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近年のサンマの不漁の原因は? 今年の漁獲量はどうなる

  • 2024年9月9日
  • ウェザーニューズ

2024/09/09 05:05 ウェザーニュース

日本の秋の味覚の代表としてまず挙げられるサンマですが、近年は不漁が続き、漁業関係者や消費者には危機感がありました。ところが今シーズンは、8月中旬の北海道・花咲港(根室市)、下旬の本州・三陸沿岸の各港などでの初水揚げで、久しぶりの豊漁が続々と報告されています。

気になる今シーズンのサンマの漁獲量の見通しや、近年の不漁の原因などについて、国立研究開発法人水産研究・教育機構広域性資源部主任研究員の宮本洋臣さんに解説して頂きました。

長期漁海況予報では「昨年と同水準の低水準」

今シーズンのサンマの初水揚げは、全国で最初の花咲港では昨年の約140倍の67t、本州最初の大船渡港(岩手県)でも約10倍の33tなど、各地で豊漁が報告されています。

東京都内のスーパーマーケットでは「初売り」で1尾158円、以降も199円で販売され、担当者は「不漁だった昨年同期の半値程度」と話しています。

水産研究・教育機構は7月30日、「2024年度 サンマ長期漁海況予報」を発表しました。今後の見通しとして、どのようなポイントが挙げられますか。

「今年8月から12月の道東から常磐海域にかけての北西太平洋でのサンマの来遊量は、昨年と同水準の低水準になると見込まれます。

8月以降の漁期中に体長29cm以上になると予測されるものを『1歳魚』といいますが、その体重は昨年を下回っており、漁期の前半は1歳魚主体で90g台から110g台、後半は0歳魚が混ざり80g台から100g台が主体となります。

8月から9月にかけては、北海道から得撫(ウルップ)島(千島列島)にかけての東方沖、東経150度から160度の公海に漁場が形成され、10月には道東海域と北方四島周辺海域と、それに隣接する公海に魚群が来遊するため、漁況は一時的に上向くものとみられます」(宮本さん)

長期漁海況予報では「昨年と同水準の低水準」とのことですが、各地での初水揚げ量は昨年を大きく上回っているようです。これは、どんな理由によるのでしょうか。

「調査では海域を日本本土に近い順から、1区(東経165度以西)、2区(165〜180度)、3区(180度以東)と区分しています。

今年は昨年に比べて北海道などの港から漁場が近く、漁船の移動距離・時間が少なくて済む1区でのサンマの分布量が極めて多かったため、初水揚げの量が多くなったと思われます」(宮本さん)

さらに全国さんま棒受網(ぼううけあみ)漁業協同組合が、昨年まで小型船(20t未満)が8月10日、中型船(100t未満)が15日、大型船(200t未満)が20日としていたサンマ漁の解禁日を、今年は公海に限って10日に統一したため、初水揚げ時の総量が増えたことも「豊漁」の一因とみられています。

南下しない親潮がここ数年の不漁の大きな要因

日本のサンマの水揚げ量は、20万〜30万tほどで推移していましたが、近年は減少傾向で、2022年は1.8万tと過去最低を記録しました。約20年で10分の1以下になっているのです。

近年のサンマの不漁は、海水温の上昇が影響しているのでしょうか。

「海水温が高くなっている状況は、サンマの不漁のひとつの要因だと思います。ただし、温室効果ガスなどによる地球温暖化だけで海水温が上がっているとイメージされている方も多いと思いますが、海水温自体は、ほぼ10年スケールで上がったり下がったりもしています。

地球温暖化だけでなく、時間スケールの変動などの影響が重なって、現在は海水温が上がっているという状況です。ここ数年のサンマの不漁は、そうした影響を受けているのだと思います。

非常に重要なのは、潮流の変化だと思います。ここ数年、親潮(千島海流=寒流)の流れは強いのですが、なかなか親潮自体の流れが南下してこない状況になっています。

サンマは親潮の流れる場所によって回遊する場所や産卵場所を変えます。親潮が南下するとサンマも日本の近くへ回遊する傾向がみられます。

親潮が南下しないとサンマも日本から離れた場所で南へ回遊することになるので、日本のサンマ漁にとってよくない状況が続いていると認識しています」(宮本さん)

サンマの個体の大きさも、以前より小さくなる傾向にあるようですね。

「それにも回遊の沖合化や水温の上昇が関連していると考えられます。サンマは南から北へ泳いで行った後に日本の近くに戻ってくるのですが、日本の近くは親潮と黒潮(日本海流=暖流)が混じりあうため、餌環境が良く、そこを回遊すると大きく育ちます。

日本から離れた餌環境がよくない海域で育ったサンマは、大きくならない傾向にあると言えるかもしれません。

また、近年の水温の上昇により、日本近海も含め餌となるプランクトンの量やサイズも小さくなっています。このような餌環境そのものの変化もサンマが小型化している要因と考えています」(宮本さん)

外国船が多く出漁してきたことも、サンマの不漁に影響しているのでしょうか。

「海洋環境だけでなく外国船による漁獲も影響していると考えています。ただ、その影響がどの程度のものなのか、実際どれくらい漁獲の影響で資源が減っているかは残念ながらまだ、よくわかっていない状況です」(宮本さん)

今後の漁獲量はどうなる?

今年のサンマ漁、漁獲量はどのように推移していくと思われますか。

「去年に比べると早い時期にはいいサンマが獲れるだろうとは考えているのですが、10月以降の漁期後半になるとなかなか厳しい状況になってくるのではないかという予想をしています。

去年2年ぶりに再開されたロシアのEEZ(排他的経済水域)でのサンマ漁の状況にもよります。また、漁には海流の状況などが大きく影響しますので、なかなか見通しが立てづらいのですが、今後も海洋環境を注視していこうと考えています」(宮本さん)

初水揚げでは豊漁が続いた今シーズンのサンマ漁ですが、今後の見通しは決して甘くないようです。比較的安値のうちに、焼きたてのサンマを味わってみてはいかがでしょうか。


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