残暑も少しずつ落ち着いてきて、いよいよ秋本番を迎えようかという今日この頃。「ウォーカープラス」では、おでかけスポットや注目のイベントなど、秋の行楽シーズンをより楽しく過ごすための情報を数多く展開しているが、そんな秋のおでかけのお供におすすめしたいのが、今話題を集めている“ウォークゲーム”だ。
2023年8月31日にリリースされた「信長の野望 出陣」に加えて、9月14日には「モンスターハンター」シリーズ初のウォークゲーム「Monster Hunter Now」がリリースされるなど、ここ最近ビッグタイトルが立て続けにリリースされているウォークゲームシーン。そんなウォークゲームの魅力とはいったい何なのか。その歴史などさまざまな側面から深掘りしていく。
■そもそも“ウォークゲーム”って?
ウォークゲームとは、「スマートフォンやタブレットなどのスマートデバイスを持って移動しながらプレイする」スタイルのゲーム。位置情報を用いたGPSのシステムにより実際に歩いた距離や歩数などをカウントされるので、歩数に応じたアイテムをゲットできたり、移動した先で敵や仲間と出会ったりなど、いわゆる「家庭用ゲーム機」のタイトルではできない遊び方が人気となっている。
また、ゲーム内でユーザー同士が「フレンド」など友好関係になると、互いにアイテムのやりとりなどができるケースもあり、一人で黙々と打ち込むのとは異なる楽しみ方ができるように。ゲーム自体が外出する目的にもなっており、若者だけでなく出不精になっていた中高年にもプレイヤーが増えていることでも知られている。
■ウォークゲームの歴史を彩ってきた名作たち
そんなウォークゲームだが、実は約20年の歴史がある意外にも「古くて新しい」ジャンルと言える。ここではそんなウォークゲームのシーンを形作ってきたタイトルをいくつか紹介していこう。
■2000年代~:黎明期を盛り上げた国産タイトル
ウォークゲームは「位置情報ゲーム」とも呼ばれており、日本国内ではまだガラケーが主流だった時代からプレイされてきた。そのパイオニアとして知られるのは、2003年にリリースされた「コロニーな生活」だ。現在も「コロプラ」として多くのユーザーに親しまれているタイトルで、さまざまなリアルイベントも開催されるなど、その後のウォークゲームシーンに大きな影響を与えた。
2009年にリリースされた「全駅制覇!駅コレクション(駅コレ)」は、移動手段として必須の鉄道にフォーカス。全国の駅をスタンプラリーのように集め、全駅制覇を目指す内容が人気を博した。また、「乗り鉄」「撮り鉄」「駅鉄」など各ジャンルの鉄道ファンの高度な知識や情報を集約し、多くのユーザーが鉄道情報へ簡単にアクセスできるサービスとしても進化。ゲームとしての魅力だけではない可能性を示したタイトルと言えそうだ。
2010年にモバゲータウン、GREEなどで配信され話題となった「しろつく」は、戦国時代の「城主」となり城下町を運営、育成していく都市経営シミュレーションゲーム。GPS機能で移動距離に応じて収入や位置登録した場所に対応した手形、特産品などが得られる要素で、最盛期には累計300万人のユーザーがプレイするタイトルとなった。
■2010年代~:ゲームのあり方を一変させた「Ingress」と「Pokémon GO」
そうした日本国内のタイトルが人気を博すなか、2013年に登場したのが、当時アメリカ・Google社の社内ベンチャーだったNiantic社が開発した陣取りゲーム「Ingress」(日本語対応は2015年より)。プレイヤーは「Resistance」「Enlightened」という2つの陣営のどちらかにつき、地図上に表示される“ポータル”と呼ばれる拠点を奪い合うことで自軍の陣地を広げていく。
シンプルなゲーム性ながら、本作はGoogleの展開する「Google Map」と連動した仮想空間がゲームの舞台となっていたことが大きなポイント。地図上に置かれた“ポータル”へ実際に足を運ばなければ陣地の構築も破壊もできないという点は、それまでの「位置情報ゲーム」のあり方を一新させることとなった。
それまでのゲームにおける狭い世界ではなく、現実の世界と同じ広大なフィールドが舞台となったことで、「Ingress」には文字通り世界中のユーザーが参加。結果として今日の「ウォークゲーム」の大前提を形作ることとなった。2018年にはゲームの世界観を基にしたアニメが制作されるなど、メディアミックス展開もなされた。
そんな「Ingress」を生み出したNianticは、2015年にGoogleから独立し、翌2016年に「Pokémon GO」をリリースする。「Ingress」で培ったノウハウを活かし、日本が誇る人気タイトル「ポケットモンスター(ポケモン)」シリーズのキャラクターをマップ上へ登場させたこのタイトルは、あっという間に世界的なブームに発展。
日本では、まだ一般層へ広がっていなかった位置情報ゲームが広く知れ渡るきっかけとなり、スマートフォンでゲームを楽しんだことのなかったユーザーまでを巻き込む社会現象に。地域によって出現するモンスターが変わることから、特定のモンスターを求めて出現情報のある場所へ実際に訪れるなど、ゲームによって人々の行動を大きく変えていった。
そうしたモンスターをコレクションする楽しみに加えて、シリーズの魅力である対戦要素を盛り込んでいたこともポイントに。ポケモンを育て、ほかのプレイヤー(トレーナー)と戦ったり、バトル拠点である「ジム」を巡って相手チームと戦ったりと、やりこみ要素が多くのプレイヤーを引きつけた。
そのほか、「地図塗りRPG」としてドワンゴより配信された「テクテクテクテク(現:テクテクライフ)」や、人気パズルRPG「パズル&ドラゴンズ」のモンスターが登場する「パズドラバトル」、映画「ジュラシック・ワールド」をモチーフとする「Jurassic World アライブ!」といったタイトルも、現在稼働している。
■「ウォークゲーム」の課題と対策
これらのタイトルによってウォークゲームが人気となるなかで、「他人の敷地に入り込んでゲームをする」「公道など本来人が集まるようなところではない場所に人が殺到する」「歩きスマホしていたことで人や自転車などとぶつかる事故が起こる」といった点も指摘されるように。
これらの課題について、ゲーム会社は実際にどのような対策を講じているのか。今回は、8月31日にリリースされ、新着シミュレーションゲームでダウンロード数1位(APPLION調べ)となるなど話題の「信長の野望 出陣」のプロデューサー・菊地啓介氏に話を聞いた。
まず、プレイヤーが他人の敷地に入り込んでゲームをするといった点については、「ゲーム起動時に『許可なく立ち入ってはならない場所や建物には決して入らないでください。』という警告画面を表示したり、ゲーム内のお知らせや公式サイトで、全国のお城を訪問する際に気を付けていただきたい注意文を掲載したりしています」とコメント。
また、歩きスマホなどの“ながらプレイ”への対策としても、「乗り物の運転中や歩きながらのプレイ防止のため、一定以上のスピードで移動した場合に確認画面の提示や、移動中のリソースの収集や強者や拠点の登録といった主なプレイを自動で行ってくれる委任機能を実装しています」と明かした。
実際に画面を確認したり触ったりしなくとも、自動でしっかりとゲームを進めてくれるこれらの機能は、プレイヤーが増えていくなかで特に重要な要素となりそうだ。
■今話題のタイトルを紹介!
ここまで「ウォークゲーム」の成り立ちから進化の歴史、顕在化した課題やその解決策を紹介してきたが、スマートフォンならではの操作性の良さに加え、実際に「歩く」ことが目的化される「ウォークゲーム」は幅広い世代が親しめることもあり、各ゲーム会社が力を入れている。
特に近年は、人気シリーズをウォークゲーム化したタイトルが続々登場し、さらなる活況を呈している。最後に、リリースされたばかりの最新タイトルを含め、今注目を集めるタイトルを一挙に紹介していこう。
■「ドラゴンクエストウォーク」(2019年9月12日リリース)
日本が誇るRPGの金字塔「ドラゴンクエスト」のウォークゲーム。“ドラクエ”の世界の主人公となったプレイヤーは、フィールドを歩きながらさまざまなクエストを進めたり、モンスターとのバトルを通じて自身を強化したり、モンスターや仲間をパーティーに引き入れたりしながら冒険を進めていく。
先日リリースから4周年を迎えた本作だが、過去シリーズのエピソードなどを盛り込んだ多彩なイベントが展開され、往年のファンだけでなく幅広い世代に親しまれ続けている。また、「カジノ」のような歩かずに楽しめるコンテンツも拡充されるなど、プレイヤーの多様なニーズに応えているのも人気の秘けつと言えそうだ。
■「Pikmin Bloom」(2021年10月26日リリース)
任天堂の人気シリーズ「ピクミン」のウォークゲーム。プレイヤーはスマートフォンを持って歩きながら、小さくて不思議な生物・ピクミンを誕生させ、ゲーム内を花とピクミンでにぎわう世界にしていく。プランターに“ピクミンの苗”をセットし、一定の歩数を歩くと苗からピクミンが誕生。たくさん歩くほどピクミンが増えていき、さまざまな種類のピクミンと出会うことも。
また、ARカメラを使って撮影すると、実際の風景の中にピクミンがいるような写真を撮ることもできるため、ピクミンと一緒に散歩や旅行へ出かけたような気分を楽しめる。さらに、「Pikmin Bloom Tour」と題したリアルイベントも全国各地で展開。そこでしか手に入らないレアアイテムなどもゲットできる。
■「信長の野望 出陣」(2023年8月31日リリース)
コーエーテクモゲームスの人気歴史シュミレーション「信長の野望」シリーズのウォークゲーム。プレイヤーは現実世界とリンクした“戦国時代のマップ”を実際に歩くことで、各地に点在する拠点を攻略し領地を広げていき、最終的に全国統一することを目指す。拠点は市町村の○丁目単位で設置されており、攻め落とした領地の広さも重要な要素となってくる。
ゲームには、織田信長を筆頭に武田信玄、上杉謙信、毛利元就、今川義元ら、シリーズおなじみの武将たちが登場。彼らを「登用」(※他のゲームにおける「ガチャ」)によって自軍へ引き入れ、さまざまな方法で強化しながら戦へ挑んでいく。また、歴史上の戦いをイベントにした“列伝イベント”も随時開催。各イベントでは戦をめぐる物語も紹介され、ゲームを遊びながら歴史を学ぶこともできる。
■「Monster Hunter Now」(2023年9月14日リリース)
カプコンの人気アクションゲーム「モンスターハンター」シリーズのウォークゲーム。同シリーズではさまざまなモンスターを相手に狩りを行ってきたが、本作ではついに“現実世界”にモンスターたちが出現。プレイヤーは街を探索しながらさまざまな素材を採集し装備を整え、モンスターを狩猟していく。
過去作に触れたことのあるプレイヤーのなかには、操作や覚えることが多く難しいと感じる人もいたかもしれないが、本作ではタップ&フリックだけのシンプルな操作でモンスターとバトル。一人では歯が立たないモンスターでも、仲間や近くにいるハンターたちと力を合わせて立ち向かうことができるので、初心者でも安心だ。
強力タイトルが勢ぞろいで、まさに戦国時代の様相を呈しているウォークゲームシーン。この秋はそれぞれの好みやおでかけのスタイルに合わせて、ゲームを楽しんでみては?