
この世界の成り立ちを自分の目で見たかったと語る / 矢嶋こずみ(@kosmy8588)
コロナ禍に一般企業を退職したことを機に、「ヤングジャンプ」の「1億円40漫画賞」に応募し、その作品が見事入賞した矢嶋こずみ(@kosmy8588)さん。現在は版面漫画やWebtoonの背景作画・仕上げを担当する仕事をしながら創作活動を続けている。
そんな矢嶋さんの作品「100年分の度胸試し」がネット上で“考えさせられる”と話題だ。100を超えるコメントがつき、「こんな世の中が来たら怖い」「命の使い道、我々は正しく選べているだろうか」「心が痛い…」などの感想が飛び交った。この作品について、作者の矢嶋こずみさんに話を伺った。
■近未来の再生医療技術“ドナー法”が施工されて50年後の世界を描く
“ドナー法”が施行されて50年後の世界を描く / 矢嶋こずみ(@kosmy8588)
「若いうちに痛い目遭った方がいい」と見当外れのことをもっともらしく言う同級生たち / 矢嶋こずみ(@kosmy8588)
100年分の度胸試し_P003 / 矢嶋こずみ(@kosmy8588)
カズオ・イシグロ著書「わたしを離さないで」をモデルに描かれた本作、「100年分の度胸試し」。徹底したドナー視点のストーリーである原作とは異なり、作者の矢嶋こずみさんが「この世界に生きている人間たちはどんな気持ちなんだろう?」と思って描いたという、いわゆる二次創作的な傾向が強い作品である。
古典作品のオマージュや、パロディ化した作品も商業として成立している世の中であるとはいえ、「多少ネガティブな意見を気にしながらpixivに投稿してみました」と話す矢嶋さん。しかしいざ投稿してみると、当初矢嶋さんが懸念していたことは全くなかったのだそう。矢嶋さんは「原作に気付いてくださった方からも好意的な感想をお寄せいただき、安心したのを覚えています」と当時を振り返る。
「悲しい結末で終わった原作に対し、前向きで希望が見出せるようなお話を目指しました」と作品に込めた思いを語る矢嶋さんには、とある好きな言葉があるのだという。それは「人が自分の為にした行いは死と共に消えるけど、他の人や世界の為にしたことは永遠に生き続ける」というもの。あくまで娯楽漫画であるとしながらも「その想いがほんの少しでも伝わっていたらうれしいです」と最後に矢嶋さんは読者に向けてコメントを残してくれた。
「生きるとは何だろう」「その意味とは」繰り返される問いかけの答えは、新たな再生医療技術が生まれた世界でどのように変化していくのか。この作品を通して今一度「生きるということ」と向き合いたいと思う。
取材協力:矢嶋こずみ(@kosmy8588)