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【九谷焼編④】伝統的な九谷焼を絶妙な匙加減でアレンジ。「上出長右衛門窯」の新感覚なうつわ

  • 2021年7月14日
  • ことりっぷ


「上出長右衛門窯」は1879年から続く九谷焼の窯元です。この窯に伝わる『笛吹※写真左から2番目』という柄は、明時代の古染付をうつした柄。この柄を元に現代の楽器を持たせてアレンジしたうつわが注目され、若い世代にも届いています。受け継がれてきたものをいかしつつ、新しい感覚のうつわを生み出すものづくりの現場を訪れました。
「上出長右衛門窯」でおよそ70年も描かれているという柄『笛吹』をアレンジしたのは6代目の上出惠悟(かみでけいご)さん。上出さんが東京藝術大学を経て、実家の窯に戻ってきたのは2006年のことです。家業である窯元の現状を把握していくなかで、古くからの文化や手仕事が危うい状況にあることを実感した上出さん。上出長右衛門窯が持つ伝統や技術と向き合うなかで、改めて気づいたのは『笛吹』という柄の持つ魅力です。
上出さんも幼い頃から使っていた『笛吹』はとても思い入れのあるうつわ。そこに現代の人にも親しみがある楽器を持たせることで、大好きな笛吹の魅力を伝えたかったのだといいます。受け継いできた伝統と、高い技術をもつ職人技を備えた窯元。そこに上出さんのアイデアが結びつき、独創的で新しいデザインのうつわを生み出しています。
上出長右衛門窯の強みのひとつは、うつわの成形を自社で手がけていることです。九谷焼は分業制でうつわ自体は製陶所から仕入れ、上絵付けのみを行なう作り手も少なくありません。上出さんが夢に見た白い犬をモチーフにした貯金箱は、平面だった夢を立体化した作品。上出さんのデザインと、それを形にする現場のコミュニケーションが密接に取れるからこそ実現した形だといえます。
こちらも成形に長けた職人がいるからこそ実現したお皿。九谷焼といえば上絵付け、というイメージがありますが、刻文というレリーフのお皿は古くからあり、上出長右衛門窯でも花の刻文皿を長年に渡って作ってきたそうです。
「九谷焼をいつまでもみずみずしく」というテーマに、みずみずしい果物の柄に艶やかな釉薬が際立つ作品。ソースなどに浸すと、よりレリーフの立体感が浮き出て、使ってみるのが楽しくなるお皿です。
和・漢・洋をテーマに「どこの国のものなのか、わからないのが面白いと思って作りました」と上出さん。黄色と黒のコントラストと龍の模様が異国的で、九谷焼ならではの盛絵の具を使用することで、ふっくらとした凹凸があり、深みのある色合いを醸し出しています。1〜2人でも使いやすいようにと、小ぶりな急須も制作。現代の暮らしに馴染むサイズ感とデザインで、優雅なお茶時間が楽しめそうです。
伝統を現代に活用し、新鮮なうつわを生み出す「上出長右衛門窯」。伝統的なものに新しさを吹き込む匙加減が絶妙で、今の暮らしにしっくりと馴染みます。華美な絵付け=九谷焼だという重さを取り払い、ポップで軽やかさをまとったうつわたち。これらがすべて職人の手仕事で生み出されている、というところに価値を感じます。
「今後も自分たちがいちばん新鮮だと感じるものづくりをしていきたいです」と上出さん。毎年5月には窯まつりを開催し、制作現場を開放。B品の特別販売や絵付師、ろくろ師に入門できるワークショップも開催されています。普段は工房に併設したギャラリーでうつわを買い求めることができます。ぜひ訪れてみてくださいね。

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