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「じゃない方」の選択肢を持とう【いきものがかり山下穂尊の『いつでも心は放牧中』Vol.8】

  • 2017年10月13日
  • Walkerplus

学校に通っていると、どうしても年齢というもので区切って考えがちだ。日本の教育や文化はとくにそういう“先輩後輩”みたいな上下関係を軸にするところがある。

旅に出て、まず取っ払われたのが年齢の壁だった。

二十歳の誕生日、上海に向けて船で出航した。とりあえず上海に行こうということを決めて、あとはなんとなく東南アジアの方にでも足を伸ばしてみようかなという感じの気楽な旅だった。

上海ではいろんな人に会った。日本人も中国人もアフリカ系の人たちもたくさんいた。

その中に、23、24歳くらいの日本人の男性がいた。

たしかもう大学は出ていたと思う。二十歳の僕からしたらかなり先輩だ。学校に置き換えたら、高一の時にもう大学生とかそれくらい違うのだから。しかし、その彼と話をしていると、ずいぶん幼い印象を抱いた。自分の現状に対する認識、将来への展望など、どれも子供のように人に寄りかかるものがあった。

かと思えば同じ旅で、ベトナムで出会った18歳か19歳の早稲田大学の1年生と言っていた男の子は、2つほど年上の僕なんかよりぜんぜんしっかりしていて、ここまできちんと自分のことを話せる年下がいるのかと感心した。

年齢というのは、あくまで年齢であり、ある程度まで自我ができた人間にとって、それは単なる年数を表す数値でしかないのではないか--そんなふうに思った。それよりも、自分が何を感じ、何をやり、また、何をやろうとしているのか、そのことのほうが大切だ。

そうした旅での出会いの数々が、僕をどんどん自由にしていってくれた。この、人間は年齢が絶対的な物差しではない、という考え方は僕の感性にものすごく響いた。

ベトナムから陸路でカザフスタンに行くという人の話も刺激的だった。日本にいったい、カザフスタンの良さを何時間も他人に語れる人間がどれほどいるだろう。そもそも東南アジアのベトナムから中央アジアのカザフスタンまで陸路で行けるのだということも僕にとっては驚きだった。

あるいはまた、グァテマラ、ホンジュラス、ニカラグアといった中米の国々を旅している時に感じたのは、日本人って意外と英語知ってるんだなということだった。

日本人は、中学生からきちんと英語を習う機会があるのに、まったく喋れない、というようなことがよく言われていたりする。たしかに、たとえば中学高校の6年間みっちり習うわりには、それでペラペラに喋れるようになる人というのは稀だ。

しかし、中米の国を旅していると、ほとんど英語が通じない。誰も英語を知らないのだ。メキシコのようにアメリカに近い国であればまた別なのかもしれないが、僕の訪れた国々ではまったく通じなかった。「ストロベリー」がわからないのだから。さすがに日本人は「ストロベリー」くらい誰だって知っている。

そう考えたら、日本人は英語を--喋れるかどうかは別として--知っているという点では世界的に見ても水準が低くはないのではないかと思った。

そんなことも旅に出て初めてわかるものだ。

やはりどこかにステレオタイプな思考というものがあるのだ。

同じところにずっといると、そういった凝り固まった考え方でいるほうがスムーズだから、そうなるのも仕方がない。べつにそれを否定はしない。ただ、僕はいろいろなことが知りたかった。単純に、ここではないどこかには何があるんだろうという興味が尽きなかった。

そして、実際に旅先で出会う人や物事は、いちいち僕にとって「じゃない人(こと)」ばかりだった。それらは、僕の中に新しい選択肢として加わった。

十代の頃は、人とは何か違うことをしてみたいと思うのは普通だ。しかし、だから何をすればいいのか、どうすればいいのかわからないまま、社会の大きな流れに沿って生きて行くことになる。旅先で出会った人たちは、多くがそんな流れから外れたところで生きていた。

物事に絶対的な正解はないと思っているし、それはどこかから与えられるものではない。結局、自分で気づいて、自分で見つけるものが正解なんだと思う。

「今の俺、正解じゃないな」と思ったら、一歩踏み出してみればいい。そうすれば、自分の中の何かをぶっ壊してくれるものにぶち当たるはずだ。きっかけはそこら中にある。

もしかしたら、僕がこうやって慣れないエッセイ連載をやっているのも、そういうことかもしれない。

ここでお知らせでございます。この『いつでも心は放牧中』が一冊の本として11月11日に発売されることになりました。旅のこと、思春期の頃の話、そしていきものがかりについてなど、連載では語りきれなかったことをたっぷりお届けします。

そして連載はもう少し続きますので、また次回お会いしましょう。

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