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6月11日は「傘の日」です。年々厳しさを増す日本の夏。今年も猛暑が予想されるなか、「どんな日傘を選べばいいのかわからない」という声も。紫外線対策や熱中症予防のためにも、日傘はもはや“おしゃれ小物”ではなく、“命を守る道具”としての存在感を増しています。
そこで、“傘ソムリエ”として知られる土屋博勇喜(つちや・ひろゆき)さんに、日傘選びの基本やチェックポイントを伺いました。
前篇では、猛暑を乗り切るための心強い日傘3本と、日傘の選び方のコツについて詳しくレポートします。
「実は僕、傘が大嫌いだったんです」。そう語る土屋さんは、もともと濡れることを厭わず、雨をしのぐ“非傘派”。そんな土屋さんが傘好きになったのは、前職のホームセンターでレイングッズ売場の担当になったことがきっかけでした。
「レイングッズ売場の担当になるとは思ってなくて、正直地獄でした(笑)。でも、ある日お客様に『何も知らないのね』とお叱りを受けて、お客様のお問い合わせにお応えできない自分が、ものすごく悔しかったんです。そこから『傘のことなら絶対になんでも答えられる店員になる』と勉強を始めました」
その後、自腹で200本以上の傘を購入し、自らの手で使用・検証するように。風が強い日はお台場で耐風テスト、ゲリラ豪雨発生地の汐留では撥水チェック、台風が接近すれば現場へ飛び込み、実験を重ねたそう。
「今僕が“傘ソムリエ”と名乗っているのも、自分で買って、自分で使って、本当に納得できたものだけを紹介したいからなんです」
美容のための“UV対策グッズ”としてだけでなく、今や日傘は“健康を守るアイテム”へと進化しています。しかし、店頭には「完全遮光」「UV100%」などのキャッチコピーが並び、どれを選べばいいか混乱する人も多いのでは。
「まず注目すべきは、傘についている“下げ札”です。UVカット率や遮光率、遮熱性能、撥水性などが明記されている商品を選んでください。これらは第三者機関の試験を通過した証で、性能を保証するもの。逆に、数値が書かれていない傘は要注意です」
また「完全遮光」「UV100%」という表記には、こんな落とし穴も。
「これらはあくまで生地単体の測定値であり、傘本体の性能測定値を保証するもではありません。傘になると縫い目や構造が加わるため、“完全”“100%”にはなり得ないんです。細かく見れば、注釈が小さく書かれているはず。だから、キャッチコピーを鵜呑みにせず、下げ札をチェックしてみてくださいね」
日傘のスペックで特に注目されるのが「遮光率」と「遮熱性」。数値が高い方がよさそう……とつい思ってしまいますが、見落としがちなポイントもあります。
「遮光率が99.9%でも、遮熱性能が低ければ体感温度は下がりません。逆に遮光率は99%でも、遮熱性が極めて高いモデルもあります。ご自身がどんなシーンで使いたいか、重視するポイントを明確にして選ぶのが正解です」
また、日傘を初めて使う人には「軽さ」や「開閉のしやすさ」も大切なチェック項目。「通勤で毎日使いたい」「バッグに入れて持ち歩きたい」など、ライフスタイルに合った形状(長傘か折りたたみか)や機能性も重要な判断材料です。
「そもそも、日傘の色って、何色が一番涼しいんですか?」。そんな素朴な疑問に対し、土屋さんは「涼しさで言えば“白”は表面が暗い色より涼しいですよ」と断言します。
「熱を吸収しやすい黒に比べて、白やベージュなど明るい色は熱をこもらせにくい。体感的にも涼しく感じます。ただし、汚れが目立ちやすく、生地の劣化も早いというデメリットがあるんです」
現在は裏面に高機能コーティングが施された日傘も増えており、「見た目の色を楽しみながら、機能性も確保できる時代になっている」と、土屋さん。ファッションとの相性も含め、自分が使い続けられる傘を選ぶことが最も大切なようです。
以前は「日傘=女性向け」という固定観念が根強く、男性が使うことに抵抗を感じる場面も少なくありませんでした。しかし近年は、機能性とデザイン性のバランスが取れたユニセックスな日傘が多く登場していると言います。
「女性でもフリルやリボンが苦手な方はいらっしゃいますし、男性も“黒やネイビー一択”みたいな時代ではなくなっています。そのため、今はフリルや刺繍などの装飾を省いた、くすみカラーやシンプルなデザインが主流になりつつあります。最近では“性別ではなく好みで選ぶ”という視点がスタンダードになっていると思います」
「とにかく暑い……」と思わず口に出したくなるような夏の日差し。日傘は日差しを遮るだけでなく、“いかに涼しく感じられるか”という点でも進化しています。
特に涼しさにフォーカスした日傘を選びたい。そんな人に向けて、土屋さんが今季とくに注目しているのが“遮熱重視タイプ”だそう。
「日差しを防ぐだけでなく、実際に“涼しさ”を感じられる傘を選びたいという方は年々増えています。そんなニーズに応えてくれる、頼もしい3本を紹介します」
「COKAGE+ ACTIVEはユニセックスラインの新モデルで、スポーティーなデザインが特徴です。『東レ サマーシールドⅡ』の生地の中でさわり心地がさらっとした生地を新たに採用した、まさに木陰のような日傘。
3型ありますが、特におすすめのモデルは、風が吹く場所でも壊れにくい“耐風”。ハンドルが握りやすく、シルエットも深めで安心感もあります」
「熱の吸収を抑える『断熱』は、UVカット率100%、遮光率100%のシルバーコーティング生地を向かい合わせに組み合わせることにより熱をブロック。2枚の生地の間に大きな空気層を確保し熱を効率よく逃がすことで、実験ではマイナス3.5度の効果も確認されています」
「“放射冷却”という自然現象を応用した日傘。放射冷却素材のラディクールという新しい生地を使い、熱を溜め込まず外へ逃がす構造が新しい。世界的にも注目されている新技術で、僕も実際に炎天下で試しましたが確かに涼しく感じました」
土屋博勇喜(つちや・ひろゆき)
22歳から、大手ホームセンターでレイングッズを担当。様々なメーカーの傘に触れ、つくり手のこだわりや機能性、美しいフォルムに魅了され傘の虜となる。2019年、株式会社シューズセレクション(現ウォーターフロント)へ入社し、仕入れ・売り場作りの責任者となる。同時に、傘の魅力を広く伝える世界初の「傘ソムリエ」として活動を始める。傘やレイングッズの開発・監修、商品紹介動画の配信、各種テレビ番組への出演など、傘にまつわる幅広い分野で活躍している。
https://www.tsuchiyakasa.com/
文=船橋麻貴