
愛知県名古屋市にある刀剣の博物館「名古屋刀剣博物館」で、2025年3月22日(土)から6月1日(日)まで、日本最高峰の刀匠の技術によって再現された「天下三名槍」を展示する特別展「天下三名槍」が開催され、名だたる武将に愛された3本の名槍の写しを間近で見ることができる。また、開館1時間前から入場して参加者だけで展示室を貸切できるスペシャルなバスツアーも催行が予定されている。
特別展「天下三名槍」
■5年に渡るプロジェクトがついに結実
名古屋刀剣博物館では、美しい3本の槍「天下三名槍」を日本最高峰の刀匠の技術によって再現する「天下三名槍 写し制作プロジェクト」を企画。同展は、プロジェクトのスタートから5年の時を経てはじめて天下三名槍の写しが一カ所にそろう特別な機会だ。
特別展「天下三名槍」
期間:2025年3月22日(土)~2025年6月1日(日)
場所:名古屋刀剣博物館北館4階特別展示室
主な展示品:天下三名槍写し|蜻蛉切、日本号、御手杵(上林恒平さん作・柳村宗寿さん彫)
■天下三名槍写しが特別展示室に結集
同じ刀匠によって制作された天下三名槍の写しを、名古屋刀剣博物館の特別展示室に同時に展示。
■天下三名槍とは
槍 無銘(名物:日本号)
室町時代の刀工である大和国(現在の奈良県)金房派の作と伝わる名槍。御物(皇室の私有品)として「正三位」の位を賜った槍としても知られる。織田信長、豊臣秀吉、福島正則、黒田氏などに伝来し、現物は福岡市博物館蔵。
【写真】天下三名槍のひとつ、「槍 無銘(名物:日本号)」の写し。織田信長、豊臣秀吉、福島正則、黒田氏などに伝来
槍 銘 義助作(号:御手杵)
室町時代の刀工である駿河国(現在の静岡県中部)四代義助の作。全長1丈1寸(約333.3センチ)、刃長だけで4尺6寸(約139センチ)の大身槍で、三名槍の中でも最大級の威容を誇る。戦国大名・結城晴朝が所持し、結城氏から松平氏へと伝わる。東京大空襲で焼失し現存せず。
槍 銘 義助作(号:御手杵)
大笹穂槍 銘 藤原正真作(号:蜻蛉切)
伊勢国(現在の三重県)の村正一派の刀工・藤原正真作の大笹穂槍。本多忠勝の愛槍としても知られる。名の由来は、飛んできた蜻蛉が当たって2つに切れたという逸話から。現物は個人蔵(佐野美術館寄託)。
大笹穂槍 銘 藤原正真作(号:蜻蛉切)
■日本最高峰の技術を持つ現代刀匠と彫師が制作
今回の天下三名槍写しを制作した刀工は、現代刀匠の最高位「無鑑査」を担い、山形県指定重要無形文化財保持者でもある上林恒平さん。さらに、日本号に精巧な刀身彫刻を施す作業には、彫師の柳村宗寿さんが当たった。なお刀剣ワールドでは、作刀の工程を収めた動画を公式YouTubeチャンネルで発信している。
■各槍や武将にゆかりのある刀剣なども登場
今回の特別展では、各槍や武将にゆかりのある刀剣も展示される。蜻蛉切については本多氏の刀剣や本多忠勝の甲冑写しが、日本号については黒田氏ゆかりの刀剣や刀身彫刻が際立つ刀剣が、御手杵については義助作の刀剣のほか結城氏ゆかりの刀剣などが登場。
本多忠勝 甲冑写し(黒糸威胴丸具足)
■宿泊&日帰りの特別鑑賞バスツアーも
今回の特別展の開催に合わせ、3月と4月に各1回ずつの計2回、特別鑑賞バスツアーが実施される。学芸員の詳しい解説を聞きながら博物館をゆっくりと観覧できるほか、実際の刀を手にとって鑑賞体験ができるなど、ツアー参加者だけのうれしい特典が盛りだくさんだ。
■「天下三名槍」特別鑑賞バスツアー(宿泊)
[ツアー日程]
1回目:2025年3月22日(土)・23日(日)
2回目:2025年4月29日(祝)・30日(水)
1泊2日バスツアーのポイント
・開館1時間前に入場、学芸員の詳しい解説付きで博物館をゆっくりと観覧
・実際の刀を手にとって鑑賞体験ができる特別なイベントを開催
・「刀剣ワールド名古屋・丸の内別館」と「刀剣ワールド桑名・多度別館」を鑑賞
・博物館の開館を記念したオリジナル図録をプレゼント
・ミシュランガイド掲載のホテル多度温泉に宿泊
・「桑名歴史案内人」が本多忠勝ゆかりの地・桑名市内の史跡や博物館をご案内
■「天下三名槍」日帰り鑑賞バスツアー
[ツアー日程]
1回目:2025年3月22日(土)
2回目:2025年4月29日(祝)
日帰りバスツアーのポイント
・開館1時間前に入場、学芸員の詳しい解説付きで博物館をゆっくりと観覧
・実際の刀を手にとって鑑賞体験ができる特別なイベントを開催
・併設の和カフェ&レストラン「有樂」でランチ
・「刀剣ワールド名古屋・丸の内別館」を鑑賞
■名古屋刀剣博物館
所在地:愛知県名古屋市中区栄三丁目35-43
営業時間:10時~17時(最終入館16時30分)
休館日:日月(月曜が祝日の場合は翌日火曜が休館)
今回のイベントについて、担当者に話を聞いた。
ーー今回のイベント開催の意図や狙いは。
開催の狙いは、天下三名槍を現代最高峰の技術で写しとして再現し、その美しさや歴史的価値を来館者に伝えることです。また、現代刀匠と彫師の技術を天下三名槍に蘇らせることによって日本の伝統技術である作刀の保存と継承に役立てること、さらには、槍にまつわる歴史や武将のエピソードを通して、誰もが戦国時代の文化や武士の精神をより身近に感じてもらうことも狙っています。
ーー今回のイベント開催の目的は。
来館者に天下三名槍や関連武将の歴史を知ってもらい、日本刀文化と歴史への理解を深めること。同時に、写し制作に用いられた現代の刀工や彫師の高度な技術を伝えることで、刀剣が「武器」だけでなく「美術品」としての価値を持つと知っていただきたいです。また、三名槍を再現し、来館者にその姿を直接体感してもらうことも目的としています。
ーー今回のイベントのターゲットは。
戦国時代や武将に興味を持つ歴史ファンや刀剣愛好家、また、日本の伝統工芸や職人技に関心を持つ人々、刀剣を題材とした人気コンテンツ「刀剣乱舞」のファン層、若年層や女性層に向けています。加えて国内外の観光客や家族連れ、初めて刀剣文化に触れる層にもお越しいただければと思っています。
ーー今回のイベントのアイデアはどのようにして生まれた?
戦国時代に名を馳せた天下三名槍(蜻蛉切、日本号、御手杵)を現代の最高峰の技術で復元し、その美しさや歴史的背景を広く伝えたいという思いから生まれました。
ーーアイデアの実現にあたって苦労した点は。
三名槍の再現には、現代刀匠や彫師が歴史的技術を忠実に再現する高度な技術が求められました。現代刀匠の最高位「無鑑査」であり重要無形文化財保持者の上林恒平さんと、精巧な彫刻技術を持つ柳村宗寿さんにご依頼し、最新技術と伝統工芸を融合させて5年という年月をかけて制作を成功させました。
ーー読者へのメッセージは。
この展示は、歴史の記録に基づいて名槍を再現するという学術的価値と、現代の最高技術で歴史を蘇らせる芸術性の両方を実現した、挑戦と工夫の結晶です。その結果、観覧者にとっても貴重で感動的な体験を提供することができる特別展となりました。さまざまな方にお越しいただければ幸いです。
天下に名の知れた名槍の写しを3本一緒に鑑賞できるこの貴重な機会を、お見逃しなく!