2019年、女優デビュー作となる主演映画『町田くんの世界』で各映画賞の新人賞を受賞し、世間の注目を集めた関水渚。翌年には『カイジ ファイナルゲーム』、『コンフィデンスマンJP プリンセス編』に出演、2021年1月期には「アノニマス~警視庁“指殺人”対策室~」(テレビ東京)でヒロインに抜擢されるなど、飛ぶ鳥を落とす勢いの若手女優だ。
そんな関水が、7月7日(水)スタートの水ドラ25「八月は夜のバッティングセンターで。」(テレビ東京ほか・毎週水曜25時10分~)にて、満を持して連続ドラマ初主演を務める。
とあるバッティングセンターを舞台に、高校生・夏葉舞(関水)と謎の元プロ野球選手の伊藤智弘(仲村トオル)が、毎回バッティングセンターに現れる悩める女性たちを「野球論」で例えた独自の「人生論」で解決へと導いていく本作。
高校時代、野球部のマネージャーを務めていたという関水に、野球がテーマの本作で連続ドラマ初主演を飾る思いや、女優としての変化について語ってもらった。
■大きなプレッシャーだった初主演の撮影現場は毎日楽しい
――今作が連続ドラマ初主演になりますが、話を聞いた時の心境をお聞かせください。
【関水渚】このお仕事を始めさせていただいてから、お芝居で野球に携わることは難しいかなと思っていたので、うれしかったです。でも、主演ということで大きなプレッシャーはありました。
――クランクイン前はかなり緊張されたのでは?
【関水渚】クランクインの2、3日前は不安でしたが、前日にはもうやるしかないという気持ちでしたね。前の作品のクランクイン前にステーキを食べたらなぜか楽しくできたので、願掛けみたいなものもあり、とりあえずステーキを食べました(笑)。今後も大事な日の前には、ステーキを食べることになるかもしれないです(笑)。
――プレッシャーを乗り越えるために何かされたことはありますか?
【関水渚】自分が楽しんでやらないと、見てる人は絶対楽しくないと思うので、まずは楽しむようにしています。まだ緊張もありますが、それよりも「明日はどんな日になるんだろう」というワクワク感のほうが大きいですね。共演者の皆さん、監督やスタッフの皆さんはいい方達ばかり。つらいことは全然なくて、毎日楽しいです!
――ベテラン俳優の仲村トオルさんとのお芝居は、役者として勉強になることも多そうですね。
【関水渚】そうですね。仲村さんはすごく優しくて、演技でもいろいろなボールを投げてくださって。一つひとつがすごく丁寧で、心に響きます。撮影前にストレッチや運動をされていて、声もすごく通るんです。芝居への向き合い方を間近で拝見でき、勉強になります。
――台本を拝見すると、演じる舞は勝気な女の子のイメージですが、役作りとして意識されてることはありますか?
【関水渚】過去に何度か勝気な女の子を演じさせていただくことがあったので、演じ分けをどうしようと思いましたが、読み解いていくうちに勝気だからこの口調なのではなく、環境が影響しているんだなと感じました。
舞はきっと幼い頃から男の子と関わることが多く、そうした経験からあの口調になっているだけで、実はすごく女の子っぽい。だから仲村さん演じる伊藤ともうまく話せない。でも、そういう不器用な部分がかわいいなと思うので、それが伝わるように演じています。
■野球のレジェンドたちの言葉に心を動かされる
――バッティングセンターがドラマの舞台ですが、プライベートで行ったことはありましたか?
【関水渚】実はこのドラマの出演が決まってから、初めて行きました。何も勉強せずに行ったので、バッティングのフォームも分からず、最初は全然ボールが当たらなくて。小学生しかいない時速80キロの列に並んで練習しました。
バッティングセンターは大人が行く場所というイメージでしたが、事前に訪れたバッティングセンターには子供がたくさんいて、印象が変わりました。ゲーム機など、子供用のいろいろなものが置いてあって、夢のある場所だなと思いました。
――高校時代、野球部のマネージャーを務めていたそうですが、野球のプレイ経験はありましたか?
【関水渚】マネージャー時代は準備と片付けの時にボールを触っていたくらいなので、プレイヤーとしての野球は全然やったことがなくて。ルールは知っていますが、技術に関しては本当にゼロからのスタートでした。
監督が3人とも元高校球児だったので、時間を作ってバッティングや投球フォームなどを教えてくださいました。また、自分で動画を見たり、父にバッティングセンターでフォームを見てもらったり。最近は始球式の投球のために元阪神タイガースの的場寛一さんからご指導いただいて、だいぶ変わりました。でもまだボールの飛距離が伸びないので、ピッチャーマウンドからホームベースの18.44メートルは投げられるようにしたいです。
――第1話ゲストの岡島秀樹さんをはじめ、野球界のレジェンドの方がご出演されますが、共演してみていかがですか?
【関水渚】毎回、伊藤の妄想のシーンでプロ野球のレジェンドの方たちが出てきて、バッティングセンターに来た悩めるヒロインたちに前向きな言葉を投げますが、役とか関係なく、私自身もその言葉に心を動かされますね。皆さん、明るくてパワーがあるので、元気をもらえます。
――各話に登場する悩める女性役のゲストヒロインとして、木南晴夏さん、堀田茜さん、武田玲奈さん、深川麻衣さん、佐藤仁美さん、山下リオさん、板谷由夏さん、山﨑夢羽さんと、豪華な女優の皆さんが集結するのも見どころですよね。
【関水渚】そうですね。私は主演という立場ですが、皆さんに助けてもらっています。8人のヒロインにはそれぞれ悩みがありますが、何かしら自分の感じたことのある同じ悩みを抱えている人がいるはず。そこに共感しながら、楽しんでいただけたらと思います。
■ランニングでマインドが変わり、前向きに
――球場に野球を見に行ったことはありますか?
【関水渚】プロ野球は見に行ったことはありませんが、高校野球は何度も見に行ってました。横浜高校が好きな野球部の後輩に誘われて、一緒にマネージャーをしていた子と3人で見に行きましたが、本当にすごくて。福岡ソフトバンクホークスの増田珠選手が当時球児として試合に出ていましたが、彼のメンタルがとにかく強くて、同じ高校生とは思えなかったです。予告ホームランを打ったり、パフォーマンスとしてバッターボックスで大声を上げたり。真っすぐで熱い方なのかな。その姿がすごく素敵で感動して、私も頑張ろうと思いました。
――ドラマのタイトルにかけて、8月の夜に行きたい場所を教えてください。
【関水渚】やっぱり花火大会ですね。花火はすごく好きです。日本の伝統だと思うので、今年はみんなで楽しめたらいいなと思います。浴衣もほとんど着たことがなかったのですが、行く機会がある時はせっかくなので着たいです。
――以前、ボクシングにハマってるとお話しされていますが、最近、体型維持のために何かされていますか?
【関水渚】最近は運動がすごく楽しくて。前はボクシングにハマっていましたが、今はランニングにハマっています。私が好きな作家の村上春樹さんはよくランニングをされているみたいで、ランニングの本まで出されていて。それを読んでランニングを始めてからは、体はもちろん、マインドが変わり、前向きになりました。限界までやって筋肉痛になると、ほかの悩みごとがどうでもよくなります(笑)。
■「リッチマン、プアウーマン」のような恋愛ドラマに出演したい
――野球をきっかけにさまざまな女性たちの成長を描いた本作。関水さんはデビューして3年が経ちますが、女優として成長を感じる部分はありますか?
【関水渚】デビュー当時は、とにかくいっぱいいっぱいで。正直、つらさが勝っていましたが、最近はお芝居や現場を楽しめるようになってきました。
テレビや映画は楽しいもの。だから、自分自身が楽しんでやらないと、楽しんでいないことが絶対伝わってしまうと思うんです。なので、楽しめるように準備して、現場で上手くできなくてもなるべく前向きに処理して、ひとつのチームの一員として良いものが作れたらと思っています。
――経験を経て、余裕が出てきたということでしょうか?
【関水渚】レベルや技術で言ったら余裕は全くないのですが、現場というものに少し慣れてきたんだと思います。最初の頃は、毎回メンバーが変わり、新しい出会いがあることに難しさを感じていて。でも今は、このお仕事ならではのことだし、楽しいことだと捉えられるようになりました。
また、共演させていただく先輩たちが前向きになる言葉をくださる方ばかりで。大先輩たちの姿を見て、自分もより一層「頑張りたい」という気持ちがどんどん強くなっています。
――今後、チャレンジしてみたい作品はありますか?女優としての目標を教えてください。
【関水渚】今後も「楽しくお仕事をする」というのが一番ですね。あと、恋愛ものをやったことがないので、憧れもあり、挑戦したくて。私は「リッチマン、プアウーマン」(2012年・フジテレビ系)が大好きだったので、石原さとみさんが演じていた、社長と恋する女性のような役を演じてみたいです。石原さんは憧れの人なので、ドラマでいつかご一緒できたらうれしいです。
ヘアメイク=伏屋陽子(ESPER)
スタイリスト=津野真吾(impiger)
衣装協力=ADELLY、BRAND SELECT
撮影=冨永智子
取材・文=高山美穂