

「中学校2年生から高校1年生までのはっきりした記憶がない」
そう語ったのは、書評ライターや連句人として俳句や文芸情報をX(旧Twitter)で発信している高松霞さん(@kasumi_tkmt)。
家族の不幸に無意識に追い詰められていた日々と、それにより発覚した躁うつ病との日々を綴ってもらい、その心情にぴったりな俳句とともにコミカライズ。
作画は、自らのことを「霊感のようなものがある人間」と紹介する桜田洋さん(@sakurada_you)が担当。その柔らかで心に染み入る絵のタッチと、鮮やかな色づかいが魅力だ。
今回は、これまでの回で登場した俳句を、俳人歴20年以上のベテラン2人に解説してもらう回。ガチ俳人の解説を聞く前と、聞いた後とでは、俳句を見る目が大きく変わるはず。5・7・5の17音に対して、こんなにも深い考察ができるのかと驚くこと請負です。
■解説つきで味わう俳句で、より深くにのめりこむ
1話P1-1 / 漫画=桜田洋、原案=高松霞
1話P1-2 / 漫画=桜田洋、原案=高松霞
1話P2-1 / 漫画=桜田洋、原案=高松霞
1話に出てきた俳句「人間を絞れば水や藤の花」について、てふこさんと火尖さんの解説を聞いて、高松さんは「語彙がすごくあるな、と(笑)。『人間を絞る』と『圧死』のイメージの重なり。『だらりと咲く藤の花が臓物っぽい』という連想。さすが俳人ですよね」と感想を述べた。
また、3話に出てきた俳句「小鳥きて姉と名乗りぬ飼いにけり」の解説については、「『小鳥来て』が秋で、『小鳥引く』が春だとは知りませんでした。その渡り鳥を『飼って』しまうなんて、グロテスクですよね。『モラハラ支配気質の飼い主を思わせる句なんですね、それが父親の不気味さとしっかりリンクしてる』には、その通りすぎて笑ってしまいました」と語った。
高松さんがおこなっている「連句」という文芸には、俳句の「評」文化はないため、普段は他人に俳句を見てもらう機会は無いとのことで、今回「いい句」と言われてホッとしたという。
最後に「虫の音や私も入れて私たち」という俳句と、友人たちと肩を並べて座るシーンが描かれている。この俳句を選んだ理由について「友達よ!みたいな句、とリクエストして出てきた句でした。予想以上に句が引き立つ、じんわり染み入る絵にしていただいて……。句に関しては、『私』『私たち』と言うように、複数人の中でも『私』を見失っていないところがとても好きです」と語った。
解説を聞いたうえで俳句を味わうと、より深くにのめりこむような感覚になる。ぜひ俳句の世界を楽しんでみてほしい。
取材協力:高松霞(@kasumi_tkmt)