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スターバックスがバイオマス素材のストローを導入!いったいどんなストロー?

  • 2025年1月25日
  • Walkerplus

スターバックスがバイオマス素材のストローを導入!いったいどんなストロー?

スターバックスのストローが、紙製から、生分解性のバイオマス素材のストローに順次変更になることが昨年発表され、SNSが大いに沸いた。新ストローは総合化学メーカー・カネカの「カネカ生分解性バイオポリマー Green Planet(R)」製で、飲み心地の良さと環境負荷低減を両立しているという。いったいどんなストローなのだろう。カネカGlobal Open Innovation 企画部の宅 佑奈さんに聞いた。

■微生物の力で作られるGreen Planet(R)
新ストローは植物由来のバイオマス素材で、従来の石油由来のプラスチック製品とそん色ない使い心地でドリンクを楽しめる。その原料となるGreen Planet(R)の大きな特徴は「植物などのバイオマス原料で作られていること」「海水中や土壌で生分解されること」の2つだと宅さんは言う。まずは生産方法について伺った。

Green Planet(R) は微生物の力で作られる素材だ。微生物がプラスチックをつくる…とはどのような仕組みなのだろう。
「植物油を微生物に食べさせると、微生物がエネルギー源としてポリマーを作り出し、菌体内にため込みます。人の脂肪のようなイメージですね。それを取り出したものがGreen Planet(R)です」と宅さん。
しかもその微生物の大きさは、おおよそ1000分の1ミリなのだというから驚きだ。
カネカGlobal Open Innovation 企画部の宅さん
カネカGlobal Open Innovation 企画部の宅さん


「ビールタンクで酵母を発酵させるようなイメージで、植物油などの原料と微生物を入れて温度や湿度を管理して増殖。微生物の中からポリマーを抽出し、きれいに精製します。それを加工しやすいように米粒ほどのサイズに加工します」
そうして白い粒状の原料となって、さまざまな製品が作られるのだそうだ。

そもそも微生物からプラスチックがつくられること自体が珍しいことだという。
「プラスチックを体内にためる微生物がいることは100年ほど前から知られていました。でも、微生物から採取できる量は少なく、硬くてもろかったために製品として使いづらく、工業化は難しいと考えられてきました」
それを改良し、世界で初めて工業化したのがカネカだ。1990年代前半から研究がスタートし、1000トンの量産化ができるようになったのが2011年。実に30年もの歳月に蓄積された技術が、新ストローに詰まっている。
また、現在Green Planet(R)の生産量は年間5000トンだが、2024年度中に2万トンに増強される予定だ。こうした生産量の向上も、全国に約2000店舗あるスターバックスでのストロー導入の支えになっている。

■ライフサイクル全体でCO2の排出を低減する
スターバックスでは石油由来のプラスチック製品の使用を廃止してCO2の排出削減に貢献するため、2020年にFSC(R)認証の紙製ストローの導入をスタートした。そこから5年を経てGreen Planet(R)製のストローへ変更するにあたり、スターバックスではCO2の排出削減について紙製ストローと細部まで比較検証している。
スターバックスで導入される新ストロー。右側が通常の口径、左側がフラペチーノ(R)などで使われる太い口径のもの
スターバックスで導入される新ストロー。右側が通常の口径、左側がフラペチーノ(R)などで使われる太い口径のもの


「Green Planet(R)の原料は主に植物油。植物は大気中にあるCO2を吸収し光合成するので、その吸収量と焼却処分の際のCO2の排出量は、プラスマイナスゼロといえます。また、紙製ストローと比べて重量も半分ほどになるので、輸送や廃棄、焼却などに必要なエネルギー量も低くなります。
スターバックスさんは、Green Planet(R)の生産、ストローの製造や輸送などのライフサイクル全体の負荷を計算して数値化した結果を比べて、紙製より環境負荷が低減できると評価し、採用してくださいました」と宅さん。

■土の中でも海水中でもCO2と水に分解される
そしてGreen Planet(R)のもうひとつの大きな特徴が、「生分解性」。生分解とは、微生物の働きにより、CO2と水に分解されて自然界に循環していく性質を指し、特に海水中でも生分解できるバイオプラスチックは希少だ。
「Green Planet(R)は、土の中や海水の中で生分解されることが実証され、日本バイオプラスチック協会の「海洋生分解性バイオマスプラ」認証※も取得しています。特に、温度が低く微生物の活動が弱いことから、生分解しづらいとされる海水中でも生分解性があることが強みで、海洋プラスチックごみ問題の解決にも貢献できます」

これは、実際にGreen Planet(R)製ストローの海中での分解を検証した写真だ。日が経つにつれて分解が進み、90日後には原型がほとんどなくなっている。
Green Planet(R)製ストローの海水中での生分解を示したもの。左から0日、30日、60日、90日経過
Green Planet(R)製ストローの海水中での生分解を示したもの。左から0日、30日、60日、90日経過


だが、これはポイ捨てをしていいですよ、ということではない。
「万が一、海など自然に流れ出てしまっても生分解されるということです。Green Planet(R)に限らず、ごみは適切な分別・処分をすることが大切です」

■飲み心地の良さと、環境負荷低減を両立するストロー

これまでの紙製ストローは、長時間使用するとふやけやすいなどの声が客からあり、スターバックスがそうした声に向き合ってさまざまな素材などを検討し、導入を決めたのが今回の新ストローだ。Green Planet(R)は口当たりが軽くなめらかな飲み心地でドリンクを楽しめるが、ストローに加工する技術は大変高度なものだと宅さんは語る。

「Green Planet(R)は、薄く均一の厚さに加工するのがとても難しいんです。初めて製品化したのもストローで、ストローメーカーと共同開発していますが、石油由来のプラスチックと同じ方法ではできないため、完成までに数年かかっています」

また、原料となるGreen Planet(R)は、柔らかな成分と固い成分の2つの成分で構成されている素材で、どちらの成分を多く含むかで特性を異にする製品を作ることができる。
「そうした固さの異なる何種類ものGreen Planet(R)があり、作りたい製品によりそれらを数種類ブレンドし、加工に適した固さにします。フラペチーノ(R)用の太い口径のストローは、薄いうえに太いので、製造過程でゆがみやすいという難しさがありました」

Green Planet(R)製のストローは、こうした「技術の結晶」だと宅さん。最後に、スターバックスの新ストローを通し、「環境のためには、多少の我慢が必要になるイメージがあるかもしれませんが、このストローは環境貢献と利便性を両立できる素材であり、環境のためにできることは我慢だけではないということが伝わったらうれしいです」と語った。
飲み心地と環境負荷低減を両立した新ストローは、1月23日(木)より沖縄県内の店舗で、3月以降に全国の店舗でレギュラーのストローを順次導入。25年4月上旬をめどに、太い口径のストロー(主に季節のフラペチーノ(R)に使用)も沖縄県を含む全国の店舗に導入される。反響が楽しみだ。

※1.日本バイオプラスチック協会の「BP90(バイオマスプラスチック度90%以上)」認証取得。ライセンスナンバー:N0.1255。
日本バイオプラスチック協会の「海洋生分解性バイオマスプラ」認証取得。ライセンスナンバー:N0.0029。
一部、着色のために顔料を用いていますが、ストローは、海水中で生分解される素材を用いています。



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