
■芸人の感性を生かした個性的なキャラクターとシュールな場面展開
ラーメンを食べてもらえないラーメン屋さんや動物と話せるのに無口な男など、個性的なキャラクターを描いた漫画が「こういうの好き」「ツボった」とじわじわと人気を集めている。独特の感性で多彩な登場人物を生み出しているのは、畠山達也さん(@hatatatsu1124)。漫画家として活動しながら、お笑い芸人としてもライブに出演しているという作者に、自身の漫画への思いを聞いた。
畠山さんが本格的に漫画を描くようになったのは、2015年。「もともとギャグ漫画やお笑いが好きで、小学3年生のころから漫画を描き始め、中学高校でも続けていたんですが、2015年にコンビを解散してすることがなくなった時に、お笑いのネタを漫画にしてネットに上げていたんです。それで、どうせなら賞に応募しようと思って。1作目から少年ジャンプで月例賞の最終候補に残って、担当編集がつきました。その後、3作目で赤塚賞の佳作を受賞しました」と順調な滑り出しだったという。
作風はギャグが中心。ネタは意外にも、日常生活で浮かぶことはほぼないという。「メモはとったりしていますが、テレビを見たりとか、普段の生活で浮かぶことはほぼないので、机に向かって考えています」と畠山さん。しゃべって動きや音楽があった方がいいと思うネタや漫画だと大作になるものは、芸人として舞台で使うようにしているそう。
現在も、月に数回、芸人仲間から誘われたらライブに出演している。「ネタがブラックだと言われるんですが、少年ジャンプ向けに漫画を描く時は、そういう面をなるべく出さないようにしています」。
また、コントを原作にした15ページの漫画作品も、現在、3作が作品配信サイト「note」にアップされている。「Twitterに掲載しているのは、15ページの作品にはできないだろうというこぼれネタのようなもの。今は、過去の作品をアップし直しながら、たまに新作を描いています」。
これまでで反響が大きかったのは、ラグビー部の顧問を描いた「熱血教師」。某学園ドラマのパロディ作品で、約4万のいいね!を獲得した。
反響があって驚いたのは、「僕はラーメン屋さん」という2ページ漫画だという。店内にカジノへの入口があるがゆえ、ラーメンを食べずにカジノへ向かうお客さんたちを見つめる店主がなんとも切ないがクスリと笑える作品だ。
「去年か一昨年にアップした時は反響がなかったんですが、今年改めて載せたら人気が出ました。ほかの作品も、これはいけると思ったら全然反響がなかったりの繰り返しです」
漫画の原作やギャグ漫画以外も手がける畠山さん。ジャンプ+で原作を担当した漫画「未読無視してんじゃねぇよ」は、編集から原作物の話を聞いた時に、ギャグなら自分でも描くのでストーリー物を作ってみようと思って生まれた作品だという。
うれしいのは、漫画家や芸人といった同業者に褒められること。「今はあまり直接会う機会がないけれど、SNS上でおもろいと言ってくれたり、Instagramでいいねをしてくれたり。芸人は笑いに対して嘘をつかないので、本当におもしろいと思ってくれたのかなと感じます」。
■魅力のある主人公やシリーズ物を描いてみたい
これから描いてみたいものは、主人公を立てた漫画だそう。「1人の主人公と周りのキャラクターたちで回せる話を描きたいです。少年漫画の主人公って明るいけど、僕自身がキラキラしたかんじじゃないので、自分にしか描けないものを作りたいです。いい奴じゃないけど、なんか読んでいられるなっていう主人公で。今まで10数年間キャラクターを作ってこなかったんですが、これからはキャラクターを作るのを意識していきたいと思います。僕は浮かぶものが陰湿なので、それをなんとかポップにしたいと頑張っています。漫画じゃなくてコントだねとよく言われるのと、昔は主人公がむかつくってよく言われたんですが、今はそこも気を付けています(笑) 」。
また、「前科があるかもしれない彼女と、怖くて何も聞けない彼氏の『ボクはまだキミのこと何も知らない』は、話数をつけて続き物として描いているので完結させたいですね。ほかにも何度か登場しているキャラクターはいるんですが、シリーズを作るのを意識したことがないのでシリーズ物もいいかなと思っています」と話してくれた。
取材・文=上田芽依(エフィール)