
「ママタルト檜原の楽しみ日記」 / 撮影=千葉タイチ
「M-1グランプリ」にて2022年から2年連続で準決勝に進出し、2024年には悲願の決勝進出と着実に認知度を高めているお笑いコンビ・ママタルト。独特な言い回しの長尺ツッコミが癖になるツッコミ担当・檜原洋平さんは、持ち前の陽気な性格とハッピーオーラで笑顔を届けるご機嫌ボーイです。「ママタルト檜原の楽しみ日記」では、そんな檜原さんの生活にある“お楽しみ”を皆さんにおすそ分け!
■第6回「お花」
第6回の更新がやってきました。
「僕は月に2度ほど、ウォーカープラスというWEBサイトにて、エッセイを連載していたのさ。だからもしこの島で争いが起きたりした時は、僕がエッセイを書いてみんなの気持ちを落ち着かせるとするよ」
これはもし僕の乗る船が難破して無人島に漂着した時、漂着した人間たちで行われる最初の自己紹介で言おうと思っているセリフです。
僕がそのセリフを言って、「おお、それはありがたい!弱った身体に力がみなぎるような、ちょっとクスッとくるエッセイを頼むよ」という風に周りがなれば最高です。
僕のあとに続くみんなの自己紹介が、
「俺は指をタッチしあって、指が5になったら負けのゲームに誘われたら、絶対やるぜ」
「私はどんなに汚いスリッパでも、べつに履けるわ」
「僕は乳首の毛がとても長いので、それを使った芸ができます」
というような感じであればさらによく、一人一人の力は頼りなくても、和気あいあいと協力し合い、無人島から脱出することができるでしょう。
問題はそうでなかった時です。
「僕は月に2度ほど、ウォーカープラスというWEBサイトにて、エッセイを連載していたのさ。だからもしこの島で争いが起きたりした時は、僕がエッセイを書いてみんなの気持ちを落ち着かせるとするよ」
「なんでお前俺らに対してタメ口なんだよ」
こうなった時はかなり厳しい。
僕が合流する前に、ヤンキーのグループが幅を効かせていたようです。さらに続きます。
「なら今、早速ここで書いてみろよ」
この時点で僕は生きて無人島を出ることを諦めているでしょう。
一生懸命、地面に石でエッセイを書いてみたはいいものの、ヤンキーのみなさんに「なんだよミュージックシャンプーってそれの何がおもしれえんだよ。もういい、こいつを食べよう」と言われる未来が見えたのです。
やっぱり無人島に漂着した時は、
「物を運んだり木の実を集めたりするのが大好きです。大声を出すのも好きなので、遠くの海に船が見えたら全力で叫びたいと思います」
こっちにしておいたほうがいいかもしれないですね。
今回のお楽しみは「お花」。
このエッセイは僕の生活にある“お楽しみ”を皆さんにおすそ分けするというものですから、鋭い読者の方ならやはり遅かれ早かれ「お花」が登場することは気付いていたのではないでしょうか。
去年くらいから、学園祭や撮影に行かせてもらった時に花束をもらうことが増えてきました。
最初は花束のまま玄関に飾って、かなり枯れたらゴミに出すというようにしていたのですが、ある日「いやいや、花瓶があったら、そこにもらった花束を飾れて、一気に生活の質がアップするのとちゃうの」ということに気付き、新宿三丁目の青山フラワーマーケットで花瓶を購入しました。
素敵な劇場こと新宿シアターマーキュリーで行われたライブの入り時間前の出来事です。花屋さんに行ったのが初めてに近かったので、勇気を出して店員さんに「花を飾ってみようかと…」と声をかけたのを覚えています。
部屋に花瓶を置くようになってからの生活は優雅さを増しました。もらったお花を花瓶に移し替えた時、「俺はなんて余裕があるんや」と思うようになったのです。
(ほかに「俺はなんて余裕があるんや」と思うことといえば、詰め替え用のシャンプーを容器に移す時に発生したシャボン玉をフゥ〜、フゥ〜と下から息を優しく吹きかけて、天井まで到達させてパッと消えさせた時ですかね。)
家に花瓶を置いてからは、ときどき花屋さんに寄るようにもなりました。
今までは、花屋さんを見ては「花を買うって!どんだけ金持ちやねん!その金を俺にくれ!」と思うほど心も貧しかったのですが、最近は「あ、花屋さんだ(^^)どの素敵なお花を部屋に飾ろう」と思うくらい心が豊かになりました。
この前も一日撮影をさせてもらって、最後に花束をもらえました。実際に花束をもらえる1時間前くらいから明らかにスタジオの中にお花の匂いがしていたので、「これ絶対帰りしなに花束あるぞ!激アツすぎる!」と胸が高鳴っていましたね。
もちろん家に帰ったらすぐに花瓶に移し替えて飾りました。この時の僕の余裕のありっぷりは見てほしかった。
その時の僕なら余裕がありすぎて、「檜原さんのInstagramが乗っ取られて、フォロワー全員にDMで詐欺のリンクが送信されています」と連絡が来ても、「あぁそうですか。じゃあそうですね。まあ、1週間ほど様子を見ましょう」と返していたでしょう。