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生牡蠣にはポン酢代わりのウイスキーがぴったり?/むぎが氏とワンルーム酒場(10)牡蠣とウイスキーでキメる夜

  • 2025年1月24日
  • Walkerplus

むぎが氏連載「むぎが氏とワンルーム酒場」バナー
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飲むと言ったらわが家一択……!カクテルコンペティションにて特別賞を受賞し、バーテンダーの経験もあるYouTuberむぎが氏。YouTubeでは連日、晩酌の様子を配信し、「朴訥(ぼくとつ)とした語り口に癒やされる」「手際のいい調理は見ていて気持ちいい」「画面からお酒の味が伝わってくる」など話題沸騰中。お酒を愛し、お酒に愛されたといっても過言ではない彼女による、ワンルームで楽しむ晩酌エッセイ連載。連載第10回は、「牡蠣とウイスキーでキメる夜」の様子をお届け!

■牡蠣とウイスキーでキメる夜
冬の季節になると食べたいものがいくつかある。鍋だったり(鍋をそのままかじるわけではない)、みかんだったり、肉まんだったり。……牡蠣もそのひとつだ。生で食べても鍋に入れてもバターで焼いてもおいしくちょっとだけ特別感を得られ、いろんな食べ方ができるオールラウンダー食材だと思う。

今日はお仕事がいつもより早く終わったのでゆっくりと帰宅。いつもと同じ道を歩いているが辺りがまだ明るいと、同じ道でもどこか違う雰囲気を感じる。雲一つない青いお空。こんな日は道端に咲いているお花さんに「こんにちわ」って挨拶したり、太陽さんに「今日も熱いですね」と話しかけたい気分なのだが、変な人と思われるので辞めておこう。解放感に身を委ね、とりあえずいつものようにスーパーに入り、晩酌を考えることにする。

ふらふらスーパーを歩いていたらおいしそうな牡蠣ハッケーン。今日はHPもまだ半分くらいあるし、少し凝った料理のカキフライでも作ろうかしら。ちょうど先日YouTubeのショート動画を寝る前に観ていたら、おいしそうにカキフライを作ってる動画を観てしまい、カキフライ欲が上がっていた。夜のショート動画は時々飯テロがあるから本当に危険。とりあえず、カキフライ用に加熱用の牡蠣を買おう。

もちろん加熱用なので生では食べられない。以前加熱用の牡蠣を間違えて生で食べてしまい、次の日吐き気と食欲減少と熱で体調がすこぶる悪くなったことがあり、以来牡蠣を買うときはパッケージの「加熱用」と「生食用」をちゃんと確認するようになった。HP回復食材かと思えば、まさかのトラップでHPが削られる思いはドラクエで宝箱だと思ったのが実はミミック(モンスター)だった時の後悔と同じような気がする(牡蠣に関しては100億パーセント自分が悪いのですが)。

加熱用牡蠣をカゴに入れると、やっぱ生の牡蠣も食べたいという欲望も捨てきれずに「生食用」の牡蠣もカゴに入れる。前に体調悪くして生牡蠣もう食べない!って思っても時間が経てばまた生牡蠣を食べたり、二日酔いでもうお酒飲まない!って思っても時間が経てばまたお酒を飲んだり、もう恋なんてしない!なんて言わないよ絶対!って言ってみたり、苦しみを経てもなおそれに手を出すのは、人間の性だからでしょうか、それとも私の自我なのでしょうか。千葉ッ!滋賀ッ!佐賀ッ!自我ッ!

さぁ、そんなこんなで今日は楽しい牡蠣パーティだ、ヒャッホー!!とレジに向かおうとしたけど、カキフライだけだと寂しいから見栄え的に千切りキャベツも仲間に加えようと思い野菜コーナーに移動。今日はカキフライを作るのに全集中したいから、キャベツは既に千切りにしてあるのをチョイス。レモンもカゴに入れてレジを済ませ、スーパーを後にする。

しかし、まだお城(私のお家です)には帰らない。牡蠣といえばぜひ合わせたいお酒がある。世間では「白ワイン」や「日本酒」といった醸造酒が正統派な牡蠣に合うお酒の感じがするが、蒸留酒も侮るなかれ。我が家にはそのお酒は今切らしてるので酒屋さんに足を運ぶ。気分が上がりながら酒屋さんに入ると、ふんわりと樽のような香りが漂い、毎回ワクワクする。目の前には飲んだ事があるウイスキー、見た事ないウイスキー、気になってたウイスキー、次々にでてきて大人のディズニーランドですかここは。そのなかでも今日購入するウイスキーは決まっている。それは「ボウモア12年」だ。

ボウモアはスコットランドのアイラ島という場所で作られるウイスキーで、アイラ島はピート(シダやコケなどの野草が炭化したもの)が豊富な場所でもあり、ピートを焚いて乾燥させた大麦麦芽は「ピーテッドモルト」とも言われスモーキーな風味に仕上がる。それゆえにアイラ島で作られるウイスキーはスモーキーな風味が強く残るのが特徴。ボウモアはそのなかでも「アイラモルトの女王」とも呼ばれているウイスキーで、アイラ島でも最古のウイスキー蒸溜所だ。そして牡蠣にボウモアをほんの少し垂らして食べるのが逸品。それ以外でもハイボールにしてカキフライと合わせるのも最高です。

ボウモア12年を手にとり、他のウイスキーたちもチラチラと見ながらレジへ進む。酒屋のワクワクは高校生の時に入ったCDショップと同じようなワクワクがある。あれ買おうかなこれ買おうかなと楽しんでる時間は、あのころと何も変わらないのかもしれない。変わったのは肉付きがよくなった下っ腹と、酒で浮腫んだ顔面と、社会に揉まれて少しだけ図太くなった性格だ。


とりあえず今日はボウモア12年を1本だけ購入し、お城へ帰りましょう。お家に着き、まずは帰宅5秒缶ハイボールをキメていく。今日はシンプルにサントリーさんの角ハイボール缶だ。昨今、いろんな種類の缶ハイボールが目まぐるしく登場して、楽しくもありうれしいのだが、この子は昔からよく飲んでいて飲み慣れた味でもあり、実家のような安心さをも感じる。新キャラが出るとキラキラなその子につい注目しちゃうけど、角ハイボール缶はその奥で微動だにせず、ずっしりと構えている強キャラのようだ。プシュッと缶を開け、ごくごくと飲む。うむ、さっぱりとシンプルな旨さ。安心・安全・信頼の味わい。ひと休みして晩酌の準備をしましょう。

まずは生食用の牡蠣を洗う。ここで大事なことはしっかりと生食用と書いてあるのを確認することだ((生食用ヨシッ!))。念のため、2回目視確認をし、生食用と確認できたので牡蠣をボールに入れて塩をまぶし、水洗いをする。ざるにあげキッチンペーパーで軽く水分を吸いとり、お皿の上に小さい氷を乗せてその上に油きり網のようなものを置いてその上に生牡蠣を乗せる。注ぎやすい軽量カップにボウモア12年を10ミリリットル程度入れ、小皿に生牡蠣を取り、ボウモア12年を数滴垂らす。ポン酢代わりのボウモア12年だ。

それでは生牡蠣のボウモアがけいただきます。口に運ぶと生牡蠣の塩気とボウモア12年の優しいスモーキーな風味が混じり合いおいしい!この食べ方は何度かやっているのだが、大事なのはボウモアを入れる量だと思っている。入れなすぎても少し物足りないし、入れすぎるとアルコールの味が全面に出て少し食べづらさを感じる。興味が出た方はぜひご自身の裁量で試してみてください。

一通り食べてお腹も少し満たされ、カキフライの調理に取り掛かろう。加熱用の生牡蠣を同じように水で塩洗いして、キッチンペーパーで水気をしっかり拭き取る。お椀に卵を割り入れしっかりかき混ぜる。あとは小麦粉とパン粉をそれぞれバットに入れ、小麦粉→卵→パン粉の順番に牡蠣をくぐらせる。見事な流れ作業だ。牡蠣の大きさがまばらだったので、小さい牡蠣は無理やり1つに合体してみたら上手くまとまった。その作業を繰り返し、13個くらいのカキフライの種が完成。あとは揚げるだけで終わりだ。カキフライの作業はここまでが一苦労……!

揚げ物用の鍋に油を入れ火加減を180度に設定。パン粉をちょびっと油の中に入れて上がってきたら、カキフライたちを1つずつ油の中に投入!ジュワジュワと心地よい音が厨房にこだまする。揚げ物はすぐにひっくり返したい欲望にかられるが、あまり無闇に触ってはいけないことを伝説の揚げ物仙人が以前教えてくれた(私の祖母です)。ぼーっと見てるのもつまらないから音をつまみに缶ハイボールをぐびっと飲み込む。あゝ整います。もうこの場所はただの厨房ではなくマイナスイオン(揚げ物の油)と聖水(お酒)に満ちたヒーリングスポットよ!そんなことを考えながらカキフライをひっくり返すとかわいいキタキツネ色になった!一通り揚げ終え、千切りキャベツとミニトマトをお皿に盛り、カキフライの完成だ。見栄えは中々いい。
生牡蠣に垂らして食べても最高なボウモア12年
生牡蠣に垂らして食べても最高なボウモア12年 / 本人提供写真


さぁハイボールを作っていきましょう。グラスに氷を入れ、バースプーンでくるくる回してグラスを冷やす。余った水を流しに捨て、ボウモア12年を30ミリリットル入れる。軽くバースプーンで回して、冷やし炭酸水をゆっくり注ぎ氷を持ちあげるようにして混ぜ、ニュージーランド先住民マオリ族の伝統舞踊「ハカ」を披露し完成だ。

ボウモアハイボールをひと口飲む。……おいしすぎる…。古樽のような熟成感に潮の甘味。そして最後にスモーキーな余韻が鼻を抜けてすべてがエレガント。繊細で滑らかに飲めます。おいしいとはいえスモーキーな癖が特徴なので、その癖が苦手な人はもしかしたらお口に合わないかもしれません。パクチーと似ているかもしれない。好きな人はめっちゃ好きで、苦手な人は食べられない(私はパクチー苦手ですがパクチーの壁の向こう側を見てみたい)。

さぁボウモア12年ハイボールを堪能したあとは、苦労して作ったカキフライを食べよう。カキフライを取り皿にとり、タルタルソースをかけて口に運ぶ。いただきます。……外はサックサク、中はプリプリでおいしい!噛んでいくとカキフライの塩っけもでてきて最高。タルタルソースの濃厚でさっぱり洋風な味付けもカキフライに合っておいしい。すかさずボウモア12年のハイボールを流し込む。待っていました、これですこれ。

プハーーッ。カキフライの油っぽさを流し込んでくれ、潮の香りも感じて最高。お次に味変でソースをかけてみる。サクサクのパン粉にソースが染み込み芳ばしい香りが立ち上る。いただきます。ソースの濃厚な味が牡蠣を引き立てておいしい!うわぁこれはタルタルもいいけどソースも捨て難い。どっちがいいかなとひとり静かな部屋で考える。

タルタルソースは、濃厚な味付けでカキフライにも合うけどタルタルの主張も強くフュージョン的な感じだ。ソースは主役のカキフライにブースト的な相乗効果を与えてくれる。それぞれ飲むお酒とかタイミングとかによるかもしれないが、今日はソースな気分だ。ボウモア12年も少しだし系の味わいがあるし、ソースもそんな味わいがある。今日はソースで楽しもう。

牡蠣を初めて食べた人には感謝を申し上げたい。見た目は岩みたいな風貌で中を開けたらプリプリの身がある。初めて食べた人ははたしてお腹を壊したのだろうか、それともおいしさに歓喜したのだろうか。この世界にはまだ私たちの知らないおいしい食材があるかもしれない。オールブルーを求め、ありったけのぉ夢をぉかき集め、今日も私はハイボールを飲みます。ご自愛くださいませ。
揚げたてサクサクでジューシーなカキフライ
揚げたてサクサクでジューシーなカキフライ / 本人提供写真

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