これからはAIと映画を創る時代。ハリウッドで広がる「人間×AI」の波

  • 2025年5月19日
  • Gizmodo Japan

これからはAIと映画を創る時代。ハリウッドで広がる「人間×AI」の波
Image: Generated with ChatGPT

映画好きとして、映画業界におけるAI使用について複雑な感情を抱いていますが、ハリウッドはすでにAIと人間の協働に向けて積極的に動き出しているみたい。

というのも、もうすでにハリウッドでAIを物語作りの中核に据えた長編映画が本格的に制作され始めているんですって。AIを物語のテーマにしているのではなく、AIと共に映画作りをする世界の到来です。

AIとARで紡ぐ『Uncanny Valley』

AI活用の最前線にあるのが、先日発表されたSF映画『Uncanny Valley』。AIとAR(拡張現実)を駆使し、ゲームのような仮想空間に引き込まれる少女の物語なんだそう。

本作で監督・脚本・出演を務めるのは、Netflix『ロシアン・ドール』の主演で知られるナターシャ・リオンと俳優のブリット・マーリング。俳優である2人が、物語の構築にAIを積極的に導入している点が大きな話題になっています(数年前にはハリウッドでAI使用をめぐって長期にわたるストが起きていたのに…)。

本作には「VRの父」と言われるジャロン・ラニアー氏も技術監修の立場として参加。同氏は、人間の創造性を広げる補助線となるような技術活用を重視していることで知られているため、どんな映画体験を与えてくれるのか注目されています。

ナターシャ・リオン自身はこの作品を「ダイアン・ウィーストとダイアン・キートンが、マトリックスに旅して設計図を持ち帰るような映画」と形容。その説明からも、本作が型破りであることは伝わってくるのではないでしょうか。

使われるAIは「Marey」

『Uncanny Valley』の制作を支えるのは、AIスタジオ「Asteria」が開発した独自AI「Marey」。最大の特徴は、著作権クリアなデータのみを学習していること。映像設計やプロット構成などに関与するそうです。

とはいえ、AIが主導権を握るわけではなく、あくまで人間の創造性を支える補助脳として動く位置付け。人間の物語をより深く、より迅速に編むためのパートナーとしてAIが活用されるんですって。

ハリウッドで広がる「人間×AI」制作スタジオの波

『Uncanny Valley』だけでなく、近年のハリウッドではAIと人間による協働型制作体制が広がりを見せています。もっとも有名なのはAIワークフローを開発した「Staircase Studios」。同スタジオのAI映画制作責任者であるブレット・スチュアート氏は、AI技術を活用することでメジャースタジオにも匹敵する品質の作品を作ろうとしています。

AIを使う利点は、ビジュアルや編集工程を効率化し、人間を演出や脚本に集中させる構造を作ること。また、制作コストが劇的に下がるので、これまで埋もれていた小さな物語が映像化される機会も増えるでしょう。

何を隠そう、私も学生時代に執筆した短編映画を画像生成AIを使って映像化しました。描いていたビジョンが全て完璧に映像化されたわけではありませんが、想像以上のクオリティが生成されたときはなんともいえない感動がありましたね。

AIは創造を助けるか、壊すのか──揺れる倫理観

とは言え、いいことばかりではありません。AI映画の増加に対しては、懸念や批判も根強くあります。

誰が著作権を持つのか? クリエイターの職は奪われないか? AIが作った物語に「魂」はあるのか?

2024年に公開されたホラー映画『悪魔と夜ふかし』は傑作の呼び名も高かった一方で、クレジットにAI使用が記載されていて炎上。『ブルータリスト』や『エミリア・ペレス』も、音声でAIを使ったことが明らかになり激しい議論を巻き起こしました。

AIは環境に悪い?

それに、AI使用に関する懸念はクリエイティブな分野だけではありません。大規模言語モデル(LLM)の学習には膨大な電力が必要とされ、気候変動への影響も懸念されています。

先日、「AIに『ありがとう』や『お願いします』と言うだけで膨大な消費電力になっている」のがわかって大きな話題となりました。それが長編映画制作レベルだったら、どれほどの電力が使われるのでしょう。

つまり、制作プロセスでは予算を大幅に下げられたとしても、環境レベルで考えたらネガティブな影響にも目を向けないわけにはいかないのかも。

ただ、ハリウッドでの受け入れられ様を考えるとAIとの協働は増えはするものの、減ることはないでしょう。アカデミー賞すらAIを使用した作品でも受賞資格があると認めましたし。

そう考えると『Uncanny Valley』は注目に値する作品でしょう。同作が描こうとしているのは、「AIか人間か」ではなく、「AIと人間がどう共に物語を編めるか」です。

私たちはこの作品をどう受け止め、何を感じるのでしょうね。

Source: them

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