
長きにわたり祀られていた「神像」が逃げた。「神像」は、女・子どもの願いを叶えるという。その結末が毎回恐ろしい。今回は、さかいめがみ(@shindelmegami)さんが描く創作漫画「さいの神様がいるシリーズ」を紹介するとともに制作の経緯などを聞く。
■人の頭のようなサイズの塊が、布団の周りをグルグルと…
逃げた02 / 画像提供:さかいめがみ(佐海暝一)@shindelmegami
逃げた03 / 画像提供:さかいめがみ(佐海暝一)@shindelmegami
逃げた04 / 画像提供:さかいめがみ(佐海暝一)@shindelmegami
逃げた08 / 画像提供:さかいめがみ(佐海暝一)@shindelmegami
逃げた11 / 画像提供:さかいめがみ(佐海暝一)@shindelmegami
始まりは火の玉のような光だった。玉は徐々に動き出し、寝ている布団を周回している。徐々にすざましい速さになり、寝ていた子どもは電子レンジに入れたかのような焼死体になった。
逃げた15 / 画像提供:さかいめがみ(佐海暝一)@shindelmegami
逃げた20 / 画像提供:さかいめがみ(佐海暝一)@shindelmegami
その後、とある少女の枕元に焼死体になった男の子が立ち、「真実を伝えてほしい」と言われる。男の子の願いを断ると、「伝えてよ!」「伝えてよ!」「伝えてよ!」と少年は怒りをあらわにした。
逃げた25 / 画像提供:さかいめがみ(佐海暝一)@shindelmegami
逃げた26 / 画像提供:さかいめがみ(佐海暝一)@shindelmegami
逃げた31 / 画像提供:さかいめがみ(佐海暝一)@shindelmegami
少女はお祓いができる家系でもあったが、少年の“無念”が強く怖かったという。兄が「山神さまにお参りしていこう」と二人で高台に向かうと、神社の境内から「トーントーン」と音がして、少年の頭部が転がり落ちてきた…!頭を追いかけた先で、兄妹は壊れた神像を目にする。村を守っていたさいの神様が消えてしまった。そこから事件は始まる。
■さいの神様が巻き起こす怪奇な事件について作者に聞く
誰じゃあ!05 / 画像提供:さかいめがみ(佐海暝一)@shindelmegami
――本作は「長年構想を重ねてきたもの」と聞きました。制作の経緯を教えてください。
私が個人的に落書きで漫画を描き始めて、一番最初に出てきたのがこの「さいの神様」という存在でした。それはほとんど自動書記だったのですが、自分の手から勝手にどんどん語られていく「さいの神様の物語」にすっかり魅了され、そこから創作作品を描くということにハマりました。それ以来、私の創作における守り神みたいに思って大切にしてきました。
pixivに最初にアップした作品もさいの神様のイラストですし、これまで別シリーズにもお守り代わりに存在を散りばめてきたりしました。いつかこのさいの神様をメインにして、落書きではなく、ちゃんとした作品を作りたいなと練りながら腕を磨いてきました。
最近ようやく自分の描くものに自信がついてきたので、やりたいことを整理し、制作に着手しました。今出てるエピソード自体は日頃ちまちま集めてきたホラーアイデアをさいの神様用に整えて、新しく描いたものです。
逃げた 見せんじゃねえ版11 / 画像提供:さかいめがみ(佐海暝一)@shindelmegami
――第2話に「怖そうなシーン全部隠したモザイク版」がありますが、このような形のホラーを初めて見ました。このモザイク版は、「黒い紙きれ」など続編と関係して描いたのでしょうか?
「これまで以上にもっと怖いホラーを描いてみたい!」と思って第1話の「逃げた」を全力で描いたのですが、思ってた以上に怖い絵が多くなってしまいました。そこで、怖い絵面は苦手だけど話だけは知りたいという読者さんのためにモザイク版を作りたかったのですが、でもそうするとシリーズ内にただ同じ話を2回置くことになります。
それだけじゃつまらない気がして、「だったら5話と6話の伏線にしちゃおう!」と思いついて、「見せんじゃねえ版」として繋げました。このシリーズにおいて黒いモザイクは、「見なくていいよ」というさいの神様の優しさというか、おせっかいの現れなので、それがどんなものかを実感できる回にしてもらえればと思っています。
ギャルパンティおくれ03 / 画像提供:さかいめがみ(佐海暝一)@shindelmegami
――本シリーズでこだわったところがあれば教えてください。
今回は今までのホラー作品よりも話がシビアになるように意識しました。普段はもう少し綺麗ごとも大切にして、むやみに人がひどい目に遭って死んだりしないように気を配ったり、現実的な落としどころを探したり、なるべく倫理的な引っかかりが出ないように描くのですが、今回はあえてそうしないようにしました。
なので、1話では人が理不尽に惨たらしく死んじゃいますし、3話では子どもが犯罪に巻き込まれてますし、4話では村ぐるみで邪魔な老人を見捨てますし、6話では暴力には暴力をぶつけて問題を片づけます。人間の問題なのに、人間よりも大きい力が介入してしまいます。でも、自分の中にある綺麗ごとやストッパーを一旦どけないと、自分より大きくて深いものは描けないかなと思って、頑張って挑戦してみました。これは今後もバランスを見極めつつ意識していきたい部分です。
ギャルパンティおくれ04 / 画像提供:さかいめがみ(佐海暝一)@shindelmegami
――第3話の「ギャルのパンティおくれ」が全作のなかでもちょっと異質ですが、おもしろかったです。「神像」というのが、キーワードでしょうか?
ありがとうございます!実は、普段はコメディを描いていて、そちらの方が手癖なので得意です。3話は今回一番最初に思いついた「さいの神様」関連のお話です。見た目的にお地蔵様と混同されがちなので「神像」であって地蔵じゃないことを述べるための回でもありました。そしてこの神像の「有難さ」よりも、不吉さや不気味さを強調したくて、ギャグからホラーに急落させて温度差を出しました。ちなみにこの荒っぽい運転で出す温度差は、私の作風の一つです。風邪をひかないようにお気をつけください。
誰じゃあ!07 / 画像提供:さかいめがみ(佐海暝一)@shindelmegami
――さいの神様がいるシリーズはまだまだ続きますか?
昔からずっと描きたいと思っていたシリーズなので、これからもさいの神様関連の話はちょいちょい描けたらいいなと思っています。物語としてのはっきりした完結を目指すというよりは、心ゆくまで描きたいものを描き、いろいろ挑戦して、自分のやりたいことを全部詰めたようなものにしたいです。ライフワークの一つとして、気長に育てられたらいいなと考えています。
誰じゃあ!08 / 画像提供:さかいめがみ(佐海暝一)@shindelmegami
――今後の目標やシリーズの展開など教えてください。
子どものころから大のホラーファンなので、私が考えた最強の霊能力者を出してみたいと思っています。あと、逃げたさいの神様の残りがどうしてあんなに厳重に保管されてるのかも描けたら描きたいです。一応大体の筋はありますが、制作はナマモノなのでメインストーリーがどう転ぶかは私にもわからないところがあり、私自身もワクワクしています。もしかしたら急にジャンル違いが挟まったり、好き勝手にやりすぎて破綻してやり直したりすることもあるかもしれませんが、そんな試行錯誤もエンタメとして読者さんも楽しめるように工夫を凝らしていきたいです。「描いていて楽しい」「読んでて楽しい」ホラー作品を生み出すことが目標です。読者の皆さんも私と一緒にぜひ、さいの神様のをお話を楽しんでいただければ幸いです。
取材協力:さかいめがみ(佐海暝一)