見るからに灼熱。太陽観測衛星ソーラー・オービターが「太陽の素顔」を撮影

  • 2025年5月9日
  • Gizmodo Japan

見るからに灼熱。太陽観測衛星ソーラー・オービターが「太陽の素顔」を撮影
Image: ESA & NASA/Solar Orbiter/EUI Team, E. Kraaikamp (ROB)

なんか熱まで伝わってきそう。本当に伝わったら蒸発するけど。

ミッション開始から5年、NASA(アメリカ航空宇宙局)とESA(欧州宇宙機関)による共同プロジェクトで打ち上げられた太陽観測衛生「ソーラー・オービター」が、これまででもっとも鮮明で細かい太陽全体の姿をとらえることに成功しました。人類がこれほどまでにくっきりとした太陽を見たのは、これが初めてかもしれません。

200枚のモザイクでできた超高解像度の太陽をチェックせよ

Image: ESA & NASA/Solar Orbiter/EUI Team, E. Kraaikamp (ROB)

上の画像に写っているのは、くすんだ黄色がなんとも神秘的な、100万度にもなる太陽のコロナです。私たちの目には見えない紫外線でとらえた姿は、息をのむほど壮大。

この写真は、2025年3月9日に地球から約7,700万kmも離れた場所から撮影されたもの。でもこれ、1枚ものの写真ではないんですよ。

実はこれ、ソーラー・オービターに搭載された「極端紫外線イメージャー(Extreme Ultraviolet Imager:EUI)」で撮った200枚の太陽の画像をつなぎ合わせて作ったモザイク写真なんです。

その結果、1万2544×1万2544ピクセルという超高解像度の巨大ポートレートが完成。ESAのサイトでは、好きなだけズームして細かいところまでじっくり見ることができますよ。お試しあれ。

太陽の素顔に迫る

ESAによると、この画像には太陽を形づくるいくつかの基本的な構造が映し出されているといいます。

太陽から伸びている糸のようなものは、太陽の大気「コロナ」で、私たちの目では見えない極端紫外線で撮影されています。

そして、太陽の表面に近い場所には「紅炎(プロミネンス)」と呼ばれる、暗く細長い糸状の隆起が見えます。高温のプラズマが太陽の磁場に沿ってアーチ状に立ち上がる紅炎の温度は1万度ほど。コロナの約100万度に比べるとかなり低くなっています。

太陽の表面を横切るように見える暗い帯は、「太陽フィラメント」と呼ばれる現象で、まるで燃え盛るしかめっ面のようにも見えますが、見れば見るほどいろんなものが浮かんできそうです。

表面に点々と輝く明るい部分は「活動領域」と呼ばれ、太陽フレアやコロナ質量放出(CME)といった爆発的な現象の発生源になっています。

そして、太陽の右側(真ん中右寄りのちょっと下あたり)には、磁場に沿ってアーチを描く「コロナループ」と呼ばれる構造もはっきり見えます。

ソーラー・オービターの目的と意義

ソーラー・オービターは、太陽の大気で起こる複雑で激しい活動のしくみを解き明かそうとする国際共同ミッションの一環として打ち上げられました。

なかでも注目されているのは、磁場がねじれたり切れたりしながら太陽嵐を引き起こすメカニズムの解明です。地球の人工衛星や電力網に影響を与えることもある太陽嵐(磁気嵐)の研究は、私たちの暮らしにも直接関わるため、とても重要なのです。

科学と芸術の融合

この画像は見た目にも圧倒されるほど美しいですが、実はそれだけではありません。太陽がどのように加熱されているのか、プラズマがどう動くのか、そして宇宙天気予報(太陽活動が地球環境に与える影響の予測)に関わる疑問を解き明かすための貴重なデータがたくさん詰まっているとのこと。

真面目な話、ソーラー・オービターってめっちゃすごくないですか? 燃え盛る太陽のそばまで探査機を送り込んで、灼熱(しゃくねつ)の太陽風を撮影しただけでもすごいのに、こんな超高解像度の画像まで届けてくれるなんて。

もう、これは科学の域を超えて芸術レベル。ルーヴル美術館に飾ってもおかしくないくらいの出来栄えだと思いませんか?

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