実際に起こった猟奇的殺人事件として歴史に残る「ローブとレオポルド事件」が題材になった、映画『ラストサムライ』のジョン・ローガンによる傑作戯曲『ネバー・ザ・シナー -魅かれ合う狂気-』が9月に東京(2日~12日)・大阪(18日・19日)で上演される。
この舞台に、新聞記者、ジェルメイン、ハルバート医師と3つの役柄で出演する前島亜美に、出演にあたっての意気込みを聞いた。
――まずは、本作への出演が決まったときの思いから聞かせてください。
【前島亜美】実際にあった事件を題材にした、海外で上演された作品で、こんなに重厚感のある、しかも君塚良一さんの演出ですので、出演が決まったときはすごくうれしかったですし、稽古が今から楽しみです。
――前島さんは、新聞記者、ジェルメイン、ハルバート医師と3つの役柄で出演されますが、ひとつの舞台で、これまで複数の役柄を演じた経験はありましたか?
【前島亜美】しっかりとした役柄ではなく、複数の役柄を演じたことはあったのですが、今回の舞台のように重要な役柄で3つを演じるというのは初めてになります。
――3つの役柄を同じ舞台で演じられるのが、どんな感じになるのか楽しみですね。
【前島亜美】今は台本を読み込んでいる段階でまだ稽古が始まってないので、これからだとは思います。まだどんな感じになっていくのかわからないですが、台本を読んだときに、「こういう風に役柄を作っていきたいです」というト書きが書いてありました。
「今回の舞台は出演者が多くはないので、全員が常に舞台上にいるような作りにしたい」となっていて、自分がお芝居をしていないシーンでも傍聴席に座って、事件を目撃しているというふうになるのかなって思っています。
この3つの役柄を演じる切り替えもそうなんですけど、ずっと物語に触れていられるというのが、とても演劇的でいいなあというふうに思っています。
君塚良一さんの演出ならではの「映画的にやってみたい」という心意気をすごくかっこいいなと思いましたので、より3つの役柄の切り替えは大変になってくるかもしれませんが、それぞれの役柄の視点というのを大切に演じていきたいなと思っています。
――3つの役柄、それぞれどう演じようと思っていますか?
【前島亜美】新聞記者と医師については、どちらの役もこれまで演じたことがないので、まずは職業そのものを勉強していくことかなと思っています。
取材に力を入れながら現場に立ち向かっていくという女性の新聞記者では、世の中を少し斜に見て、すれたところがあるという役柄なので、そこを意識したいと思っています。
医師に関しては、普通のお医者さんというわけではなくて、ローブ(辰巳雄大演じるリチャード・ローブ役)に対してカウンセリングしている精神科医の役ですので、普通のお医者さんとは雰囲気が違うだろうなと思っています。
さらに、ジェルメインは、ローブの恋人役なので、ローブとの関係性を深めていくような演じ方になっていきます。医師として見るローブと、恋人として見るローブはまた全然違うと思いますので、同じローブに絡む役柄ではありますが、演じ分けていくのが楽しみだなと思っています。
――お話を聞いていると、3つの役柄を演じ分ける前島さんが楽しみで仕方ありません。この舞台の最大の見どころを教えてください。
【前島亜美】事件を起こした様子を、ステージ上にいる役者も傍聴席で見ているわけですけど、観客席に座っているお客様も、傍聴席に座っているのと同じように、一緒になって傍聴するというのが、すごく親和性が高くて素敵だなと思います。
裁判のおもしろさというのは、いろんな証言や証拠が新たに出てくることで、ひとの気持ちが大きく動いていって、場の空気が変わっていくところだと思いますので、その空気の変化とかをリアルタイムでお客様に感じていただけるのが、いちばんの見どころだと思います。
――最後にメッセージをお願いします。
【前島亜美】私が3つの役柄を演じていると思われるのではなく、それぞれの世界観に溶け込んで、別人として演じているというふうに感じていただけるようにがんばります。今回、演者のなかで女性は私ひとりということで、いい味が出せるようにしたいです。『ネバー・ザ・シナー -魅かれ合う狂気-』を選んで観にきてくださった皆さんに、素敵な時間が届けられるようにがんばりたいなと思います!
撮影・取材・文=野木原晃一