
おばあさんを助けたい青年は必死だった / びっけ(@BK0418)
「シロさん」「雪ちゃん」「大福さん」「わたあめさん」…彼女にはたくさんの名前があった。古い家に住んでいる彼女は、色白で白髪。いつも白色の着物を着て縁側に座るかわいいおばあちゃんだった。名前を尋ねると「好きに呼んでくれていいわよ」と言う。町内の人たちは彼女のことを、その見た目から“白”になぞらえた思い思いの名前で呼んでいた。
本作を描いたのは、2013年に「王国の子」で「ブロスコミックアワード大賞」を受賞したのち、2014年に「真空融接」が単行本化されて漫画化デビューしたびっけ(@BK0418)さん。初受賞作の「王国の子」はのちに単行本化され、全9巻が刊行された。現在は、「極彩の家(新書館/11巻まで刊行中)」や「エイラと外つ国の王(秋田書店/10巻まで刊行中)」などの代表作を持つ。今回紹介する本作「わたしは名前がたくさんある白」は、2024年7月に「第1回マンガノ大賞」の最終候補賞を受賞したばかりの話題作だ。びっけさんに本作について話を聞いてみた。
■長い間住んでいた家から離れられないおばあさん。その理由は…。
わたしは名前がたくさんある白_P01 / びっけ(@BK0418)
町内の人たちはひとりで暮らす彼女のことを気にかけていた / びっけ(@BK0418)
名前を明かさない彼女。みんな好き好きに彼女のことを呼んでいた / びっけ(@BK0418)
本作の作者であるびっけさんは、お気に入りのシーンについて、「入試結果を見たあとに雪の中をサチさん(おばあちゃん)のところに駆けつけた少年の表情と、サチさんの本当の姿です」と語る。教えてくれたシーンは、作者が特に強い思いを持っているシーンであり、「このシーンを目指して描きました」と熱く語ってくれた。
本作の舞台は、白を連想させるさまざまな名前を持つおばあさんと、彼女が住んでいる静かな街の近所の人々。 最初は穏やかで平和な日常が繰り広げられていたが、掲示板に貼られた一枚の張り紙がきっかけとなり、街の人々やおばあさんとの関係に少しずつ変化が訪れる――。という展開が描かれている。
本作は多くの読者の心に深く響き、「3回読んだけど3回とも泣いてしまった…」「すてきな話で何回も読み直してしまいました」といった感動の声が届くほどだ。その人気は非常に高く、一時は紙の本が売り切れるほど。多くの読者に愛され、支持されている本作は、心に残る感動的なシーンが多くある。また、最後に明かされる近所から親しまれていたおばあさんの正体には、「○○かと思って読んでいたけどそっちか!」「△△じゃなかったのか…!」と読者からの反応も新鮮!まだ本作を読んでいない人は、ぜひ一度は読んでほしい作品だ。
取材協力:びっけ(@BK0418)