主にInstagramで妊娠、出産、子育てに関するエッセイ漫画を描いている、 3歳の女の子、メメちゃんのママ、まろさん(@maromrt)。かわいいタッチで実体験を描いた漫画は、読者の癒やしであり、まろさんの悩みは多くの共感も得ていて、Instagramのフォロワーは3.9万人(2023年9月20日時点)を数える。
■娘が母乳しか飲まない…しかも授乳中は自分の奥歯に強烈な痛みが
「謎の痛みで救急外来に駆け込んだ話」は、産後5カ月のときにおそわれた、病名もわからない謎の痛みについて、発生から治療内容などを描いたもの。
「辛かったこと、不安だったこと、痛かったこと、いろんなことを思い出しながら描いています」とコメント欄に書いていた、まろさん。そこまでして描いたのは「なかなかない経験だったと感じたことと、この経験が自分の育児と切っても切り離せないものだったからです。もしかしたら同じような痛みや悩み、当時私が感じていたような不安を抱えているお母さんやお父さんがいるかもしれない、 そういう方々に読んでもらえたらうれしいな」という思いだったとか。
「謎の痛み」とは、ひどい歯痛。
話は、娘のメメちゃんが2カ月になったころから始まる。母乳は飲むが、ミルクを飲まなくなくなったのだ。
まろさんがあまり母乳が出ないタイプだったために、飲む量について悩んでいたところ、メメちゃんの3カ月検診で、栄養が足りていないことを指摘される。そのため、ミルクのメーカーを変えるなど、なんとかたくさん飲んでもらえるように努力をするが、なかなかうまくいかない。メメちゃんの体への影響や、周りにどのように思われているかなど心配が尽きない毎日。
だんだん痛みが強くなり、虫歯かと思って歯科に行くと、最初は「知覚過敏」という診断。しかし、痛みを感じる間隔は短くなり、寝ようとするとあごにも強い痛みが出るようになり、そのうちこめかみまで痛みが移動する。特に、母乳をあげるときの痛みは衝撃的で、気合を入れて母乳をあげる日々に。再度、歯科に行っても「歯ぎしり」と、納得できない診断。そこで、大きな病院へ検査することを決意する。
■痛みと共に、母としてもつらい思いしていることを表現
つらい思い出のなかでも、一番描くのがつらかったのが44話という。痛みを鎮めるために強い薬を飲むことになり、母乳をあげることを禁止されたからだ。
「断乳になる直前、最後の授乳のときに痛みに耐えられず母乳を飲んでいた娘を無理やり引き剥がしてしまい泣かせてしまったことは、今でもたまに思い出しては後悔しています。 最後だとわかっていたらもっと我慢できたかもしれない、笑ってお終いにできたかもしれない、などたくさん反省しました」
そして、ミルクを飲まないメメちゃんのことを思い、母乳マッサージに通い、少しずつ母乳の量を増やしてきただけに、“母乳”に対しての思いは特別。
「このときの私にとって、そのとき出ていた母乳は自分の努力の結晶のようなもので、 娘に母乳を飲ませるためにたくさんの時間を割いてやっと手に入れたものでした。そして娘が飲んでくれるならと、今まで授乳中に痛みが走っても何とか我慢してあげ続けてきました。それがたった1日で『絞って捨てる物』に変わってしまったことがとにかく悔しかったです」と、そのつらさは漫画からも伝わってきて、胸が苦しくなるほど。
それでも、読んでいて苦しいばかりでなく、明るい絵のタッチや表現に救われるところも。
「やはり明るい内容ではないですし、私の心理的描写がどうしても多くなってしまうので、読者の方がなるべく疲れてしまわないように、そこまで肝心ではない場面の絵や表現はライトに描いています(それでも暗い描写が多い気がしますが…)。 またそうした方がしっかり描いている場面とメリハリがつくような気がしています」と語る。
■激しい謎の痛みが、自分自身や子供への意識を変化させる
現在(9月20日時点)、55話までアップされている連載中の漫画だが、これからも衝撃的な出来事が起こるのだろうか。
「ある出来事がきっかけで自分なりの『痛みの原因』を見つけて、それから痛みはどうなったのか、そこから子供や自分自身に対する意識がどう変わっていったのかを描いていく予定です。70話までに収まればいいな…」という。同じ症例を抱えている人にとっては、とても参考になる内容になるはず。
さらに「お子さんが小さかったりお仕事が忙しかったりすると『具合が悪くても我慢して自分が頑張らねば!』と思わざるを得ない方がたくさんいるかと思いますので…。『とにかく病院に行く時間は何としてでも確保する』『診断に不安、違和感があったら大きい病院で診てもらう』『頼れる人が身近にいるなら頼る』のが解決への近道かなと思います」とアドバイスをくれた。
本作のほか、現在は「それでもママ友になれますか?」という作品も連載中。「どちらも明るい話とは言えない内容なので、今度は娘にフォーカスを当てた、気分が暗くならないような漫画を描きたいです」と、今後の作品も構想中。大きくなったメメちゃんのかわいらしさも漫画で楽しめそうだ。
取材・文=澤田佳代