
■エンターテインメントの力を再確認。受け手を楽しませる送り手の知恵に脱帽
各地のファンたちが、大いに羨ましがっているはず。見ることが叶わなかった人たちのためにも、是非全国ネットでの放送を検討して欲しいところだ。
10日に放送された、「浪花から未来へ-ぼくらが駆け抜けた夏2020-」(NHK総合・関西ローカル)。エンターテインメントとは、本当に素晴らしいものだと再確認できた好番組だった。大学の教え子たちの中にもジャニーズファンは数多くいる。彼女たちにとって、彼らの存在は間違いなく「必要不可欠」だ。音楽に触れ、ライブに参加し、トークを楽しむことによって、また明日も頑張ろうという気力を生み出してきた。いわばかけがえのないエネルギーの源なのである。アイドルという職業は尊いものだと、最近特に思う。
番組では、7月28日に行われた関西ジャニーズ総勢70人以上が大集結した、万博記念公園の無観客ライブに密着するとともに、松竹座でこの夏1か月にわたって続けられた無観客公演の舞台裏も紹介していた。さらには関西ジャニーズ間の、世代を超えたスペシャル対談を実現させてもいて、豪華な構成となっていた。これで関西ブロック放送というのだから、制作したNHK大阪放送局はアッパレだ。
万博記念公園も松竹座も、もちろんライブの模様は配信され、多くのファンが楽しむことはできた。コロナ禍が続く中、なんとかして受け手を楽しませようと、エンターテインメントの送り手たちはジャンルを問わず知恵を絞る。頭が下がる思いだ。
一方で、大好きなアイドル、アーティストたちの姿に生で触れたいと願うファンは数多いだろう。「もう少しの辛抱」の「もう少し」は、一体どれくらい先なのか、正直なところ誰にも分からない。とても悩ましいところだが、マイナスを嘆くよりプラスを見出したい。それがエンターテインメントの真骨頂のはずだ。
■今回の紹介番組
「浪花から未来へ-ぼくらが駆け抜けた夏2020-」
(NHK総合・関西ローカル 9/10放映済み)
【著者プロフィール】影山貴彦(かげやまたかひこ)同志社女子大学 メディア創造学科教授。元毎日放送プロデューサー(「MBSヤングタウン」など)。早稲田大学政経学部卒、ABCラジオ番組審議会委員長、上方漫才大賞審査員、GAORA番組審議委員、日本笑い学会理事。著書に「テレビドラマでわかる平成社会風俗史」(実業之日本社)、「テレビのゆくえ」(世界思想社)など。
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