2024/08/20 05:32 ウェザーニュース
猛暑や集中豪雨など地球規模での気候変動事象が相次ぎ、それらの原因として温室効果ガスが大きく影響しているようです。
今や健康的な暮らしに欠かせないエアコンですが、エアコンに使われる電力が二酸化炭素(CO2)排出量増加の一要因となっていることもまた、間違いありません。
そんななか、日本では「インバータ」技術を世界で初めてエアコンに応用し、エアコン由来のCO2を大幅に減らすことができました。この技術は、CO2削減の切り札として、世界的な注目を集めています。
エアコンの消費電力やインバータの省エネ性などについて、ダイキンコーポレートコミュニケーション室広報グループの重政周之(しげまさ・ちかし)さんに解説して頂きました。
2023年12月にアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催されたCOP28(国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議)でも、エアコンが議題に上ったと報道されました。どのような背景があるのでしょうか。
「初めてエアコン使用時の電力消費に伴うCO2排出量の削減について議論されました。
人々の生活や経済発展に大きな役割を果たしているエアコンは、多くの地域で必需品となりつつあります。その反面、エアコンは多くの電力を必要とし、世界で使われている電力全体の約10%をエアコンが占めているとも言われています。
また、近年では、新興国の経済成長などによりエアコンの普及が進み、冷房の電力需要は2050年には3倍(2015年比)に達すると予想されています」(重政さん)
COP28では、「冷房機器関連のCO2排出量を、2050年までに2022年と比較して最低68%削減する」との目標が示され、これには日本を含む世界63ヵ国が支持を表明しています。
「世界的に電力需要が増加するなか、温室効果ガス排出削減につながるエアコンの省エネ技術の普及は重要です」(重政さん)
COP28は、各国が脱炭素(カーボンニュートラル)に向けた技術や取り組みを発信する場にもなっているそうですね。
「COP28のジャパン・パビリオンには、日本企業15社が出展しました。ダイキンは、エアコンの省エネ性能を飛躍的に高められるインバータを搭載したエアコン(インバータエアコン)の重要性をアピールし、会場では注目を集めました。
世界でエアコンの需要が拡大する中、消費電力を抑えられるインバータエアコンの比率を上げることは大変重要です。住宅用のインバータエアコンの普及率は、日本やEU(ヨーロッパ連合)、オーストラリアでは100%に達しており、中国では98.5%、インドでは81%など、普及率は徐々に高まっています。
一方で、普及が遅れている地域もあり、例えばサウジアラビアでは28%、UAEでは21%、米国やインドネシアでは12%など、世界ではまだ普及の余地があるのが現状です」(重政さん)
インバータとはどのような技術で、どれほどの省エネ効果があるのでしょうか。
「エアコンで冷房や暖房をするときに不可欠なのが圧縮機と呼ばれる部品です。インバータは、室温に応じて圧縮機の動きをきめ細かく制御する技術です。冷房運転の場合、インバータエアコンは、室温が設定温度に達するまでは運転を強め、部屋が涼しくなったら運転を弱めて室温を維持します。そのため、快適で無駄を抑えた運転が可能です。
一方、インバータを搭載していないエアコン(ノンインバータエアコン)は、室温が設定温度になったら停止し、室温が上がれば運転を開始するという単純なON・OFFの繰り返ししかできません。そのため、インバータエアコンと比べると快適な室内環境が作りづらく、電力も必要以上に消費してしまいます。
こうした違いから、インバータエアコンはノンインバータエアコンと比べて消費電力を50%以上削減できます」(重政さん)
インバータエアコンの普及率を上げることはもちろん、一人ひとりが取り組む節電の工夫も少なからずカーボンニュートラルに貢献できると重政さんは言います。
「ダイキンはメーカーの責任として、エアコンを作るとき・運ぶときのCO2排出削減にも取り組んでいます。また、製品の省エネ性能も追求しています。一方で、エアコンに起因するCO2のうち、約9割は『使うとき』に排出されるため、エアコンの使い方への意識も大切です。
定期的なフィルター掃除や室外機周辺の整理整頓、扇風機を併用して室内の温度ムラを抑えるなど、家庭でできる節電の工夫は様々です。また、省エネ性の高い製品を選ぶのも工夫のひとつです。
熱中症リスクが高まる中、エアコンの適切な使用は大切です。エネルギーや電気代の無駄を抑える工夫を意識しながら、上手にエアコンを使いましょう」(重政さん)
ウェザーニュースでは、気象情報会社の立場から地球温暖化対策に取り組むとともに、さまざまな情報をわかりやすく解説し、みなさんと一緒に地球の未来を考えていきます。まずは気候変動について知るところから、一緒に取り組んでいきましょう。