
老いることで、介護が必要になってくることはよくあること。しかし、家族だけで介護のすべてを担うことは非常に負担が大きい。特に、介護をするために仕事を辞める“介護離職”をいう道をとってしまうと、その人自身の今後の生活だけではなく、社会全体にも大きな損失を生むと言われている。
こうした問題を解決するために2000年に創設された介護保険制度。家族の負担を軽減し、介護を社会全体で支えるために生まれた制度だ。サービスの内容は、認定調査を受けて判定される要支援・要介護のランクによって変わってくる。
アルツハイマー型認知症と診断されたきみ子さん。同居する孫・さとみさん(@satomi_qoljojo)がきみ子さんの生活をサポートしてきたが、徘徊などの問題行動も出てきてしまった。そして、さとみさんが社会人になったころ、きみ子さんは認定調査を受けることに。さとみさんが介護の日々をつづったコミックエッセイ「嫌いから可愛いになった私のおばあちゃん 〜認知症介護実録〜」では、認定調査を受けたときのことも描かれている。さとみさんに、当時の状況を聞いた。
■要介護認定は介護サービスの必要度を示すので、病気の重さと要介護度の高さは一致しないことも
――認定調査は申請してからどれくらいで実施されましたか?
通常申請後10日前後で面接調査が行われるようで、私たちのときもそれくらいだったと思います。
――認定調査についてきみ子さんにはどのようにお話をされましたか?
担当医に認定調査のことを事前にうまく伝えておいてもらえないか打診していたので、スムーズにいきました。
――認定調査ではさとみさんにもどういったことがあったのか聞き取りがありましたが、こうしたとき、きみ子さんは同席されていたのでしょうか?同席されていると、きみ子さんがさとみさんの説明を聞いて、怒ってしまいそうなイメージがあります。
同席しておりました。起きたことを話すと、おばあちゃんからツッコミが入るんですが、そんなときは調査員の方のフォローが入ったので、険悪な雰囲気になることはなかったです。例えば「薬を1週間分服薬して救急搬送されました」「それは大変でしたね。おばあさま、お体はいかがでしょうか?さぞ怖かったことでしょう」と。すると「大変でしたわ」とすんなり進むといった感じでした。一瞬不穏な空気が流れても「皆さんによくあることですよ」などのフォローを入れてもらえたことを覚えています。
――認定調査前に「要支援かも?」という予想がありました。当時、きみ子さんはひとり歩きの問題はありつつも、自分の身の回りのことをすることはできていたということでしょうか?
外で会う分には特に問題はなかったように思えます。話すスピードも遅くありませんし、歩けるし、走れるし、重たいものを運べるし。認知症の話をしたときに、「おばあちゃんは認知症ではない」と否定する人もいたんですが、その気持ちもわからなくはないなぁと思うくらいに元気でした。ただ、一緒に生活をしているとひとり歩き以外にも、火の消し忘れやもの盗られ妄想などの問題が見えていました。
要支援は日常生活の基本的な動作は自力でできるが、負担の大きい家事などには多少の支援は必要な状態。一方、要介護は基本的な動作が困難で、誰かに介護をしてもらわないと生活が難しい状態を指す。きみ子さんが認定された「要介護2」は、家事や買い物など日常の動作に加え、食事や排泄など身の回りのことにも部分的な介護が必要な状態という認定になる。予想外の結果にさとみさんも驚いたそうだが、第三者からの判断によって見えてくることもあるのかもしれない。介護する人・される人の双方が健康的に日常を送るためにも、介護サービスの利用は非常に重要。認定調査についても事前に知っておくのがよさそうだ。
取材・文=西連寺くらら