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立教大学で開催中の細野晴臣デビュー55周年企画展「細野さんと晴臣くん」! 本邦初公開の音源、通学定期券、思春期に描いた絵……6月30日まで開催。

  • 2025年6月5日
  • CREA WEB

デビュー55周年の細野晴臣さん。

 立教大学OBの細野晴臣さんはデビュー55周年。この記念すべき周年に母校・立教大学 池袋キャンパスのライフスナイダー館で企画展「細野さんと晴臣くん」が開催中だ(〜6月30日)。学内施設を活用したイベントという面で異色とも言える今回の企画展だが、その内容の充実っぷりもものすごい。あの頃の晴臣くんに会いに行こう!


立教大学OB、細野晴臣デビュー55周年

 池袋駅西口から徒歩10分弱。立教大学 池袋キャンパスでも奥の奥に位置するライフスナイダー館。約100年前に教職員の住宅(校宅)として建てられた洋館で、複数あった校宅のうち、最も古いライフスナイダー館のみが今に残る。いずれ趣ある立教校舎の中でも伝統と深みを感じさせる建築のひとつであると言っていい。


立教大学 池袋キャンパスのライフスナイダー館が企画展会場。

「少なくとも私の記憶の限り、今回の企画展のような形でライフスナイダー館を使用した事例はなく、このような取り組みを通じて同館が有する潜在的価値を再確認する機会となりました」と語るのは、立教学院企画部の佐々木静 さん。基本的には、事務室や迎賓館的な活用をされているのだという。

 そんな「ライフスナイダー館」で開催中なのが同大OB、細野晴臣さんのデビュー55周年企画展「細野さんと晴臣くん」だ。


展示室全景。既設品を活かしつつ手を加えたテーブル、既設品と違和感なく仕立てられた新造テーブルに展示品が並べられる。

「2024年、細野晴臣はデビュー55周年を迎え、これからも周年企画が続きます。その企画第一弾が、昔の晴臣くんと今の細野さんがずっと好きでいる音楽や映画、漫画などについて、時空を超えて語り合うような展覧会『細野さんと晴臣くん』となります」と語るのは、細野さんのオフィス「ミディアム」の谷本智美さんだ。

「デビュー50周年の際は六本木ヒルズ東京シティビュー・スカイギャラリーで『細野観光1969〜2019』を開催しましたが、その時にも感心したというか恐れ入ったのが、細野の『モノを捨てることができない』という習性(笑)です。そのおかげで、子供の頃のものも残っており、いまだに新発見があったりします」


左:学生時代に集めていたマッチ。右:ローハイド、シェーンの影響で好きになった西部劇のモデルガン。

左:イラストにおいては手塚治虫、杉浦茂の影響を強く受けた。右:学生時代の通学定期券、音楽部の部員証など。このようなものまで残されているのが「捨てられないホソノ家」の真骨頂。

 細野さんが「捨てることができない」質(たち)であることはファンにとってのギフトでしかないが、それにしても、その膨大な中からナニモノカを選び出し、企画展パッケージに筋を通すのは一筋縄ではいかなかったろう。ただ50周年の時と比べるとコンパクトな今回の規模感は、作り手にとっても、来場者にとっても展示の意味をつかみやすいものとなっているはずだ。

「高校から大学へと立教に通った細野の幼少〜学生時代にスポットを当てて展示することで、子供のころから好きだったものが大人になっても新鮮な発見を与えてくれることに気づいたり、共感いただけたらいいですね」と谷本さん。

 細野さんも「小さなころからずっと好きなものに 懐かしいっていう感覚はないなあ 古いものも新しいし 新しいものも古い」と語る。


左:テーブルにそっと耳を当てると「細野さんが歌ってる」……のを聴く細野さん(笑)。右:強く影響を受けた漫画の世界。学校のノートはさながら落書き帳だったという。

ガジェット感のある展示の魅力

 訪れた際には、その展示作法にも注目いただきたい。アートディレクションは三澤遥さんだ。

「三澤さんには丁寧で工夫あるディレクションを行っていただきました。たとえば真っ白なエアコンは室内の雰囲気に合わせてリペイントしていますし、暖炉上の棚は当初からあったように造作されました。既設品と違和感のないようテーブルに手を加えて、中から歌声が聞こえるよう仕掛けも施していただいています」と谷本さん。

 さらに、展示物に目を近づけても影が出にくいライティングや、音楽に合わせて踊る紙人形、高校時代に組んでいたバンドの音源が聞こえてくる小箱など。これらの展示物に込められたポジティブな引っ掛かりが、展示を楽しむ人を惹きつけ、楽しませ、驚かせている。


左:テーブルに耳を当てて音楽を楽しむインスタレーション。右:展示物に寄っても影が出にくいライティング。

左:鉄を混ぜ込んだ特殊な紙で造られた人形が、BGMに合わせてダンス! 右:ふたを開くと晴臣くんが高校時代に組んだバンド、オックス・ドライヴァーズの歌声が聞こえる。この音源、本邦初公開!

 古風な窓から自然光が差し込むこともまた、昨今の展覧会ではまれなシチュエーションと言える。まずもって気持ちがいいし、窓からのぞく蔦や緑のさわやかな光景にはもはや、豊島区池袋の面影はない。


自然光が入る空間で展示を楽しめる空間。昨今ではめずらしいシチュエーションといえる。

「子供時代の晴臣くんが想像できます」

 本展はWEB予約制ゆえ待ち時間なく、ゆったり見学することができる。しかもこの内容で入場無料。幸せというほかない。行かない手はない。

 取材後、ライフスナイダー館のエントランスで二組の来場者に感想を聞いた。

「仲間が聴いていた音楽から細野さんを知りました。アルバムだと『HOSONOVA』が大好き。それとノートを見て、絵が上手すぎて驚きました」
「以前の50周年展覧会も行きましたが、今回のほうがコンパクトでちょうどいい。展示物を見ていると、子供の頃の晴臣くんがどんな少年だったかわかるような気がします」
女性ふたり。20代。

「70年代の細野さんが大好きで来ました。トロビカル三部作もYMOも、もちろん今も。ライフスナイダー館は在学中を含めて入館するのは初めてですね(笑)」
「テーブルに耳を着けて聴いたり、紙相撲みたいな踊る人形など、展示自体のギミックというか工夫が強く印象に残りました。大学でのこうした企画はすごくいいと思います。いつか佐野元春展をやっていただきたいです(佐野さんも立教大学OB)」
昨年、立教大学を卒業したばかりの男性二人。


ライフスナイダー館エントランス。

 本展は6月30日まで開催期間わずか1カ月。巡回展をやっていただきたいと思う人も多いだろうし、もしかしたら海外でも……ありです、絶対!


企画展パンフレットはマストバイ。糸かがり綴じという特殊な製本方法が採られたこだわりの一冊で、ガバっとノド(背表紙側)まで開いて楽しめる。2,200円。

晴臣くんの好物を「いただきます!」


“細野さんと晴臣くん”スペシャルプレート。1,600円。

 ライフスナイダー館に隣接する「日比谷松本楼セントポールズ会館店」では、晴臣くんがずっと好きだったハムサラダ、アメリカンピザ、デミグラスソースとんかつ等をあつめたスペシャルプレートを提供中。ぜひ展覧会と一緒に楽しもう!

日比谷松本楼 立教セントポールズ会館店

営業:月〜土の11:00〜14:00/日祝定休・その他不定休あり
https://koyu.rikkyo.ac.jp/service/stpauls/close/index.html


晴臣くん時代のノートを懐かしむ細野さん。

細野晴臣デビュー55周年企画「HOSONO MANDALA」企画展「細野さんと晴臣くん」

日時:2025年5月31日(土)〜6月30日(月)、平日11:00〜20:00、土日11:00〜18:00
場所:立教大学 池袋キャンパス ライフスナイダー館
入館料:無料

文=前田賢紀
写真=志水 隆

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