2017年に放送された人気連続ドラマ『奥様は、取り扱い注意』が、視聴者からの多くの要望を受けて映画化を実現。ドラマに続き“元特殊工作員の妻”と“公安エリートの夫”という最強夫婦を綾瀬はるかと西島秀俊が演じ、劇場版ならではのスケールアップした物語が展開する。本作でスタントなしのハードなアクションに挑んだ綾瀬はるかが、撮影秘話やアクションの魅力などを語ってくれた。
■「自分でやります!」と宣言して挑んだアクションシーン
――まずは、映画化が決まったときの心境からお聞かせいただけますか。
【綾瀬はるか】ドラマの最終話が「え!この終わり方?」というシーンで幕を閉じたので、もし続編が可能ならば絶対にやりたいという想いがありました。なので映画化が決まったと聞いたときはものすごくうれしかったです。
――ドラマからスケールアップした本作ではハードなアクションシーンにも挑戦されていましたが、どのような準備をされましたか?
【綾瀬はるか】基礎トレーニングと体幹トレーニングで少しずつ鍛えていき、だんだん体が慣れてきたところでアクションシーンの手を覚えて、ひたすら練習を繰り返すという日々でした。
――ほぼスタントなしでアクションシーンに挑まれたそうですね。
【綾瀬はるか】ドラマのときは「全部自分でやりたいです」と言ってやっていたのですが、2年も経って(本作の撮影は2019年に行われた)年齢も重ねたので、今回はスタントの方にお願いするシーンもあるだろうなと思っていたんです。ところが、いざやり始めるとだんだんスイッチが入ってしまって、気付けば「それ、自分でやります!」と言ってました(笑)。結果的にほぼスタントなしでアクションシーンを撮っていましたね。
――アクションシーンの撮影で辛かったことや苦労したことを教えていただけますか。
【綾瀬はるか】やはり男性と女性の力の差や体格の差をひしひしと感じました。真剣にやり合ったらやっぱり勝てないんだということをリアルに実感したというか。私の演じる菜美がロシア特殊部隊員の大男と死闘を繰り広げるシーンがあるのですが、撮影後は足が棒になるし全身が痛くなって本当に大変だったのを覚えています(苦笑)。
――大男を演じた役者さんは過去に軍隊にいた方だったと聞きました。
【綾瀬はるか】そうなんです!彼は撮影中にヒートアップしてくると力がだんだん強くなってきて、お芝居なのに「痛いっ!」と感じることがあったんですね(笑)。なので「もうちょっと力を抜いてやっていただけますか」とお願いして。それでもリアリティは出したかったので、お互いに調整しながら挑んでいました。役者同士もそうですが、スタッフさんとの息がぴったりと合ってカッコいい画が撮れたときはものすごくテンションが上がるんです。完成したものを観て「頑張ってよかった!」と思いました。
■夫を演じた西島秀俊は「安心感をくれる素敵なお兄ちゃん」
――本作の冒頭は、菜美が記憶喪失になっていて、久実という名前で新しい生活をしているところから始まります。久実を演じる際にはどんなところを大事にされたのでしょうか?
【綾瀬はるか】久実は自分が何者であるかわからない状態で、目の前にいる人を信じて、日々のささやかな喜びを見つけながら生きているのですが、常に漠然とした不安はずっと抱えているのではないか、そんな風に思いました。いつも海の中を漂っているような感覚というか、モヤモヤして苦しかったんじゃないかなって。そんな久実の気持ちを想像したら、自然とそういうお芝居になっていたように思います。反対に菜美のアクションシーンの撮影では、海からザブーンっと出てきたような爽快感があって楽しかったです(笑)。
――久実は着る服もしゃべり方も菜美とは別人で、料理も完璧にこなしていて驚きました。ドラマの菜美は料理があまり得意ではなかった印象があります(笑)。
【綾瀬はるか】ハッキリと描かれてないのでわかりづらかったと思いますが、実はドラマのときの菜美は主婦業に飽きていて、適当に切っていたからいつもキャベツが繋がっていただけで、決して料理が下手というわけではないんです(笑)。ただ単に戦うのが大好きで、「料理なんてつまらないな…」と思いながらやっていたんじゃないかなと。だから久実が料理上手なことに私自身は何も違和感は感じてなかったです。
――そんな事実があったとは!いまのお話を聞くとドラマを見直したくなりますね(笑)。
【綾瀬はるか】わかります!なんであんなにいつもキャベツの千切りを失敗していたんだろうと思いますし、そのシーンをもう一度確認したくなりますよね(笑)。
――久実が穏やかに料理を作っているシーンも素敵でしたが、個人的にテンションが一番上がったのが夫婦の共闘シーンでした。夫の勇輝を演じた西島秀俊さんとの久々の撮影はいかがでしたか。
【綾瀬はるか】ドラマでは夫婦の共闘シーンがなかったので、今回初めてできて楽しかったです。クランクイン初日が共闘シーンの撮影だったのですが、西島さんとは2013年に大河ドラマ『八重の桜』で兄妹役を演じて以来、仲良くさせていただいていて、2017年にはドラマ版で菜美と勇輝の関係性をしっかりと作れていたので、割とスムーズに撮影することができました。
――西島さんとは「兄ちゃん」「はるぼう」と呼び合うほど仲が良く、現場でも和気あいあいとされていたと聞きました。
【綾瀬はるか】アクションシーンの練習中は、「兄ちゃん、ちゃんとやってよ!」「はるぼうこそ!」みたいな感じで言い合ったりしながらやっていました(笑)。西島さんはとっても気さくで優しくて、いつも安心感をくれる素敵なお兄ちゃんみたいな存在なんです。だからこそ息の合ったお芝居をすることができたんだと思います。
■アクションの魅力は「全身をフルに使った表現ができること」
――日本の女優さんでスタントを使わずにアクションシーンができる方は少ないと思うので、もっと綾瀬さんのカッコいいアクションが見たいです!
【綾瀬はるか】ありがとうございます。これまでいろいろな作品でアクションに挑戦しているので、皆さん「もうお腹がいっぱいだよ」とおっしゃるかもしれませんが(笑)、『アイアンマン2』でスカーレット・ヨハンソンが演じたブラック・ウィドウのアクションにいつか挑戦してみたいです。例えば、何台もの車の上をタンタンタンッと走ってみたら面白そうだなとか、たまに妄想します(笑)。
――ぜひ挑戦していただきたいです!好きなアクション映画も教えていただけますか。
【綾瀬はるか】マット・デイモン主演の『ボーン』シリーズが好きです。実はドラマのときにこのシリーズでマット・デイモンがやっているカッコいいアクションを取り入れたこともあるんです。もし『ボーン』シリーズ好きの方がいたら、ドラマを見直していただいて、どのシーンか探してみるのも面白いかもしれないですね。
――最後に、綾瀬さんにとっての“アクションの魅力”を教えて頂けますか。
【綾瀬はるか】アクションは、言葉じゃなく全身をフルに使って何かを表現できるので、そこにすごく魅力を感じます。ダンスなどもそうですが、努力なしでは絶対にできないことですし、やればやるほど成果が出るところも好きです。ものすごくハードなアクション映画を観たりすると、俳優さんたちが撮影までに必死に練習を積んで挑まれたんだなと思って、そこに胸を打たれたりするんですよね。なので、機会をいただけるのであれば、これからもいろいろなアクションに挑戦してみたいですし、今の年齢だからこそできる役柄や作品に出会っていけたらいいなと思います。
取材・文=奥村百恵
◆スタイリスト:西真由美
◆ヘアメイク:中野明海