おにぎりの具材で目や鼻をつけた“顔おにぎり”をはじめ、みそ汁に蕎麦を入れた“みそ汁蕎麦”や、わざわざ「揚げずにからあげ」を使って作った“揚げてしまったからあげ”など、87歳の「おばあ」が作るユニークな料理が大人気の「おばあめし」。
その魅力をさらに伝えようと、2021年からウォーカープラスで連載がスタート。今回は、鶏のそぼろを“大量に”使ったおにぎりのほか、記念日でもないのに登場した豪華な晩ごはんなどをご紹介。おばあの孫である大迫知信さんに10月のメニューを振り返ってもらった!
■冬本番を目前に、おばあもすっかり衣替え!
朝晩がひんやりするなど、冬の訪れを感じ始めた10月。冬の支度を着実に進めていくなかで、おばあのファッションも衣替え。サッパリした髪型に大変身!
「コロナ禍で外出を控えていたこともあって、髪の毛が伸びているなと気にはなっていたんです。感染状況が落ち着き、おばあもようやく美容室に行けました。見た目もさっぱりして表情も明るくなりましたよ」
食べ物がおいしくなる食欲の秋には、一体どのような料理が登場したのか。まずはおにぎりからご紹介!
■“キュウリといえば顔おにぎり”の時代に突入!
10月も伝家の宝刀である顔おにぎりが登場!ここ最近は、顔おにぎりにキュウリを使用することが主流に。今月登場した顔おにぎりは先月紹介したものと同じように見えるが、微妙に変化を加えているところがさすが職人気質のおばあ。
「先月紹介したものとよく見比べると、キュウリの切り方が微妙に違うんですね。あと、白菜の浅漬けで髪の毛もついています。似ているようで違うので、ある種、兄弟みたいなものですね」。先月が兄とするならば、今月に登場したのが弟。来月は三男坊の登場なるか⁉
そして秋の味覚として外せないのが「栗ごはんのおにぎり」。近所の人からおすそ分けしてもらった栗を、ごはんと一緒に醤油とダシで炊いたものをおにぎりに。
「毎回、晩ごはんの後におにぎりを作ってくれて受け取っていたのですが、昨晩は久しぶりに外食をしていたので、『おにぎりはなしかな』と思っていました。すると、おばあが『昼のおにぎり取りにおいでや』とうれしいことを言ってくれました。そこで取りに行ってみると、まさかこんな手の込んだおにぎりを作ってくれているなんて驚きました。しかも、秋の味覚ですからね。感謝です!」
大迫さんからのリクエストおにぎりとして登場したのが、「とろろ昆布巻きおにぎり」。「かなり前にも作ってくれた、見た目も味もインパクトのあるおにぎりです。Instagramのコメントで、富山の名物おにぎりだと知りました。リクエストするとおばあの返事こそなかったものの、ちゃんと作ってくれました」
「リクエストしたものの、見たときは一瞬驚きました。でも味はやっぱりうまかったですね。付け合わせのおかずも、いつものプチトマトだけではなくて赤パプリカという変化球もあってちょっと贅沢な気分になりました」
おばあの高ぶる気持ちから生まれたのが、「グリーンピースおにぎり」。その前日には新メニューの「餃子鍋」と鯛のアラの煮物まで作る気合の入りようで、その勢いのまま手の込んだおにぎりが登場したのだとか。
「おそらく、『食欲の秋やからおいしいものを作ってやろう』っていう、おばあのやる気の現れでしょうね。ちょうど僕が疲れ気味だったので、こういう料理が登場するとうれしいですね」
斬新さが魅力の「おばあめし」ならではだったのが、「鶏そぼろのおにぎり」。なんと、鶏そぼろの瓶詰めを丸々1本使ってしまったのかと思うほど、大量のそぼろが入っていたという。
「見た目は普通ですが、中にもびっしりと鶏そぼろが詰め込まれていました。一体どうやっておにぎりの形にまとめたんでしょうか。不思議でなりませんでした」。謎が深まるおばあの新作「鶏そぼろおにぎり」。次回はどんな具材を大量に使用するのか、目が離せない!
■魚の下処理は孫におまかせ!?
誕生日など何かの記念日には、それにふさわしい豪華な料理が並ぶおばあめし。とはいえ、10月はそれらしい特別な日はなかったにも関わらず、大迫さんが思わず「今日は正月か?」と声を漏らした日があった。
「おばあから『はよ来てくれ!』とすごい剣幕で電話があったので、急いでおばあの家に向かうと、目の前には立派な鯛が置かれていました。間髪入れずに、『さばいてくれ!』というおばあの号令のもと、まったく心得もない僕が調べながら魚の下処理をやってみました。鯛のうろこを取りながら、心の中で『今日は正月か?誰かが何かの偉業を成し遂げたのか?』と何度もつぶやいていました」
フライパンで手早く焼かれた鯛の尾頭付きのほか、ニンジンや刻みこんにゃくと鶏肉を煮込んだ煮物。そして、おなじみのサラダボウルが並んだ豪華な食卓。大迫さんは贅沢な食事を口いっぱいに頬張りながら、なぜこれほどまでに豪華な食事になったのか、最後までその理由はわからなかったという。
■おばあの孫の連携プレーで生まれたトマト鍋
これまで意表をつかれっぱなしだった大迫さんが、この日初めて攻撃に転じることに。おばあから「鍋料理の食材を買ってきてほしい」という指令を受けた大迫さんは、さまざまな具材をカゴに入れたあと、今まで手を出したことがない禁断のブツを買って帰った。
「鍋用のスープをどうしようかと悩んだのですが、ちょっとおばあをびっくりさせたい気持ちもあって『完熟トマト鍋』というスープの素を買って帰りました。さすがのおばあも『これ、どないして料理にするんや!』と、驚くんじゃないかなと思ったのですが…」
そして晩ごはんの時間になり、食卓に置かれた鍋のフタを取ってみると…。そこには、油揚げ、コンニャク、ニンジンといった和風の食材が煮込まれていた。
「そう来たか!と思いました。洋風のスープに、和風の食材を合わせてくるおばあには『ああ、もう勝てないんだ』と…」
おそるおそる料理を口に運んでみると、洋風と和風の味わいが意外にもマッチしていて、これまでにないおいしさに!しかもおばあの口元に注目してみると、トマトのダシの色がうっすらと。おばあもあまりのおいしさに、お鍋をたっぷり味わったようだ。
孫が放ったボールをおばあが見事にキャッチし、新たなメニューに昇華させた連携プレー。今後、大迫さんが買い出しに出る機会が増えることを考えると、このファインプレーな料理が次々と登場することは間違いないだろう。
11月は、おばあが得意とするちょい足しレシピのほか、丹波の黒豆を使ったなんとも贅沢なおにぎりが登場する。乞うご期待!
取材・文=橋本未来