以来、世銀の化石燃料融資で発生したCO2発生量は434億t。これを森林で賄うと870万平方km²、ブラジルと同じ面積を必要とします。 世界銀行が再生可能なエネルギー開発に融資した金額は化石燃料に融資した金額の17分の1にすぎません。日本は世界銀行の5番目の大株主で、アジア開発銀行の最大の株主です。もっと頑張ってもらいたいと思います。 日本の国際協力銀行(JBIC)は世界でも有数な国際金融機関ですが、2004年の融資実績では、石油輸入の14.7%、天然ガスの94.2%、石炭の34.5%を占めています。 世界銀行は世論の反発に応える形で採取産業に関する特別チームによるレビュー(EIR:Extractive Industries Review)を行い、2003年に次のような勧告を出しました。
しかしながら、世界銀行はこれらの勧告に従わず、依然として化石燃料開発に融資を続けており、再生可能なエネルギーの開発にはわずかなお金しか使っていません。再生エネルギーに転換するせっかくの機会をみすみす失っているのです。世界銀行は手遅れになる前に方向転換をすべきだと思います。 それではどのような代替エネルギーがあるのでしょうか。低炭素エネルギーには、天然ガス、バイオエネルギー、水力発電などが考えられます。 天然ガスは、化石燃料に比べてよりクリーンなものと考えられています。燃やすときのCO2の発生が少ないからです。しかし燃えずに大気中にメタンとして放出されるとCO2の数倍もの温室効果があります。石炭層、ガス施設、パイプラインからの漏洩ガスには気をつけねばなりません。 水力発電はダム建設を通じ自然および地元社会に破壊的影響を与えますし、近年の研究ではダム湖が温室効果ガスの発生源になることがわかってきました。 バイオ燃料は小規模農業を大規模化し、森林を破壊するのみならず、食糧と競合することにより、食糧の価格を高め、社会の貧困層に飢餓と一層の貧困を強いることがあります。バイオ燃料の急速な増産は失業と人口の過疎化を招き、村落を疲弊させ、文化、伝統、言語まで破壊することが考えられます。過度の農薬の使用は河川、湖沼を汚染し、人体に影響を与え、環境を壊し、予測できないリスクを生み出すかもしれません。 クリーンエネルギーの利用は、一つに集中するのではなく、できることは何でもやっていくことが重要です。 気候変動は、現在人類が直面している最重要課題です。解決までの時間はあまり残されていません。地球の平均気温が2℃上がると数千万人が生命と財産を失い、百万の種が消滅するといわれています。人類で一番影響を受けるのは貧困で弱小の人たちです。 こういった悪影響を避けるためには2015年までに温室効果ガスの発生のピークを抑えて減少させなければなりません。ですから、5年以内に選択をしなければならないのです。政治家は行動を起こすことを決断しかねていますから、法的拘束力のある国ごとの排出削減目標でもって規制をかけるように世界の指導者たちに呼びかけなければなりません。 まず、気候温暖化がわれわれの直面する大問題であることを知り、かつ、制御可能であることを認識しなければなりません。そして即座にアクションを起こさねばなりません。 政府は京都議定書を守り2050年までにCO2の発生を60〜80%引き下げなければなりません。とくに先進国には最大の引き下げを実行する責任があります。われわれは化石燃料から再生可能なエネルギーに転換しなければなりません。大きな国際金融機関は融資を化石燃料開発から再生可能エネルギーの開発に切り替えなければなりません。 私たちはパラダイムを変える必要があります。「国を富ますためにはCO2の発生は不可避だ」という議論は正しくないのです。気候変動を防ぐ方法はたくさんあります。エネルギー需要を削減し、技術を使ってエネルギー効率を高めることでCO2の発生を減らすことができます。また、再生エネルギーの開発を推進することも重要です。化石燃料から脱却し、どうやってクリーンエネルギーを供給するかを考えていかねばなりません。 最後に四つの提案をしたいと思います。
(2007年2月8日東京都内にて) |