福島中央テレビの情報番組「ゴジてれChu!」で、毎週火曜日に放送されている人気ミニコーナー「にゃん旅鉄道」。「ねこが働く駅」として知られる福島県の会津鉄道・芦ノ牧温泉駅を舞台に、働くねこたちの様子を紹介している。約1分の短いコーナーながら、なんと今年、劇場版「にゃん旅鉄道」として映画化され、現在も公開中だ。今回は福島中央テレビに「にゃん旅鉄道」制作の背景や、映画化のきっかけなどを聞いた。
■会津鉄道・芦ノ牧温泉駅の3匹のねこ兄妹たち。地域のPRにも貢献
『「ふにゃり。」と、癒しのひとときをお届けします。』をキャッチコピーに、芦ノ牧温泉駅のねこたちの日常を、優しい音楽とねこ目線のナレーションとともにお茶の間へ届けている「にゃん旅鉄道」。登場するのは、らぶ、ぴーち、さくらの3匹だ。
二代目名誉駅長のらぶは、元々は自由奔放な性格だが、初代名誉駅長のばすから引き継いだ看板を守ろうとする責任感の強い「ねこ駅長」であり、心優しい3兄妹の長男。10月に残念ながら天国へと旅立ったが、電車のお見送りや駅舎の見回り、ときには会津エリアの観光地にも出張するなど、地域を盛り上げる役目を担ってきた。
元施設長のぴーちは、少し臆病で引っ込み思案。日々の勤務はらぶ駅長に任せきりで少々さぼり気味だが、どこか憎めない次男ねこ。現在は病気療養のため施設長は退任したものの、たまに駅にも遊びに来ているそうだ。
末っ子の妹、さくらはアテンダント。業務では失敗ばかりで、まだまだ修行の身。後先考えずに行動するやんちゃなおてんば娘なんだとか。お兄ちゃんたちの代わりに駅舎の見回りや観光地への出張など、会津エリアを一緒に盛り上げている。
仕事をしたり、お昼寝したり、ご飯を食べたり。約1分の短い時間ながら、ねこたちを見ていると、ゆるやかでほっと一息つける時間を感じられる。「にゃん旅鉄道」制作のきっかけは何だったのだろうか。
「会津エリアの観光客が伸び悩むなか、全国でも珍しいねこ駅長『らぶ』の奮闘する姿を広く県内外に伝えることで、少しでも地域の活性化、観光PRに繋がれば、との思いがきっかけでした。会津鉄道と芦ノ牧温泉駅の全面的な協力をいただき、猫写真集『飛び猫』で知られるねこ写真家の五十嵐健太さんとのタイアップ、そして地方創生を目的とする県のサポート事業なども活用し、制作が決定しました」
■らぶ駅長の日常こそが癒やし...福島だけでなく全国から応援の声も
「にゃん旅鉄道」に登場するのは、らぶ駅長たち3匹だが、会津鉄道・芦ノ牧温泉駅とねこの歴史は、らぶ駅長の前任「ばす」が初代名誉駅長に就いた2008年より始まった。ねこ駅員たちは今に至るまで会津地域に貢献し続けているという。
「会津鉄道によると、初代ばす駅長の就任で、芦ノ牧温泉駅の利用客は前年の1.5倍に増えたといいます。その後、高齢になったばすの後継として、2014年に駅長見習いにらぶが採用されました。働くねこたちは会津エリアの観光を盛り上げるだけでなく、地元のみなさんの癒やしにもなっています」
「にゃん旅鉄道」は民放公式テレビポータル「TVer」でも配信中。「いつも番組を見て、ねこたちに癒やされています」「いつか直接会いに行きたい」などの声が福島県内のみならず、全国各地から届いているそうだ。最も反響のあった回を聞いてみると、「にゃん旅鉄道」らしいゆるい答えが返ってきた。
「TVerの視聴回数が一番多かったのは2021年7月20日放送の113話『事前の準備は大切だにゃ!』でした。らぶ駅長がご飯を食べて、駅舎を見回るといった、いつもの変わらない1日を描いた内容です。スタッフで理由を考えてみたのですが、恐らく特別な何かではなく、変わらないらぶ駅長の日常こそが尊いということなのでは...と解釈しています」
■ミニコーナーを飛び出し映画化!?会津の美しい四季と共に描かれる物語に
スタートから3年半、コロナ禍などで大きく社会が変化するなかでも、変わらず癒やしの時間を届けてきた「にゃん旅鉄道」。今年7月には番組の枠を飛び出して、劇場版「にゃん旅鉄道」が公開。ミニコーナーからは異例ともいえる映画化だが、実はスタート当初からの念願だったそう。
「映画化については、2019年のスタート時から『いつかは...』と考えていました。具体的に動き出したのは、去年の10月頃です。放送回は130回を超え、TVerでも100万回再生を突破し、撮りためた映像も四季を2周、100時間以上となったことなどから検討を始めました。ばす駅長を含めた愛らしい4匹のねこたちの物語に、会津の美しい四季折々の風景を織り交ぜることで、コロナ禍で厳しい状況が続いている会津エリアのPRの一助にもなれればとの思いもありました」
劇場版では、福島県会津地方の美しい四季と雄大な自然を背景に、3兄妹とばす駅長の絆を描く。実写とアニメーションを織り交ぜた表現で、ねこたちの日常を物語化した。また、4匹のねこたちの声を務めるのは、人気作品に多数出演する豪華声優陣。ねこの声を担当するということで、キャスティングでこだわったことはあったのだろうか。
「演じるのが架空ではなく、実在するねこだったので、本気でねこが好きな声優の方々を選びました。アフレコ当日には、らぶ駅長、芦ノ牧温泉駅の小林美智子駅長、広報の小林洋介さんが立ち合い、声優のみなさんの声がそれぞれのイメージに合っているかも確認していただきました。休憩時間になると、みんながらぶ駅長のもとに来て、撫でたり話しかけたりする様子が印象的でした」
映画は膨大な動画の中から局の社員たちが地道に、業務の合間を縫って編集を進めたそうだ。
「無事完成までたどり着けたのは、関わった全てのスタッフの4匹のねこへの愛と感謝、そして会津の風景と合わせて、観た人たちに感動と癒やしの時間をお届けしたいという熱い思いだったと思います」
福島県の映画館1館からスタートした劇場版「にゃん旅鉄道」。11月4日(金)からは全国22カ所のイオンシネマでも上映が決定している。最後に、視聴者やこれから映画を観る人などにメッセージをもらった。
「『にゃん旅鉄道』は、福島県・会津若松市に実在する『駅で働くねこたち』の物語です。ねこたちの愛くるしい姿にほっこりと癒やされて、自然体でマイペースな姿はくすっと笑えます。劇場版は人間の想像を超えるねこたちの絆に心揺さぶられる作品となっているので、ぜひ劇場でご覧ください。そして、映画や番組を観た後は、ねこたちに会いに芦ノ牧温泉駅や会津エリアに足を運んでほしいです」
福島県・会津地域と人々をつなぐ、芦ノ牧温泉駅の働くねこたち。ぜひ劇場へ会いにいってみてはいかがだろうか。
取材・文=松原明子
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