人生はチャレンジだーー。 誰の名言かは諸説ありますが、一度は耳にしたことがあるフレーズ。
世の中にはいろんなチャレンジがありますが、いま前人未到のチャレンジをしようとしているアスリートがいます。 彼女は5000mの元世界記録王者であると同時に、1500mの世界記録保持者のトップアスリート。 フェイス・キピエゴン選手は、今回1マイル4分切りを目指す「Breking4」というプロジェクトでチャレンジを表明しました。
1マイルは1.6km。400mトラック4周分に当たります。ちなみに、1マイル走は特に北米を中心にポピュラーな距離で、アスリートの運動能力を測る指標のベースにもなっているそう。また陸上競技のみならず、若い人の体力テストやさまざまな競技のトレーニングでも取り入れられています。
さて、今回のチャレンジがどれほどなのか。
まず第一にこれまで女性ランナーが1マイル4分を切ったことはありません(男性では70年前にロジャー・バニスター選手が初めて4分切りを達成)。女性の記録で言えば、1989年にポーラ・イヴァン選手がマークした世界記録が更新されるまで、34年もの時間がかかっています。ちなみに、現在の1マイルの世界記録もキピエゴン選手。そのタイムは当時の世界記録よりも8秒更新した4分07秒64です。
今回、キピエゴン選手は自身が持つ記録よりも7.65秒縮めるチャレンジに挑むわけですが、前回の8秒更新までの歳月を考えると、2023年に達成した記録をわずか2年で塗り替えることができるのか?というところも焦点。
記録面のみならず、壮大なチャレンジをイメージできる要素としては、ほかにも。 彼女は1500mの世界記録保持者(2025年5月時点)。つまり世界最速なわけです。そのタイムが3分49秒04。1マイルなので、それよりも距離が100m増えた上で4分切りを狙うということは、単純計算で最後の100mを10秒台で走らないとならないわけですね。
100mを10秒台って、短距離を走るトップアスリートと同等のレベルです。こう考えると、前人未到のチャレンジであり、超人的なスピード(ペース)で走らないと達成できないチャレンジであることがお分かりいただけるかと思います。
先にも触れたように北米ではポピュラーな1マイルですが、日本ではあまり一般的な距離ではありません。 1マイルが、いったいどのくらいの感覚なのかを体感するため、都内にある陸上競技場で1マイルを走る、NIKEのプログラムに参戦しました。
まず、100mなどの短距離と違うので、全力疾走はできません。全力で走ったとしても、最後まで足が持たない。また長い距離(ハーフやフルマラソン)とはまた違うペースが求められます。おそらく長距離を走るペースでは1マイル走としては遅い気がします。という観点から、ペース配分がまったく想像がつきません。
Image: NIKEそこで、1周400mあたりのペースもわからないので、たまにフルマラソンの準備に取り入れているE(Easy)ペース走を基準に考えてみました。 Eペースというのは、人によって違うのですが、ぼくの場合は現時点で1kmで5分10秒前後。これは、会話ができて楽に走れるペースになります。このタイムを1周400mに換算すると、1分17秒50。このペースを落とすことなく4周走れるとは思えませんが、一応の目安になります。
事前に計算したこのペースでいざ!と意気込んでみたものの、肉離れという思わぬアクシデントがあり、当日は見学することに…。そこで、走ってみた方に聞いたところ、「かなりキツイ」としんどそうでした。「1周(400m)がこんなに長く感じるとは…」なんて声も。
やはり、あまり馴染みのない距離であるからか、400mをどのくらいのペースで走ればいいのかが感覚的に掴めないようでした。当日は、3つのペースに分けてチャレンジが行われましたが、本当にみなさん辛そうでした。
前人未到のチャレンジを決断したフェイス・キピエゴン選手。「走ることが大好き」という彼女が7.65秒縮めて4分切りを達成できるのか。今回の1マイルをチャレンジした方々は「偉業」であることを確信していました。
日々のトレーニングはもちろんですが、怪我なくベストなコンディションで当日を迎えられるか。そして、メンタル面。実現できるというタフな精神力も要求されることでしょう。0.1秒でも多く削り出すためのシューズやウエアのNIKEのイノベーションにも注目ですね。
本番は、2025年6月26日(現地時間)。パリで行われるその日まで、ワクワクが止まりません。
Source: NIKE