婚活で出会った忘れられない人たちとのエピソードを、メモ用紙に手書きしてInstagramに投稿している猫さん。他にも、日常で感じたことを綴り発信し続けてきているが、特に婚活での悔しい出来事についての投稿が反響を集めている。今では、結婚して子育てをしている彼女が、なぜ婚活体験を書き続けるのか。投稿に込めた思いや、婚活を経た心境の変化について話を聞いた。
■悲しいことや嬉しいことを日記に。文字にすると頭の中が整理される
――手書きのエッセイをInstagramに投稿しはじめた、きっかけについてお聞かせください。
「ある時、Instagramで手書きの日記が投稿されているのを見て目から鱗が落ちたんです。おしゃれな景色やスイーツの写真を載せるイメージだったので、自分とは無縁の世界だと思っていたのですが、これなら私も投稿してみようかなと」
――字を書いたり、日記を書くことはずっと好きだったのでしょうか?
「幼い頃から日記や学校作文など字を書くことがとても好きでした。いつしか人に言えない悩み事や悲しいこと、嬉しいことなど何かあると思いの丈を紙に書いて発散するのが日常になり、30歳になったころから毎日日記を描くようになりました。特に、婚活で悔しいことがあると、ノートによく書いていましたね」
――婚活にまつわるリアルなエピソードが、特に反響が大きいですよね。婚活はいつごろから始められたのですか?
「婚活を始めたのは、病院の看護師をやめて会社員になった頃なので27歳ぐらい。32歳で主人と出会うまで5〜6年ほど続けていました」
――職場も変わって、心境の変化があったのでしょうか?
「どちらかというと年齢的なところでしょうか。若い頃は、若いというだけで合コンに声をかけてもらえたり、知り合いの繋がりで出会うことが多かったり好かれたりもあったので、どこか可能性が無限にあると思い込んでいたんですね。だけど、年を重ねるごとにそういう機会も減り、周りが結婚して幸せになっていくのを見ているとこのままではいけないなと。それから婚活サイトに登録してみたりと、自分から積極的に動いていくようになりました」
――実際に婚活を始めてみて、いかがでしたか?
「男性と出会う回数は増えるんですけど、一生を共にする人をどういう基準で選べばいいのか、選ばれるのかがだんだん分からなくなっていきました。最初は、いろんな人と出会えて楽しいと思っていたんですけど、そこから進展することがほとんどなく…。私は最終的に結婚したいのに、ただただ人と出会って疎遠になることが多くなったんですね。想像以上にスムーズにはいかず難しかったので、その中で思うことがたくさんありました」
――いろんな方と出会う中で、どういう人が自分に合っているのか徐々にわかっていく感じでしょうか?
「聞き上手じゃない人から好かれることが定番になっていたので、そういう人は嫌だなと分かっていきましたね。友人曰く、私は特に遭遇率が高すぎるみたいですが…。なので、徐々に話を聞いてくれる人を探すようになりました」
――エッセイでも、自慢話が多い人や偉そうな人が多いと書かれていますよね。
「世の中にはほんとに人の話を聞かないで、自分のことばかり話す人がいるんですよね。また『なんでも質問して。答えてあげるよ』と上から目線の人もいて…。人の仕事や家族、友人を簡単にけなす人は、さすがに受け入れられない。オシャレな人じゃないとダメという友人もいたりしますけど、私はよっぽど奇抜でなければ格好にこだわりもないので、とにかく性格や話し方を重要視していました」
――文字に書き起こすことで、自分自身の性格や求めている人物像が整理されるところもありますか?
「書くことで整理されるところは、とてもあります。字に書き起こすことで怒りや悲しみなど気持ちが和らいで落ち着いたり、文字で見返すと客観的に考えられたりするので。それが次第に自分の中でまとまってきて次に生かせることもあるので、『思っていた人と違うなぁ』というがっかりすることも減っていきましたね」
■周りに相談しにくい婚活。少しでも参考になれば
――中でも、特に反響の大きかったエピソードは?
「最近では、知人の紹介で出会った年下男子とのお話です。『私も昔はそうでした。思い出します!』だったり、『今では笑えるいい想い出』といった共感のメッセージをたくさんいただけて気持ちがとても楽になりましたね。他にも、私の投稿を見てくださって、婚活サイトに勇気を出して登録をしてみたところ、結婚をしたという報告をしてくださる方もいて。そういうメッセージをいただけるたびに、書いてよかったなと思います」
――きっと、経験したことや感じたことをありのままに綴られているからこそですね。
「私もそうでしたが、婚活ってなかかなか周りの友人に相談しにくいんですよね。話しても真剣に取り合ってもらえなかったり、思った答えを返してもらえなかったりする。それに、昔は恋愛の話を独身同士でしていたのに、だんだん友人がライバルみたいになって、抜け駆けされたり競争になるのでより話しづらい。なので私もひとり行動が増え、限られた数人しか相談もできず、婚活について書かれているブログを読んだりしていました。私の投稿もそういった周りに相談できない方にとって、少しでも参考にしていただけているのはとても嬉しいです」
――実際に、どれぐらいの方と婚活で出会われたのでしょう?
「先日数えてみたのですが、合コンや知人からの紹介、婚活サイトに社会人サークルに参加して出会った人も含めると、200人以上と出会ってきたと思います」
――すごいですね!いろんな人と出会えたからこそ、変われた部分もあったりしますか?
「もし理想とする人に出会えたとしても、今の自分では好きになってもらえないと思ったので、まずは自分自身を変えていくようになりましたね。自分自身が素敵な人でないと、理想の人とうまくいかないだろうと」
――理想の人を探しながら、自分自身も理想的な人にならねばと。
「まだまだ甘いし、しっかりしてなかったので。例えが極端なんですけど、『となりのトトロ』に出てくるお父さんだったり、『サザエさん』のマスオさんみたいな人が好きだったんです。じゃあ、私はさつきとメイのお母さんやサザエさんみたいな人でないといけないはずなのに、自分はその理想像とかけ離れているなと。なので、自分の人間性を高めていくことにも取り組んでいました」
――具体的に、どういうところを?
「当たり前のことではあるのですが、文句など悪い言葉を口にしないようにしたり。嫌なことを言ってる姿は誰が見ても美しくはないだろうなと思って、負の印象を無くすところから始めたりしましたね。結果的に、婚活以外のどんな場面でも発言を気をつけたり、内面を高めていくことを意識していました」
――猫さん自身も理想の自分に近づけてきたからこそ、200人以上の方と出会って、遂に旦那様と運命の出会いがあったのですね。
「夫に出会えなければ今、どうなっていたのかと思うことがありますね。メッセージから聞き上手で幻滅するところもひとつもない人だったので、本当に運命的に思えます。これまで出会った方達は、勉強というとおこがましいですが、夫と出会うために全て繋がっていたようにも思います」
――今後も婚活にまつわるエピソードを中心に更新予定ですか?
「どうしても街に出かけると、その場所での思い出が蘇るので、その度に思い出しては書くことで成仏させていくことはあると思います。まだまだ心に残っている話もあって、6割ぐらいしか書けていないので空っぽになるまで書きたいですね」
――婚活の思い出が書き切った後は?
「体験談はいつかなくなっていきますが、夫との思い出や子供の成長につれてタイムリーな出来事などをこれからは書いていけたらなと思っています。なにより、仕事中もいろいろ思うことがあったり、人間観察や感じたことを書き留める習慣が抜けないので、そういう気持ちは忘れずにいたいです。なにより投稿を見てくださる方も増えたので、読みやすくすることを大事にしながら、これからも書き続けたいなと思います。感じたことを書く、日記をつけることは唯一の趣味でもあるので」
取材・文=大西健斗