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オンライン売上が前年比1000倍!京都の螺鈿職人がコロナ禍にとった行動とは?

  • 2020年9月9日
  • Walkerplus

京都屈指の観光地、嵯峨嵐山に店を構える「嵯峩螺鈿野村(さがらでんのむら)」。新型コロナウイルス感染症の影響で客足が遠のき、2020年4月には売上がほとんどゼロに。1910年に創業して以来の大ピンチを迎えたものの、螺鈿職人・野村拓也さんが7月15日に開設したTwitterが注目を集め、8月には劇的なV字回復を遂げた。

同工房の救世主とも言える野村さんに、螺鈿の魅力やSNSの活用について聞いた。

■思わず目を奪われる美しい伝統工芸「螺鈿」

――螺鈿について教えてください
「螺鈿とは貝の内側にある虹色に輝く層を使った、漆工芸の伝統技法です。わずか0.1ミリ以下まで加工した薄い貝を文様に合わせて小刀で切って下地に張り付け、その上から漆を重ねて磨くという行程を何度も繰り返して完成します。下地制作から仕上げまで60~100もの行程があり、制作には根気と集中力が必要になります。

『嵯峩螺鈿野村』では、創業時の明治末期には螺鈿を施した卓、棚、小引き出しなどを制作していたのですが、時代のニーズに合わせ、今は指輪やネックレスなどジュエリーを中心に制作しています」

――制作の行程で好きなところ、大切にしているところはどこですか?
「いくつもの貝を切り出して張り合わせて1つの作品を作るのですが、貝によって光り方が違うので、光の向きを合わせて調整する行程を特に大切にしています。貝は天然の素材なので、同じものは1つもなく作る度に喜びや発見があります。

完成した作品は見る角度によって輝きや色味が異なり『ずっと見ていたくなる』『魔力が宿っているような美しさ』など、うれしい声をいただいています」

――子供のころから螺鈿職人を目指していたのですか?
「両親からは特に『継いでほしい』と言われることはなく、大阪大学外国語学部に進み、その後アパレルメーカーで5年間勤務していました。両親と姉が家業を守っていたのですが、学生時代に培った語学力などを活かして家族の力になりたいと考え、29歳でこの道に入り今年で5年目。父の作業を見て学び、自分でやってみることを重ね、父のような一流の職人になることを目指して今も修業を続けています」

■コロナで状況が一変。ピンチをチャンスに変えた個人アカウントのTwitter

――Twitterを始めたきっかけを教えてください
「売上が急激に落ち込み、『何とかしないと』という一心で始めました。店舗アカウントのFacebookとInstagramは既に始めていたのですが、あまり力を入れていなかったこともあり、反響はイマイチ。最後の頼みの綱…という思いで、個人アカウントのTwitterを開設しました。

当工房の螺鈿を知っていただくことが一番の目的で、商品をはじめ螺鈿の制作行程や職人としての自分の考えを中心に、螺鈿職人らしい内容にこだわって配信しています」

――劇的なV字回復を遂げるまでの流れを教えてください
「2020年7月15日にTwitterを開始。31日に『#無言で自社製品画像を投稿すると皆がRTしてくれるそんなありがたいハッシュタグ』というツイートでフォロワーが約3000人まで増え、8月初旬の週末にはHPへの1日のアクセスが6000を越えて、同時にオンラインストアの売上が跳ね上がりました。

8月18日のツイートでが、いいね76.8万、リツイート22.5万を獲得。その翌日はサーバーが一時ダウンするほとのアクセスを記録しました。そして、26日にはフォロワーが2万人を超え、オンラインストアの月間売上が前年対比1000%を超えました」

――ものすごいことだと思うのですが、ある程度、想定していましたか?
「店舗アカウントのFacebookやInstagramではあまり反響がなかったので、まったく予想していませんでした。アクセスが爆発的に伸びて注文が入り続けた日は、興奮と不安が入り混じった不思議な感覚で夜も眠れませんでした。寝ようとしている間も、オンラインストアには数百人の方が滞在し、注文してくださっているのですから、眠れないのも当然だったと思います。

瞬く間に在庫が切れてしまい、今では受注生産に。商品によっては5~6か月お待ちいただく状態になっています」

■SNSが閉鎖的になりがちな職人の職場と外の世界を繋ぐツールに

――SNSを始めるうえで、心配事はありませんでしたか?
「『デザインが盗用されるかも』『業界の人に何か言われそう』と、SNSでの発信を控える職人が多いようですが、それを言っていると身動きが取れなくなってしまいます。オマージュは映画などでもあることなので、心配をしすぎないようにしました。それよりも情報を発信することで、若い職人やこれから職人を目指す若者に、仕事の魅力や楽しさ、『職人として立派に食べていける』ということを伝えたいと思いました。

伝統工芸の世界は、後継者が見付からず廃業になってしまうケースが増えています。私のTwitterを見た若い職人の皆さんが自分に置き換えて夢を描き、希望を持ってもらえるとうれしいです」

――オンラインストアではどのような商品が人気ですか?
「ありがたいことに、シルバーリングの上に漆と貝で加飾した、私の初作品が一番人気です。以前は女性のお客様が中心だったのですが、オンラインストアでは男性からの注文も多く、シルバーリングのほかにもタイピンなどメンズアクセサリーの注文が増え、とてもうれしく思っています。海外からお問い合わせをいただくこともありましたが、今はコロナの影響で国際便が不安定なので海外への発送はお断りせざるを得ません。コロナが落ち着いたら、螺鈿の魅力を海外へも発信していきたいと思っています」

――今後の目標、活動予定などを教えてください
「螺鈿職人としてたくさんの技術を身に付け、現代の感覚に合う新しいものを作り出していきたいと思っています。螺鈿の下地は、もともと木材が基本でしたが、漆の技術が進みシルバーなどの金属やガラスにも塗装できるようになりました。現在はステンレス素材を使った新商品の開発をパリのデザイナーと進めているのですが、そのような感じで今後はシルバー以外の素材にも螺鈿を施し、新しい世界を広げていきたいですね。これからも当工房を見守っていただければと思います」

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