『ゲーム・オブ・スローンズ』でおなじみの「ダイアウルフ」が、現実世界に帰ってきました――、CGではなく本物の生命体として。
米バイオテック企業コロッサル・バイオサイエンシズ(Colossal Biosciences)が発表したところによると、約1万2,500年前に絶滅した古代オオカミ「ダイアウルフ(Aenocyon dirus)」のDNAをもとに、3匹の子オオカミの誕生に成功したそうです。科学者たちはこれを「世界初の本格的なディ・エクスティンクション(絶滅種の復活)」と位置づけています。
今回の大プロジェクトでは、古代の化石(13,000年前の歯と72,000年前の頭蓋骨)からDNAを抽出し、現代のハイイロオオカミと比較。そのうえで、ダイアウルフにしかない14の遺伝子の違いをCRISPRで再現し、DNAを組み換えた「ダイアウルフ仕様」の細胞を作成しました。
その細胞の核を、核を除去したハイイロオオカミの卵子に移植し、代理母犬に着床させた結果、ロムルス、レムス、カリーシという名前の3匹の白い子オオカミが誕生しました。
キューキュー声が可愛すぎます。
ただし専門家の間では、「これは遺伝子編集されたハイイロオオカミであり、厳密には本物のダイアウルフとは言いがたい」という声もあります。映画『ジュラシック・パーク』の恐竜が本物の恐竜ではないと言われているのと同じ理屈でしょう。
とはいえ、DNA情報がバラバラの状態からこれほどまでに古代生物の特徴を再現した例は、まさに前代未聞。これまで2003年に野生ヤギ「ブカルド」のクローンが一瞬だけ誕生した例がありますが、すぐに死亡しており、健康に生きる「復活動物」が生まれたのは史上初です。
コロッサル社は、他にも絶滅危惧種「アカオオカミ」のクローン繁殖にも成功したと発表。また、マンモスのような毛を持つ「ウーリーマウス」も作り出しており、2028年までにマンモスの復活を目指すプロジェクトも進行中です。
image: Colossal Biosciences ウーリーマウスたち今回の成果は、未来の生態系や保全活動に新たな可能性をもたらす一方で、倫理面や環境への影響といった課題も投げかけています。
人間による乱獲などで絶滅したタスマニアンタイガーやニホンオオカミならまだしも、約1万2000年前に環境変化などによって絶滅したと考えられているダイアウルフを現性に蘇らせることは、自然の摂理に反していないのかが気になって仕方がありません。
もちろん、ダイアウルフの赤ちゃんに罪はないし、可愛いし、見てみたいし、成長したらどうなるのか興味はあります。しかし「できることとやっていいことは違う」という言葉が頭をぐるぐるするのは私だけでしょうか。
Source:Live Science
こちらもオススメ:【Amazon.co.jp 限定】ギズモード・ジャパンのテック教室(特典:オリジナルステッカー) 1,760円 Amazonで見るPR