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武器屋が作った飛沫対策のアクリル板がおもしろい!遊び心あふれる物作りに込めた思い

  • 2021年9月16日
  • Walkerplus

まるでゲームで遊んでいるかのようなデザインの、ユニークな新型コロナ対策のアクリル版がSNSを中心に話題を集めた。手掛けたのは、プラスチック加工の技術を活かしてファンタジーな武器の数々を製造・販売している、兵庫県高砂市の匠工芸だ。いかにしてこのユニークなアクリル板が生まれたのか、そしてなぜ“武器屋”として遊び心あふれるアイテムを作り続けているのか、同社で代表を勤める折井匠さんに話を聞いた。

――ユニークな飛沫防止のアクリル板は、どういった経緯で誕生したのでしょうか?

「これまでプラスチック加工屋として、お店の看板やディスプレイケースのほか、『タクミアーマリー』というブランドで“ファンタジー武器屋”として剣を作ってきたのですが、2020年に新型コロナウイルスがより猛威を振るい始めたのを機に、アクリル版を作り始めました。これまでもパーティションを作っていましたが、工場の機械に埃が入らないようにするカバーや、作業員さんに油がかからないようにするためのものが中心で。それが昨年の4月頃、テレビで病院では感染の不安を抱えながらたくさんの医療従事者の方々が働いているニュースを目にしたんですね。それで、これまで作ってきたパーティションの技術を活かして、病院の受付に設置できるアクリル板を作れば、受付の方たちも安心して仕事ができるのではと思い、シンプルに透明なデザインのものをSNSにアップしたらすごい反響をいただいて。県外の病院からも電話をいただき、受付にも置きたいとたくさん注文いただいたのが始まりです」

――今でこそ、病院に限らず飲食店などでもアクリル板は設置されていますが、当時はまだ主流ではなかった?

「そういった用途でのアクリル板はまだ多くなかったですね。本当に、工場での危険防止カバーとしてずっと作っていましたから。ちょうど、本業の看板作りや作った武器を展示する機会も減っていたところだったので、たくさんアクリル板を作らせていただくことができました。その頃は、透明のビニールをぶら下げているところが多かったのですが、ビニールは拭いてもきれいに汚れが落ちなかったり、透明度が良くなくて相手の顔が見えにくかったりと課題があったので、透明度の高くてしっかりとした作りのアクリル板がとても喜ばれました。その流れで、おもしろい物作りをしたいという思いもあったので、その時の緊急事態宣言があけた頃に、漫画のひとコマのように見える『集中線パーティション』をTwitterにアップすると、これまた大きな反響をいただけて。続けて、魔法陣のデザイン、そしてRPGゲームの選択コマンドにヒントを得たデザインと3種類作ってみたところすごくおもしろがっていただけました」

――飛沫防止にもなる上、笑顔になれる素敵なデザインですよね。

「ゲーム好きなスタッフのアイデアなんです。SNSの反響もあり、飲食店やバーなどさまざまな方から、1週間で300枚ぐらい注文いただける好評となりました。小児科の病院の方からは、『受付などに設置したところ、病院で子供たちも病院で怖がらずに笑顔になってくれる』とメッセージをいただけてうれしかったですね。RPG版は、コマンドの部分を好きな文字に変えられるので、お店を経営されている方なんかは『現金、クレジットカード、Paypay、何でお支払いしますか?』など実用的なもので注文していただけたりと楽しみながら使っていただけています」

――このアクリル板のように、ゲームの要素やファンタジーなデザインのアイテムなど、“ファンタジー武器屋”として遊び心あふれる物作りを発信されていますが、これについてはどういったきっかけで始められたのですか?

「僕は高校を卒業後に、プラスチック加工屋で従業員として働いていたんですね。それが25歳の時に、イラストレーターなどのソフトを使って、プラスチックを自動で切断するNCルーターという機械が出てきたんです。これを使って作りたいなと思って勤めていた会社にお願いしたんですけど、すごく大きい機械な上、1000万円以上と高額だったのでダメだと言われて…。それでも欲しかったので、これは自分で購入するしかないと思い、30歳で借金をして購入し起業しました。これさえあれば、自分の好きなものを作れるだろうと」

――それだけ物作りが好きだったのですね。

「物心ついた頃から物作りが好きでした。全ては、当時社会現象になっていたガンダムのプラモデルがきっかけで、子供ながらに衝撃を受けて。物作りの楽しさを知り、小中高とそれからもずっとガンダムのプラモデルを作って遊んでいましたね。同時に、ファミコンが出た世代なので『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』の大ファンだったので、今の物作りの上で大事にしていることは当時のプラモデルやゲームから学んだ楽しさが原体験になっています」

――少年時代の原体験が、現在の武器屋に生きてきていると。

「とはいえ、起業してからすぐに作り始めたわけではないんです。プラスチックの剣は、起業して4年目から作り始めました。それまで会社から言われたものを作ってきて、会社外でも作ったりしていなかったので、いざNCルーターを手に入れても何をつくろうかと特に決まっていなくて。それに、借金の返済に追われてしまって、作りたいものを作る楽しさを忘れて、利益率のいい仕事や作業時間が短くて稼げるものばかり作っていたんです。そんなことを3年ほど続けたら、なんとかお金は稼げるようになったけど、自分の心はすさんで楽しく無くなり『なんで起業したんだっけか』と自分を見失って鬱に…。もっと作りたいものを自由に作る起業した当時に立ち返って、もちろんお金は稼ぎながらも楽しくてワクワクすることを大事にしながらじゃないと継続できないなと。それで自分が最もワクワクするものを考えた時、さっき話した子供の頃の物作りの楽しさを思い出して、あの頃に憧れた武器をハイクオリティで作ってみることに」

――武器を作るまでにも紆余曲折が。

「それで実際に作ってみたらすごく楽しくて、満足のいくかっこいい剣ができました。知り合いに見せたら『すごい!』ってびっくりしてくれたのがすごくうれしくて…『これだ!』と自分の中で答えが出たんです。その後も色々な剣を作っていくんですけど、『仕事じゃなくて趣味でしょ』とか『誰が買うんですか?』と言われたんですね。心は満たされるけど、たしかにお金には変わってなかった。どうにか作った剣を、買ってくれる人と出会いたいと思いながら展示会に出店を繰り返してみたものの、みんな驚いたり喜んではくれるけど、こだわりぬいたがゆえに販売価格が15万円とかだったのでなかなか買ってもらず。『1万円だったら買う』というお客さんの声が大きかったので、1万円で買える50センチの短剣を作ったら、一気に売れたんです」

――折井さんの作りたいものとニーズがマッチしたのですね!

「この短剣のおかげで、初めて展示会の出店代やホテル代、交通費を出しても黒字で帰ってこれるようになって、ようやく仕事になったんです。それまでは6年間は、全く売れずに赤字。経理の人にも『剣なんて作るべきじゃない』、『赤字が続くなら違うことをした方がいいと』と言われ続けていましたから、本当によかった。もし剣を作ることをやめてしまったら、またお金儲けだけになって心がすさんでしまうのがわかっていたので、諦めずに好きなことを続けてよかったなと。自分にとっても大きなターニングポイントになりました」

――好きなものを作ることが仕事になった。

「高額なものはなかなか売れないですけど、びっくりしてくれたり楽しんでもらえるし、自分自身が作っていてワクワクするので。比較的購入しやすい短剣や、1万円でもなかなか買えない中高生のために買ってもらいやすい価格のキーホルダーなど小さなグッズも作るようになりました。好きなものを作って、楽しんでもらえるようになって本当に幸せですね」

――好きなものを作っていく中で、特に大事にしている点はなんですか?

「自分がワクワクするものを作るというのがひとつ。そして、作ったもので誰かを笑顔にしたり、楽しんでもらえるものかどうかを大切にしています。例えば、お客さんにはコスプレイヤーさんが多いので、女性でもカッコいいポーズで写真を撮ってもらえるよう剣が重くなりすぎないようにプラスチックと発泡スチロールを組み合わせて作ることも。また、『やっぱりゲームの世界の方がカッコいい』とガッカリしてほしくないので、ファンタジーの世界観を出せるようにディテールにはとことんこだわってますね。なので人を傷つけるための武器ではなく、宝石のように美しいデザインとディテールの武器を目指してます。ちなみに、社員もゲームやアニメが好きなのでみんなでアイデアを出し合いながら作ったり。実際にレイヤーとしてモデル撮影をしてくれたり、みんなで楽しみながら作っています!」

――最後に、今後の展望についてお聞かせください。

「これまで作ってきたパーティションや剣のように、僕が好きなゲームやアニメの文化は、日本が世界に誇れる文化だと思うので、どんどん海外にも発信していきたいなと思っています。その一歩として、VRゴーグルなしでリアルな映像の巨大モンスターと剣で戦えるアトラクションを作りたいなとクラウドファンディングにも挑戦したり。いつかは、実際に自分自身がゲームの世界の主人公になって冒険できるような、テーマパークを作りたいなと思っています」

――大人から子供まで、間違いなくワクワクしますね!

「これは小学生からの夢で、作った剣を持って歩いて、戦って、さらにレベルアップして大きな剣をもらったり。宿屋も作って、一泊できたり。仲間とパーティを組んで遊べるような世界をいつか作りたい。これは僕が夢を叶えるということでもあるんですけど、僕みたいに好きなことがある人たちに、その思いを大事にしてほしいなという願いでもあります。僕があきらめなかったからこそできたことがたくさんあるので、大人になっても好きなことを好きでいてほしいし、目標だったり夢をあきらめないで続けてほしい。そう思ってもらえるように、これからも物作りを通してワクワクしたり、笑顔が生まれるものを作っていきたいなと思います」

取材・文=大西健斗

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