2025/01/25 12:39 ウェザーニュース
例年1月末から2月初旬は、1年で一番寒い時期です。この時期になると、気分が落ち込んでやる気が出なくなる人が少なくありません。
「寒いから活動性が落ちる」だけならいいのですが、この時期の不活発には「冬期うつ(ウインター・ブルー)」が隠れていることがあります。身体的な原因ではなく、精神的な原因から不具合が起こっているのであれば、すみやかに対策を考えなければなりません。
そこで「冬期うつ」の特徴と対策を、横浜鶴見リハビリテーション病院(横浜市鶴見区)の吉田勝明院長に伺いました。
一般的なうつ病と「冬期うつ」とは、どのような違いがあるのでしょうか。
「まず、両者の共通点を見てみましょう。一般的なうつ病でも『冬期うつ』でも、おおむね次のような症状が出ます」(吉田先生)
・気分の落ちこみ
・何かをしようとしてもやる気が出ない
・いつもは楽しめることを楽しめない
・気分がイライラする
・体がだるく、倦怠感がある
一方、両者には違いもあります。
「うつ病の場合は、食欲低下、睡眠不足、体重減少などの症状の傾向がみられますが、『冬期うつ』は反対に、食欲向上、過眠、体重増加といった傾向があります」(吉田院長)
どのような原因から、「冬期うつ」になるのでしょうか。
「脳内にはさまざまな化学物質(神経伝達物質)がありますが、気分を高め、不安を減らし、集中力を上げる働きをしているのがセロトニンです。
セロトニンは、十分に分泌されると精神的な安定が得られるので、『幸せホルモン』とも呼ばれています。
このセロトニンの分泌量が、冬になると少なくなるのです。グラフに示したようにセロトニンには季節変動性があり、夏に一番多く分泌され、次に春に多く分泌されます。それが秋にはグッと少なくなり、冬は1年で最も少なくなるのです。
これが『冬期うつ』になる最大の原因といえるでしょう」(吉田院長)
なぜ、冬になるとセロトニンの分泌が減るのでしょうか。
「セロトニンは、日光を浴びると人の体内で合成されます。秋から冬にかけてセロトニンが減少するのは、日照時間が短くなるからです。
日照時間の長短は、地域間の自殺率の違いにもなっています。冬期(12月〜2月)の日照時間が全国平均の半分ほどしかない青森、秋田、山形、新潟などの東北の日本海側や北陸にかけての地域では、自殺率が高い傾向にあるのです。2021年の10万人あたりの年間自殺者数を調べると、青森24.0人、秋田19.7人、山形20.1人、新潟21.5人といずれも上位を占めています。
日本の自殺死亡率が日照時間の短い地域で高いように、世界的にも東欧や北欧など、北半球の高緯度で日照時間が短い国では自殺死亡率の高いことが知られています。具体的に国名を挙げると、リトアニア、カザフスタン、ベラルーシ、ポーランド、ロシアなどの国々です」(吉田院長)
日照時間以外では、どのような原因で「冬期うつ」になるのでしょうか。
「近年はコロナを経て在宅勤務が増えていることが、『冬期うつ』になるリスクを拡大させています。毎日出勤していれば朝日を浴びる機会が増えますが、テレワークだけだとその機会も失われ、セロトニンが十分合成されません。オンラインでの交流も孤立を防いではくれますが、人混みを避けながら少しでも屋外に出ることが必要です」(吉田院長)
「冬期うつ」にならないための対策として、以下のポイントを教えてもらいました。