島根県には良質な天然温泉が広く点在しているのをご存知だろうか?「日本三大美肌の湯」「日本三美人の湯」と称される国内屈指の名湯から、日本で唯一世界遺産登録地区の中にある温泉や山奥にある超極小湯治の湯まで、驚くほどバラエティ豊か。そんな隠れた温泉大国・島根で見つけたおすすめの温泉を5つ紹介しよう。
■パワーストーンと日本最古の美肌の湯を満喫。玉造温泉「玉造グランドホテル長生閣」
島根県松江市にある玉造(たまつくり)温泉は、日本最古の湯のひとつ。約1300年前からすでに名湯といわれ、いにしえから現在まで渾々と湧き続いている温泉だ。出雲国風土記では「一度入浴すれば肌が若返り、二度入浴すればどんな病も治癒してしまう神の湯」との記述も残っている。昨今の研究で、化粧水に使われている潤い成分が豊富であると証明され、「美肌の湯」としての効果も期待できる。
「玉造グランドホテル長生閣」は、玉造温泉宿の中でも特に歴史あるホテル。今から約200年前、創業当時から豆腐屋と旅館業を兼務しながら、玉造温泉を守る湯守として“神の湯”を守り続けてきた。
玉造温泉のある玉湯町は、全国で唯一「青」「赤」「白」3色すべての「めのう」が採掘できる貴重な産地。翡翠(ひすい)と並ぶ国産石の「めのう」は、微細な石英の結晶が集まってできた石で、結び付きを強めるために有益な石と言われている。「長生閣」では、パワーストーンのめのうを3色、浴槽に敷き詰めた大浴場が人気で、県内県外からも多くの観光客に喜ばれている。それぞれのめのうには、情熱の「赤」、健康長寿の「青」、家内安全の「白」と効果が。そこに加え、「潤い補給」「整ったお肌のキメ」「美しい肌色」と、美肌に必要な3つの効果が期待できる湯となれば、人が集まらないはずがない。湯ざわりはさらっとしているが、入浴後の肌はしっとりと冬の乾燥も潤してくれる。休息を取りながら何度も浸かりたい。
湯上りには素敵な客室でリラックスタイム。ホテル中央には四季折々の表情を見せる立派な日本庭園があり、その庭園を見渡すことができる客室もある。最近リニューアルされたモダンな客室は、女性客にも人気が高い。
お土産には「美肌温泉」を持ち帰ろう。「長生閣」から徒歩1分のところにある「湯薬師広場たらい湯」では、源泉から湧き出る美肌の湯を自由に汲んで持ち帰ることができるのだ。もちろん、無料!容器がなくても、空のスプレーボトルがたらい湯の木箱に1本200円で販売されているので、自宅に帰ってからも美肌キープを楽しもう。
<住所:島根県松江市玉湯町玉造331/電話:0852-62-0711/時間:チェックイン15:00、チェックアウト10:00/休み:あり(要問い合わせ)/駐車場:100台(無料)/交通アクセス:車=出雲縁結び空港より約25分、電車=JR玉造温泉駅より徒歩30分(無料送迎バスあり)>
■最高評価の泉質!世界遺産の中にある温泉津温泉「薬師湯」
島根の世界遺産「石見銀山」から車で約30分。 戦国~江戸時代に銀を運び出す街道の一角だった温泉津(ゆのつ)の町も世界遺産登録地区の一部で、昔ながらの風情を残す町並みは、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された唯一の温泉街である。
温泉津温泉入口から町並みを進むと、レトロな半円形の展望テラスが目を引く。それこそが、世界遺産の中で湯に浸かることができる「薬師湯」だ。隣には大正時代の木造の洋館が軒を連ねている。
歴史ある建物をそのままに現在も現役の「薬師湯」は、ガラスに男湯・女湯と書かれた古い木の扉があり、受付は映画館のチケット売り場のような趣だ。その昔、「藤乃湯」という地元に親しまれる共同浴場だったそう。
脱衣所を抜け扉を開くと、湯気が立ち込める中に楕円の浴槽がひとつ。周りにはあふれ出した湯の花が幾重にも幾重にも重なって、まるで鍾乳洞のよう。豊富なミネラルを含んだ泉質は、日本温泉協会の審査で最高評価を受けたほど。お湯は、施設脇の地下2〜3メートルの源泉から、直接浴槽に注ぎ込まれる。温泉の色は、日ごとに透明や樹褐色、エメラルドグリーンとおもしろいほどに変化するという。湧き上がる炭酸の量によっても変わる、まさに”生きた温泉”だ。湯温は46度と少々熱めだが、そこに身を預けていると、指先、足先、皮膚に感じるピリピリッとした刺激。体の心底からじわじわと温まり、温泉の効能が体内に染み渡ってくるような感覚は、ヤミツキになりそうだ。医学的に研究された結果の、薬師湯独自の入浴方法を聞いてから温泉を楽しむのがおすすめとのこと。
気持ちよさに長湯してしまいそうだが、想像以上に汗をかくので、前後にしっかり水分と休息をとるのがポイント。休憩には建物2階のスペースや3階のガーデンテラスを利用してのんびりリラックスすれば、温泉効果もさらにアップ。
温泉で外から体を潤した後は、「薬師湯」隣の「震湯カフェ内蔵丞(しんゆかふぇくらのじょう)」で、今度は体の中から栄養補給。
約100年前の更衣室であった場所を利用したこちらのカフェのおすすめは、「温泉津の奉行飯」(1300円)。薬師湯の経営者でもある内藤家に代々伝承されたメニューで、ご飯の上にほぐした鶏、錦糸卵、シイタケ、温泉津の海苔にダシをかけていただく。添えられた野菜は温泉水を使って蒸していて、源泉に含まれる豊富なミネラルのせいか、何も付けなくても十分旨味があり、奉行飯の優しい味わいによく合う。
食後には「温泉カプチーノ」(600円)を。細かくなめらかなフォームミルクに温泉のマークがとってもキュート。上からグラニュー糖をかけると、ジャリジャリとした食感を楽しみながらデザート感覚で味わえると、オーナーのマダムが教えてくれた。
温泉津に現存する温泉施設としては最古の「内蔵丞」は、建築学的にも貴重な建物だそう。大正ロマンあふれる「薬師湯」と「内蔵丞」で、タイムスリップしたような感覚に浸れる温泉津温泉の旅。心身共に緩やかな時間を過ごしてみては?
<■温泉津温泉「薬師湯」/住所:島根県大田市温泉津町温泉津7−1/電話:0855-65-4894/時間:月~金曜9:00〜21:00、土・日曜・祝日8:00〜21:00/休み:無休/料金:大人500円、1歳~小学生200円、貸切湯(薬師湯)大人800円、1歳~小学生300円、貸切湯(別館)大人1200円、1歳~小学生500円/駐車場:30台(無料)/交通アクセス:車=出雲縁結び空港より約1時間30分、電車=JR温泉津駅より徒歩15分、またはJR温泉津駅より大田市生活バスで約7分、「薬師湯前」下車>
<■震湯カフェ内蔵丞/電話:0855-65-4126/時間:11:00~17:00(LO16:30)/休み:木曜、年末年始※要問合せ>
■広さ日本一の“混浴露天風呂”がスゴすぎる!「長楽園」
玉造温泉街にある「湯之助の宿 長楽園」は、昭和天皇をはじめ数々の皇族も宿泊された由緒ある温泉旅館。先述のとおり玉造温泉は“美肌の湯”として有名だが、「長楽園」が注目されている理由はもうひとつ他にある。露天風呂「龍宮の湯」が実は日本一の広さを誇る混浴風呂だというのだ!一般の25メートルプールよりも大きい120坪の広さがあり、混浴を楽しみに来られる夫婦やカップルも多く、その満足度は高い。
「長楽園」には約150年の歴史がある。江戸時代に松江藩より任命された温泉の管理者「湯之助」の末裔(まつえい)として、玉造の温泉を守ってきた。この広大な混浴露天風呂を、“沸かさず・薄めず”100%自家源泉かけ流しで楽しめるのはそのおかげ。
湧き出る温泉は“美肌の湯”ならではの優しくまろやかな肌あたりで、お肌もしっとり。「混浴は恥ずかしい」と思う人も大丈夫。男女ぞれぞれ湯着が用意されているので安心だ。男女入れ替え制ではなく、いつでも家族全員で、彼氏や彼女と一緒に、他では体験できない開放的な混浴を楽しめる。
温泉は宿泊者限定なので、日中はゆったりと、夜は優しく灯る光でまた雰囲気の違う大人なムードに。メインは露天風呂だが、女性専用の「水晶の湯」、男女交代制の「恵泉」「華泉」、さらに、貸切の家族風呂(要予約)など内湯も豊富。1泊の滞在で3度、4度と入浴する人も多いとか。「長楽園」では、“温泉三昧”が一番贅沢な過ごし方だ。
<住所:島根県松江市玉湯町玉造323/フリーダイヤル:0120-62-0171(受付時間7:30~21:00)/時間:チェックイン15:00、チェックアウト10:00/休み:無休/料金:大人1名18700円〜(1泊2食付)/駐車場:40台(無料)/交通アクセス:車=出雲縁結び空港より約25分、電車=JR玉造温泉駅より徒歩30分(無料送迎シャトルバスあり)>
■まさに天然ジャクジー!山奥にある極小の秘湯「千原温泉」
島根県中央部、三瓶山の南側にひっそりと湧く秘湯の湯治場「千原(ちはら)温泉」。古くから切り傷や火傷、慢性の皮膚病にとてもよく効く温泉として知られ、全国からこの秘湯を目指してやってくる人も多い。
数年前までは完全な治療のための湯治場として「健康な人の入浴はお断り」とされていたが、現在は、さまざまな理由で肌トラブルが増えており、温泉が与えてくれる効果を伝えようと一般にも開放されるようになった。
「千原温泉」は江ノ川の支流、千原川沿いにポツンとある。辺りは自然あふれるのんびりとした空気が流れていて、田舎のおばあちゃんちに来たような懐かしさが漂う。民家の玄関のような入口を入り、着替えてきしむ階段を降りると、そこには4人入るのがやっとと思える小さな浴槽が。建物も風呂も秘湯度満点だが、手入れが行き届いているため清潔感がある。男湯と女湯は、真ん中に1枚の板で仕切られているだけだ。
34度とぬるめの湯はほんのり鉄サビの香りがする。黄土色に濁り、浴槽の底はまったく見えない。”足元湧出源泉”と呼ばれ、足元からプクプクと出てくる炭酸ガスが身体をゆっくり包み込んでくれる。その泡の大きさや量は「他の温泉と比較しても勝る」と温泉通をも唸らせるほど。効果を感じて定期的に湯治に通う人や、温泉の持ち帰りをする人もいる。ペットボトルを持参すれば、1リットル100円で分けてもらえるので、天然の化粧水として持ち帰りしても。源泉をそのまま薪でわかした五右衛門風呂もあり、冬の訪問でも心配なし。
30分、1時間と浸かっていると、体に活力がわいてくるのを感じる不思議な湯「千原温泉」。利便性のよい場所ではないが、訪れる価値大の秘湯といって間違いなし。細い山道の連続で、別れ道のポイントを間違うと迷ってしまう場合もあるので、丁寧な解説のある公式サイトを事前にチェックしてから訪れよう。
<住所:島根県邑智郡美郷町千原1070/電話:0855-76-0334/時間:4~10月8:00~18:00(最終受付17:00)、11~3月8:00~17:00(最終受付16:00)※五右衛門風呂(男女共有)は10~5月まで/休み:木曜、年末年始/料金:大人500円、小学生以下300円/駐車場:15台(無料)/交通アクセス:車=出雲縁結び空港より約1時間30分、電車=JR山陰本線大田市駅よりタクシーで約60分>
■露天風呂が人気の日本三大美人の湯。湯の川温泉「四季荘」
出雲縁結び空港から車で約10分に位置する湯の川温泉は、群馬県の「湯川中温泉」、和歌山県の「龍神温泉」と並んで「日本三美人の湯」といわれる名湯だ。出雲神話で大国主命(おおくにぬしのみこと)に恋をした因幡の国(現在の鳥取県)の八上姫(やかみひめ)が、想い人を追う道中で立ち寄り、旅の疲れを癒して一層美しくなったのが湯の川温泉だと伝えられている。
今回紹介する「四季荘」は、湯の川温泉の湯元。温泉旅館だが日帰り入浴が可能で、内湯と露天風呂が男女それぞれ一つあり、露天風呂からは三方山に囲まれた自然豊かな景色が気持ちいい。温泉は、低張性弱アルカリ性温泉で保湿によい成分を含んでいる。美人湯といわれる効果は、湯上りの肌で実感。透明でさらっとしていて、化粧水なしでもしっとりと潤うのだ。
ベストシーズンは、暖かく明るい春の季節。周囲を囲むように見事な桜が咲くので、露天風呂や併設のレストランから花見を楽しめる。美人湯に浸かりながら美しい桜を眺める…そんな花見風呂は最高のご褒美になるだろう。
またさまざまな温泉イベントを実施していて、特に人気は、親子3世代に楽しく過ごしもらいたいと毎週日曜に実施されている「家族DAY」。子供の入浴料金が100円になる驚きのイベントだ。他にも「四季荘」では、災害トラブルなどに見舞われた際、住人に温泉を無料開放するなど地域に優しい温泉として地元民から愛されている。
2021年の春には新しくサウナも新設される「四季荘」。空港にも近いので搭乗前の空き時間に立ち寄るなど、旅の中で賢く利用して美を磨こう。
<住所:島根県出雲市斐川町学頭1369/電話:0853-72-6525/時間:10:00~21:00/休み:不定休/料金:日帰り入浴 一般(高校生以上)600円、小・中学生400円、3歳~未就学児200円、シニア(60歳以上)400円/駐車場:70台(無料)/交通アクセス:車=出雲縁結び空港より約10分、電車=JR荘原駅より徒歩約20分、またはタクシーで約3分>
取材・文・撮影=高橋裕美子、水島彩恵
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