作品に魂を込めるクリエイター業。デスクに向かってペンを走らせる姿をイメージしがちだけれど、当然それ以外の仕事もあるもので……。アニメーターの「作画」だけじゃない側面をクローズアップした漫画がその一例を描いている。
月刊ニュータイプで『見原由真の五畳半アニメーター録』を連載中の漫画家・見原由真さん(@ace7kg)。見原さんの夫で、アニメーターとして活躍するタッペイさんを通したアニメ業界のこぼれ話や、クリエイター夫婦の日常をエッセイ漫画としてTwitterなどに発表しており、4月に公開された「アニメーターの夫は人たらし」では、世間のアニメーター像からは意外にも思える仕事の一面に触れている。
■「人たらし」も重要な能力!アニメーターの社交術
TVアニメ1話分でも、数百枚の原画と数千枚の動画という膨大な量の画で構成されているアニメ業界。複数のスタッフが分担して携わっているとは言え、それぞれのアニメーターが描く枚数もかなりの分量だ。そんな世界だから、アニメーターはひたすら作画だけに集中しているのかと思いきや、タッペイさんによれば、イメージされがちな「孤高の芸術家」タイプはむしろ少数派なのだとか。
タッペイさんは作画監督というポジションとして監督や演出家、各話の制作進行など人と接する場面が多いが、もともと「ガンガン人脈を広げていかないとアニメ業界では暮らしを立てていけない」と、人との接点や縁を意識してきたのだという。
普段はだらりとくつろいでいても、関係者からの電話がかかってくれば「人手が足りない時は力になりますよ!」「一段落したら釣り行きましょうよ!」と、見原さんいわく「スーパー人たらしモード」になるタッペイさん。コロナ禍前には恒例だった打ち上げパーティーでもあいさつ回りは欠かさないとのこと。
中でも、見原さんがもっともすごいと思っていると語るのは、タッペイさんの「人を大事にする」姿勢。ある時、タッペイさんに超がつく有名アニメ作品から参加のオファーがかかった。参加作品が名刺代わりになる世界で、キャリアに箔がつくまたとない機会だったが、タッペイさんはそれを断ってしまう。
その理由を「オレは作品と仕事してるんじゃなくて信頼してる制作(ひと)たちと仕事してるからね」と、付き合いの深い仕事先を優先したタッペイさん。そうした義理堅さもあり、途切れることなく仕事が舞い込んでくるのではないかと見原さんはつづっている。
そうしたスタイルに、Twitter上ではアニメーターをはじめとするクリエイターから共感が集まった同エピソード。クリエイター業はもちろん、人とかかわる仕事すべてでお手本になる姿勢と言えそうだ。
画像提供:見原由真『五畳半アニメーター録』連載中(@ace7kg)