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雑誌『ムー』“あやしい”が“カワイイ”に。40年を経てブランドに変化の兆し

  • 2019年11月8日
  • Walkerplus

世界の謎と不思議に挑戦するスーパーミステリー・マガジンとして、2019年に創刊40周年を迎えた雑誌『ムー』。UFO、超能力、UMA、古代文明、都市伝説まで、さまざまな謎と不思議をテーマとする同誌は、映画『天気の子』にも登場するなど、いわゆる「オカルト」と呼ばれる分野のバイブル的存在だ。近年ではムー展の開催やコミックマーケットへの初出展、しまむらとのコラボなど、雑誌外でも存在感を放ち、特にグッズにおいては若い女性から支持を得ている。入社以来同誌に携わる三上丈晴編集長に、『ムー』というブランドの変化に着目しながら40年の舞台裏を語ってもらった。

■ 前身は学年誌。廃刊の危機から「マニア」特化で飛躍

『ムー』が誕生したのは1979年。創刊を主導したのは、中高生向け学年誌『コース』の編集部だ。1970年代末の雑誌創刊ブームの中、『コース』の企画で評判が良かったミステリーゾーンや大予言特集をそのままテーマとする形でスタートした。創刊当初はオカルト的な内容以外も掲載する総合誌に近い体裁だったが部数は伸びず、創刊翌年の1980年、早くもリニューアルに踏み切った。

「どうせなら思い切って変えようということで、巻頭の特集のボリュームを徹底的に増やしたんです。短い企画をたくさん盛り込むのが雑誌の基本。20~30ページを1つのテーマで埋めるという手法は当時のセオリーからは外れていました」

1つのテーマを深く追求する「総力特集」は、現在まで途切れることなく続く同誌の看板企画となった。こうした手法を取り入れた背景には、ターゲットを中高生からマニア層に切り替えたことにあったという。

「こうした題材の読者は、結局のところマニア。それならばと、中高生だけでなく大人が読んでも楽しめる内容にしたんです。こうしたテーマを特集した雑誌がそもそも他に存在しなかったこともあり、リニューアル号の特集『[大推理]古代核戦争の謎』は大ヒットを記録しました」

リニューアル成功を受け、当時まだ誌面に残っていた一般向けの企画を打ち切り、マニアックさをさらに強調。人気は右肩上がりで、1982年1月号から隔月刊から月刊に移行することになった。

■ 「ダボハゼのように食らいつく」40年間のネタ探し

創刊以来、宇宙人、超能力、古代文明、陰謀論、ノストラダムスの大予言まで、ありとあらゆる謎に挑んできた『ムー』。取り扱うすべてが“未知”の中で、企画のアイデアはどこから生まれてくるのか。三上氏は「創刊当時からネタはありません」と驚きの答えを返す。

「ネタがあれば苦労しないというか、逆にネタがあれば教えてほしい(笑)。時事や流行しているもので少しでも『ムー』で取り扱う内容に接点があるなら、ダボハゼのように食らいついて『ムー』側に引き寄せてしまえ、というスタンスで続けています」

実際に総力特集を振り返ると、1998年に「環境ホルモンの謎」や「ダイオキシンが消滅する!!」など、当時注目され始めた環境問題を特集しているほか、2006年には「完全解明!!『ダ・ヴィンチ・コード』の謎」のようにベストセラー小説に関連した企画を展開するなど、同誌の目線から時事を考察する特集が数多く存在する。宇宙論などは、海外での最先端の研究をストレートに掲載したものもある。

「最先端の科学はそれまでの常識と全然違うので、いじくりまわさなくともそのままの素材で出せるんですよ。ある種突飛な研究や学説に見えるものでも、最先端って言われると『何だろう』と思えるんです」

とは言え、UFOのように何度となく特集される謎もある。同じテーマで繰り返し企画を作る上で、読者をひきつける秘訣について三上氏は「アップデートされる情報を魅力的に提示することがムーの骨子」と話す。

「UFOやロズウェル事件の特集を読んだら、マニアは『またかよ』と思うわけです。その一方で、マニア同士の間では『えっ、この最新情報を知らないの?古いよ』と強迫観念が生まれるもの。だからこそ、最新情報をどういった形で見せるかが勝負です」

■ 『ムー』はカワイイ?「あやしい雑誌」としてブランド化

オカルトマニアのバイブルとして今日に至る『ムー』。だが近年、従来の読者とは異なる層からも注目を集めつつある。

2018年から2019年にかけて東京、福岡、名古屋で開催された「創刊40周年記念 ムー展」では、「ムーを懐かしむ層やファッションとして楽しむ層が顕在化した」(三上氏)と語るように、幅広い層が来場。2019年には創刊以来初となるコミックマーケット出展も果たした。11月9日(土)からは創刊40周年月刊『ムー』フレーム切手セットの販売受付がはじまり、12月9日(月)にはMOVIX京都でのトークイベントも予定されているなど、イベントやグッズといった雑誌外での活動も活発になっている。

「親が『ムー』の読者だった人や、『天気の子』のように、さまざまな作品にオマージュとして使われたことで存在を知る人など、直接の読者でなくとも『ムー』を知っている人が増えてきた。認知度が上がったことで、『ムー』は一種のブランドとして一人歩きするようになってきたように思います。ムー展前後から、企画が次の企画を呼ぶような状況になり、編集部としても『一般向けもありなんだ』と確証を得たような状況です」

2018年にはファッションセンターしまむらとコラボしたアパレルグッズを発売し、女性からも大きな反響を呼んだ。こうした動きの背景には、『ムー』の認知度拡大とともに、40年間の積み重ねから生まれた「あやしさ」にユーザーがキッチュな魅力を見出しているからではないかと三上氏は考察する。それを示すいい例は、グッズとして展開した「ムーピアス」。発売前からSNSを通じて拡散され、即日完売。再入荷をしてもすぐに売り切れるという人気ぶりだった。注目すべきは、「ムーは知らないけど、これは欲しい」という、若い女性たちの声だ。40周年展にはこのピアスを買うためだけに訪れる人も多かったという。

「若い女の子が『ムー』グッズを持っていても、それは読者アピールではなく、『ムー』の雰囲気やグッズのデザインが多義的な『カワイイ』ものに映っているから。今や、『ムー的』『ムーっぽい』はあやしいものを指す時の代名詞となっていますが、編集部としては『あやしい』はほめ言葉として受け取っています」

マニアに向けた先鋭的なネタと切り口で愛されてきた『ムー』は、40年を経て一部で『あやしい』から『カワイイ』へとブランドの認知を変容させているようだ。

■ オカルト受難の時代も「ムー的な謎」を追い続ける

『ムー』創刊から40年の間に、同様の題材を取り扱うライバル雑誌も生まれたが、そのほとんどが姿を消した。なぜ『ムー』は、唯一無二の「スーパーミステリー・マガジン」として読者に受け入れられたのか。

「オカルト的なテーマは、扱う側がネタを茶化す方向に行きがちですが、それでは読者は白けてしまう。一方で『これが真実です』と言い切ってしまえば、あやしいを通り越して危ない雑誌だと引かれてしまいます。『ムー』は学年誌の編集部からスタートしたこともあり、いい意味でも悪い意味でも生真面目で、謎を信じていなかったという当時の編集者も、誌面ではきちんと検証を行って謎を提示するという、テーマに対する適度な距離感がありました。一般の人が思うであろう疑問に答えながら、それでも解明できない余白を見せる。そうした検証の過程があるから、読者に対してある種の説得力が生まれるのだろうと思います」

あやしげな話題を取り扱うからこそ、全肯定でも全否定でもない、中立的な視点で謎と向き合う『ムー』。だが、コンプライアンスが重視される現代は、オカルト的な話題を取り上げるハードルは上がり、雑誌としても出版業界の不況は無視できない。オカルトと雑誌、ともに受難の時代と言える今、『ムー』の今後の展望を聞いた。

「大きな展望よりも目の前にある謎です。即位の礼で出た虹が話題になったらその虹の写真を探し、ブラックホールが撮影されればタイムトラベルを特集する。令和になっても、時事に対してムー的な謎があればそれを追います。また、地上波でオカルト的な番組が放送されたり、アイコンとなる方が大々的に出演することはコンプライアンス的な問題からなくなりましたが、CSではヒストリーチャンネルやナショナルジオグラフィックのように、謎に向き合う海外チャンネルが存在します。また、インターネットが普及し誰もが発信できる時代になったことで、ネット上の話題の1ジャンルとしてむしろ盛り上がっているようにも感じます。紙媒体は右肩下がりの時代ですが、謎を追っていくスタンスはこれからも変わりようがないですね」(東京ウォーカー(全国版)・国分洋平)

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