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海野和男のデジタル昆虫記

カメラの擬態

カメラの擬態
2007年01月31日


 ぼくは古いカメラが好きだが、様々なカメラを見ていると人間の作るものの中にも擬態は存在するのだなと思う。例えばここに2台のカメラがある。一つはドイツのライカというカメラ。もう一つはロシアのフェドというカメラだ。両方共に1940年頃のものだ。二つは非常に似ている。オリジナルは年代から見てライカだ。なぜフェドはライカに似せて作られたかというと、当時一番優れたカメラがライカだったから。そして初代フェドはライカに勝るとも劣らないカメラだったのがすごい。
 ライカを真似してコピーすれば、機能的に良いものができるということだ。戦後もロシアはずっと同じタイプのゾルキーというカメラを作り続けた。つい二十年ほど前まで作っていた。これは擬態ではなく、単なる模倣である。ところがライカは高くて買えないけれど、ゾルキーならという人もいただろう。そしてそれを見た人がライカだと思ってくれれば、そこで擬態は成立するのである。
 さらにゾルキーにライカと書いて売れば偽物ライカになるわけだ。しかし、偽物ライカの中に、とても珍しい偽物ライカがあったとすると、今度はもともとのライカを持っていた人がこんどはロシアのゾルキーを真似て擬態したカメラを作るなんてこともあったからおかしい。
 日本のカメラメーカーも戦後はライカの模倣からはじまった。そしてライカのM3という完成されたカメラが出た1950年代に、一眼レフへの転身を図り、それが成功して日本のカメラ産業は一時期、日本の重要な輸出産業となった。そこには模倣からはじまった様々な独創的な発想があったことは言うまでもない。
 すばらしい商品があれば、それをまねをした商品は必ずできる。昔は一字だけ違えた偽物なども多く面白い。最近では悪意を持った擬態も多い。WEBではフイッシング詐欺などあたかも有名なサイトに見せかけ、そこでパスワードなどを入れさせるなどと言うのもあるそうだから怖い。
 悪意を持つか持たないかは別として、古くはガードマンがお巡りさんと似た服を制服としたり、野戦服が迷彩色になっていたりと人間社会でも、強いものに似る擬態も、隠れるための擬態もごく普通に存在するのだ。
写真は戦前のライカ(下)とフェド(上)
 明日からの2月のスペシャルコンテンツはクラッシクレンズで撮る小諸日記です。5年ほど前に一生懸命に古いカメラでフイルムを使用して撮った小諸の風景や昆虫写真です。見ていただけたら嬉しいです。

昆虫写真家への道は第19回で一旦終了。2007年1月のメニューからどうぞ

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