
こんにちは。YouTubeチャンネル「聞いてわかる投資本要約チャンネル」を運営している、二児の父でサラリーマン投資家のタザキ(@tazaki_youtube)と申します。
学生時代に株の魅力を知って以来、投資本好きが高じて自分の学びをYouTubeで発信したところ、想像以上の反響を呼び、3年間でチャンネル登録者が10万人を超えました。これまでに読んだ投資・マネー系の本は300冊以上。
その経験から、ここでは特におすすめの書籍や、コスパの高い書籍を、経験値や投資スタイル別で紹介していきます。本日は、「マーケットのテクニカル分析 トレード手法と売買指標の完全総合ガイド」(著:ジョン・J・マーフィー/パンローリング)という本をご紹介します。テクニカル分析の「辞書」とでもいいましょうか。これ1冊でテクニカル分析の全貌を見渡すことができます。
チャートやローソク足の読み方といった基本的な概念から応用編まで、幅広い読者を想定している本です。
本書ではテクニカル分析に対してよくある「過去のデータを参照しても未来の動きとはまったく関係がない」というような否定意見にも言及し、それはファンダメンタルズ分析や天気予報も同様のため、テクニカル分析だけに言える批判ではないと指摘します。
向き不向きはありますが、テクニカル分析を駆使し売買している人がいる以上、知っておく必要はあると思います。
■市場の動きを反映する!テクニカル分析3つの大前提
テクニカル分析には3つの大前提があります。
1つ目は、チャートは市場の動きをすべて織り込んでいるということです。これはテクニカル分析において最も重要な前提であると言えます。需要と供給の変化が即座に反映されるため、ファンダメンタルズ情報含め、外部から得られる情報をすべて織り込んだ結果だと考えられるのです。
2つ目は、価格はトレンドを形成するという点です。トレンドは一度形成されたら、それを持続する可能性が高いということになります。ニュートンの運動の第一法則に例えているのも絶妙です。物体がその運動を続けるように、何らかの反対のサインが出ない限り、基本的にトレンドというものは継続するのです。
3つ目は、歴史は繰り返すということです。テクニカル分析とは、結局のところ人間の心理を分析することです。そして、人間という動物の心理は数十年、100年、200年経っても簡単には変わるものではありません。したがって人の心理を前提としているテクニカル分析においては、歴史は繰り返すという前提が重要にあります。
■多くのテクニカル分析の元となる、ダウ理論の6つの原則
テクニカル分析におけるダウ理論は、元祖的な基本原則です。テクニカル分析にはさまざまなタイプがありますが、その多くはこのダウ理論に由来します。
ダウ理論は、大きく分けて以下の6つの基本理念に分けられます。
1. 平均株価はすべての事象を織り込んでいる
2. 市場には3種類のトレンドがある(メジャー・インターミディエイト・マイナー)
3. メジャートレンドは3つの局面に分けられる
4. 2つの市場平均を確認する
5. 出来高でトレンドを確認する
6. トレンドは明確な反転シグナルが出るまで継続する
1は先ほどの大前提とほぼ同様の意味です。2、3は、トレンドが波のようなものであることを表しています。海に大きな潮の満ち引き、波、表面的な漣(さざなみ)があるように、株価トレンドにも大小さまざまな波が存在します。
4つ目は、複数の平均株価(当時は工業株と鉄道株)が同じシグナルを出さなければ、重要ではない、ということです。現在で言えば、日経平均株価や、S&P500等でしょうか。
5つ目の出来高は、上昇トレンドの場合には、価格が上昇したときに出来高も増え、停滞した時は出来高が減少します。株価の上昇と出来高の上昇が伴っていることが、本当の正しい上昇トレンドであると言えます。
6つ目のトレンドの見方に関して、先ほどの大前提の2でも見てきました。しかし、熟練のトレーダーでも反転シグナルを見分けるのは容易ではありません。その助けになるのが、支持線や抵抗線水準、トレンドライン、移動平均、オシレーターなどといったテクニカル手法です。
■株価はトレンドを形成する
まずはトレンドの基本概念において重要な支持線と抵抗線を確認します。
例えば、あるトレンドがあるときに、ここまで下がったら反発するであろうとみられている安値のポイントが支持線です。一方、下降トレンドの場合、上昇が一度、止まるところが抵抗線になります。
下降トレンドでは支持線と抵抗線が徐々に下がっていくことが特徴です。上昇トレンドの場合は逆で、支持線がだんだん上がっていき、抵抗線も上がっていくことが特徴です。この支持線と抵抗線の概念は重要な基礎知識となります。
そして、支持線と抵抗線には役割転換するポイントがあります。支持線や抵抗線の水準に達した時に、そのラインを突破すると、支持線と抵抗線の役割が逆転するのです。それまでの支持線が抵抗線に、それまでの抵抗線が支持線に変わるのです。そのメカニズムを市場参加者の心理にスポットを当てて解明してみましょう。
■支持線が機能する心理的要因を探る
支持線が機能する理由を、市場の4種類の参加者の心理から読み取ります。特定の支持線から上昇した時=点Aと再び元の支持線に戻ってきた時=点Bの心境の変化を探ります。
買い手(すでに買いポジションがある)、売り手(すでに売りポジションがある)、傍観者1(早く売ってしまった者)、傍観者2(何もしていない者)それぞれがどのような心理になるでしょうか。
買い手:点Aでは「もっと買っておけば」と考え、点Bでは買い増しをしたい
売り手:点Aでは判断が間違っていたと考え、点Bでは買い戻し、売りポジションを解消したい
傍観者1:点Aでは早く売ったのは間違いだったと考え、点Bでは再び買い戻したい
傍観者2:点Aで上昇に気付き、点Bのような押し目で買いたい
以上のように、支持線付近では、4グループ全ての市場参加者に「買いたい」と思わせる心理が働くのです。もちろんすべてのケースに当てはまる訳ではありませんが、納得感のある心理描写です。
■テクニカルの基本中の基本が“トレンドライン”
そして、支持線や抵抗線の他に重要なのが、トレンドラインです。
例えば、上昇トレンドがある時に、切り上がっていく安値の部分をつなげて描かれた上昇する直線が、上昇トレンドの場合のトレンドラインです。ただし、注意点として、1回、2回、3回とトレンドラインに触れて反発しているかどうかを確認することが、トレンドラインの有効性を確認するために重要だということです。
そして、このトレンドラインがブレイクされた場合、上昇トレンドだったものが横ばいになるか、もしくは下落になるサインとなるわけです。つまり、綺麗なトレンドラインが見られた時にもしブレイクされたら、良くても横ばいか、それ以下になる可能性があるということです。
本書にも述べられているのですが、テクニカル分析が学者などから根拠がないと言われる理由の一つに、同じチャートを見たとしても、強気か、弱気かといった解釈の仕方がアナリストによって全然違うということが挙げられます。
しかし、移動平均のトレンドシグナルに関しては、食い違うことが少ないと言われます。
■テクニカル分析の中でも万能な“移動平均”
移動平均は、あらゆるテクニカル分析手法の中でも最も万能で広く利用されているものの一つです。一言で言えば、ある期間のデータの平均値を割り出したものです。
最も広く使用され、本書でも重要視されるのが単純移動平均です。
短期の移動平均ほど、価格感応度が高いため早くシグナルが出る一方で、ダマシも発生してしまいます。一方、長期の移動平均だと、ダマシは発生しなくなりますが、シグナルの点灯が遅くなる、というトレードオフの関係にあります。そのため、2本の移動平均を使用する二重交差メソッドが基本です。
短期の移動平均が長期の移動平均を上回ったときに出る「買いシグナル(ゴールデンクロスとも言います)」、その逆の動きが「売りシグナル(デッドクロス)」です。
“移動平均”の強みは、相場に上昇または下落のトレンドが発生している期間に発揮されます。横ばいの期間はあまり役に立ちません。そのような状況でより優秀な成績を残すのが、オシレーターです。
■「買われ過ぎ」や「売られ過ぎ」を示す分析手法“オシレーター”
オシレーターは基本的なトレンド分析を補うものとして、買われすぎや、売られすぎといった短期の行きすぎを知らせてくれます。チャートの下部に表示されたバンドが、上限や下限に到達したときは、現在の値動きが行きすぎだと解釈できます。
また、中心線(ゼロライン)と交差する動きは、重要なシグナルです。
RSI(相対力指数)は、非常になじみ深いオシレーターの一つであり、0から100の値をとります。一般的には70以上は買われすぎ、30以下は売られすぎを表します。上昇相場では、80以上は買われすぎ水準、下落相場では20以下が売られすぎ水準とみなします。
より詳しく学びたい方は「ワイルダーのテクニカル分析入門―オシレーターの売買シグナルによるトレード実践法」(著:J・ウエルズ・ワイルダー・ジュニア/パンローリング)がおすすめです。
■まとめ
テクニカル分析は「予測(フォーキャスト)」をするためのものと思われがちですが、同書ではどれだけもっともらしい理由をつけても未来の予測はできないと認めています。それはファンダメンタルズ分析等も同様です。それよりも、現況の把握(ナウキャスト)の方が重要なのです。
またテクニカルは、一種の芸術的なものという捉え方もできるでしょう。複数の法則が当てはまる場合や、人によって見方が変わること、時間軸を変えることによって違う法則が当てはまってくるということもあり得ます。こういった点が、テクニカル分析の特徴と言えるでしょう。
非常に感覚的な部分もあり、杓子定規なルールだけでなく、幅広い分析に関する話題を網羅している一冊です。
本書は、基礎的な内容から順序立てて解説しており、初心者から上級者まで利用できると思います。情報量が非常に多いので、何度も読み返したくなるような一冊です。個別株に挑戦したいと思っている方は必読です。