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20世紀を代表するファンタジー「ハリー・ポッター」シリーズ。その誕生の地、スコットランドの首都エジンバラは、今もどこかに魔法の気配を感じる街です。物語のゆかりのスポットは、ほとんどが徒歩で回れる範囲に点在。ページをめくるように、物語の世界を歩いてきました。
≫「ハリー・ポッター」の聖地から徒歩圏内にある「Wホテル」に注目!
≫要塞都市の旧市街、“最高傑作”の新市街。「ハリー・ポッター」誕生の地をぶらり旅
旧市街と新市街からなり、街全体が世界遺産のスコットランドの首都、エジンバラ。石畳が続く街路に、時計を掲げた尖塔、エントツが続く石造りの家並みが、時の重みを伝える街です。
このエジンバラの街で、「ハリー・ポッター」シリーズは生まれました。85言語に翻訳され、全世界で累計6億部を売り上げた、20世紀を代表するファンタジー作品です。作者J.K.ローリングが執筆に通ったカフェや、物語のモデルとなったストリートや学校など、街にはあの世界観が息づいています。
まるで物語の中にいるような気分で、ゆかりのスポットめぐり。しかも、どこも徒歩圏内です。まずはインフォメーションセンターで、地図と情報を入手して、街へ繰り出しましょう。
ハリー・ポッターのファンがまず詣でる場所といえば、ダイアゴン横丁のモデルになったヴィクトリア・ストリート。ダイアゴン横丁とは、ホグワーツ魔法魔術学校への入学準備のために必要なアイテムを買い揃えに訪れる魔法使いのための商店街のことです。
ヴィクトリア・ストリートは、ジョージ4世橋からグラスマーケットへと続く、ゆるやかにカーブを描く石畳の下り坂。カラフルな店が立ち並び、歩くだけでも気分が上がります。カフェやレストラン、古書店や雑貨店が並ぶ中、ひときわ目を引くのが「ミュージアム・コンテクスト」。まるでダイアゴン横丁からそのまま抜け出してきたようなショップです。
店の前には、見ればすぐにファンとわかる行列が。中に入ると、各寮のセーターやマフラー、杖など、おなじみのアイテムがずらり。中でも目を奪われたのが、あの“バタービール”。「どんな味がするんだろう?」と迷わず購入しましたが、もったいなくて、まだ開けられずにいます。
ちなみに、この通りには、魔術を使ったという嫌疑をかけられ1670年に処刑されたウィアー少佐の亡霊が今もうろついているとか。ダイアゴン横丁にふさわしいウワサ話です。
魅力的なキャラクターがそろう「ハリー・ポッター」。きっとJ.K.ローリングも、名前を考えるのには頭をひねったはず。そこでヒントにしたのが、グレイフライヤーズ墓地の墓標。実は、登場人物の中には、ここに眠る人たちの名前をもじったものも。
たとえばホグワーツの校長のミネルバ・マクゴナガル教授は、19世紀の詩人ウィリアム・マクゴナガルがもと。「名前を言ってはいけないあの人」のヴォルデモート卿の本名“トム・マールヴォロ・リドル”の元ネタらしき“トーマス・リドル”という名が刻まれた墓標も。
ただ、ここに眠る人々は登場人物ではありません。トーマス・リドルさんの墓に、ヴォルデモート卿宛ての何百もの手紙や花が供えられ、行政によって撤去されたこともあったとか。迷惑になることは、やめましょうね。
すべてのはじまりといえるのが、初期作品が執筆されたカフェ。当時、J.K.ローリングはお金も無く、ぐずる幼い娘をベビーカーに乗せてエジンバラの街を歩き、いくつかのカフェで執筆を行ったといいます。
中でも有名な存在は「エレファント・ハウス」。ジョージ4世橋沿いにある、ひときわ目を引く真っ赤なカフェです。舞台にもなっているエジンバラ城を見下ろす奥の部屋で、城を眺めながら執筆を進めていたとか。トイレの壁はファンが書き残したメッセージで埋め尽くされていたそうです。
けれど、「エレファント・ハウス」は2021年の火災で目下休業中。今はヴィクトリア・ストリートに臨時のお店を構えています。とはいえ、休業中でも聖地は聖地。元祖の店の前には多くのハリー・ポッター・ファンが訪れています。
もうひとつ知られているのが、ニコルソン・ストリートにあった「ニコルソンズ」。今は「スプーン」という名のレストランに変わっていますが、小さな看板で“その場所”だったことを教えています。
最終巻「ハリー・ポッターと死の秘宝」を書き上げたのも、ここエジンバラ。J.K.ローリングは、当時の様子をインタビューで語っています。
「窓拭き業者が来て、子どもたちは家にいて、犬はずっと吠えている。とてもじゃないけど仕事にならない」。そんなとき、ふとひらめいたそうです――お金をかければ、解決できる!
すでに世界的ベストセラー作家だったJ.K.ローリングが滞在先に選んだのは、1902年創業の老舗ホテル「ザ・バルモラル・エジンバラ」。プリンシズ・ストリートとノースブリッジに面した角部屋・552号室に、2006年8月から翌年1月11日まで滞在しました。
執筆の合間、一息つくときには、窓辺から街の往来を眺めていたのかもしれません。そしてついに脱稿。部屋にあったギリシャ神話の胸像に走り書きでメッセージを記したそうです。この部屋はのちに「J.K.ローリング・スイート」と改名。胸像の直筆のメッセージが見られるのは、宿泊者の特権です。
ホグワーツ魔法魔術学校のヒントになったのは、名門私立学校の「ジョージ・ヘリオット・スクール」。尖塔がそびえている外観や、4つのハウスに分かれているあたりも、ホグワーツの着想につながったのかも。
一般公開はされていませんが、門の外から眺めることはできます。また、フェティス・カレッジやエジンバラ城もホグワーツのインスピレーションを得た場所とされています。
さらに「エジンバラ市庁舎」の正面の石板には、2008年に市からエジンバラ賞を授与されたJ.K.ローリングの手形が再現されています。
グリンゴッツ魔法銀行のインスピレーションのひとつになったのは、「ミュージアム・オン・ザ・マウンド」という博物館。
街のどこかでハリーやハーマイオニーが歩いていそうなエジンバラ。歴史的な街並みは歩いているだけで、ワクワクしてきます。
W Edinburgh(Wエジンバラ)
所在地 1 St James Square, Edinburgh, Scotland, United Kingdom, EH1 3AX
電話 +44-131-3888000
https://www.marriott.com/en-us/hotels/ediwh-w-edinburgh
取材協力/英国政府観光庁
Starring GREAT Britain - the movie (JP)
https://youtu.be/zP9yUGuoxy0?feature=shared
HP:VisitBritain.com
古関千恵子(こせき ちえこ)
リゾートやダイビング、エコなど海にまつわる出来事にフォーカスしたビーチライター。“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”をループすること30年あまり。
●Instagram @chieko_koseki
文・撮影=古関千恵子