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国内で6頭の珍獣・ウォンバット、日本で2番目に小さな動物園に4頭いるのはナゼ?

  • 2020年8月6日
  • Walkerplus

脱力系の表情とずんぐりとしたボディがとてもチャーミングで愛らしいウォンバット。国内では2か所の動物園で、6頭しか展示されていない珍獣でもあるが、その6頭のうち4頭が、なんと「日本で2番目に小さい」といわれる、大阪府池田市の五月山動物園で飼育されている。

どういった経緯で飼育され、今に至ったのか。国内初の快挙を成し遂げた繁殖の成功など、ウォンバットとの秘話も含め聞いてみた。

■ウォンバットってどんな動物?

「ウォンバット」という名前の響きから、コウモリの仲間をイメージしそうだが、ウォンバット科ウォンバット属の哺乳類。別名ヒメウォンバットともいい、現在五月山動物園ではこのヒメウォンバットを4頭飼育している。

オーストラリアの南東部やタスマニア島などの低木林や草原に生育し、名前の由来はアボリジニの言葉で「平たい鼻」という意味から。草食動物で、草や木の根、樹皮のほか、アゴの筋肉が発達し奥歯の形も平らなため、イモやニンジン、リンゴなどの固いものも噛み砕いて喜んで食べる。

ライフワークは、前足のツメを使って地面を掘る巣穴作り。3~9mと長く、いくつもの部屋がトンネルで繋がるように作ることもある。夜行性で視力が弱く、昼は巣穴の中で休み、夜になると非常に鋭い嗅覚を頼りに食べ物を探して活動する。

お腹に子育てのための袋がある有袋類(ゆうたいるい)の仲間で、コアラとは親戚にあたるが、穴を掘るときに土が入らないよう、袋は後ろ向きに付き子どもを守っている。

内股の短い脚でちょこちょこ、ゆさゆさ歩くが、時速40kmほどの速さで走ることもある。どちらの姿も見飽きることがない。

■なぜ「日本で2番目に小さい動物園」にいるの?

日本国内でウォンバットに会えるのは、五月山動物園と長野県の茶臼山動物園の2か所だけ。

ではなぜ、敷地面積約3,000㎡にアルパカやヒツジなど飼育動物13種63頭という小規模な五月山動物園に、日本では珍しいウォンバットがいるのか?しかも国内最多4頭も。その経緯を園長の瀬島さんに聞いてみた。

「1990年に五月山動物園がある池田市とオーストラリアのローンセストン市が姉妹都市提携25周年となり、その記念としてタスマニア島にあるトロワナ・ワイルドライフパークからウォンバット3頭が贈られ、一躍人気者になりました」

この時にやってきたのがワイン(オス)、ワンダー(~28才/メス)、ティア(~14才/メス)の3頭。1992年にはワインとワンダーが国内で初の繁殖に成功。2017年には一番多くて6頭のウォンバットを飼育していた。

■ストレスフリーの環境が繁殖のカギ

1992年にワインとワンダーの間に初めての赤ちゃん、サツキ(~11才/メス)が誕生。飼育下での繁殖に成功したのは国内初で、世界でもなんと2例目。さらに1年後には、サクラ(~19才/メス)も生まれる。

この快挙を成し遂げた秘訣を園長の瀬島さんは「特にありませんが、自然に近い環境にして繁殖は自然まかせです。大阪はオーストラリアと似た気候でもなく、同じくウォンバットを飼育している茶臼山動物園がある長野県の方が気候的に良いかも知れません。気を付けているのは、ウォンバットにとってストレスのない環境を作っていることです」と話す。

土を埋めた土間で好きなように巣穴が掘れ、そこで休めるように作られた舎内。餌もウォンバットによって切り方やサイズを変えて、好んで食べるようにするなど、ストレスフリーの飼育を心掛ける。もちろん健康管理にも注意をはらう。

オーストラリアの動物園からのアドバイスを受けながら、大阪にいてもウォンバットにとって最適な場所になるよう工夫し、ストレスのない自然に近い状態を再現。その環境下で自由にさせるのが、最大のカギのようだ。

2017年10月には、タスマニア島からフクのお嫁さんとしてマル(~3才/メス)、カップルのコウ(オス)とユキ(メス)の3頭が新たに加わる。ワイン、ワンダー、フク、コウ、ユキ、マルの6頭でにぎやかになったが、同年ワンダーが老衰死。2019年には体調不良だったマルとの別れがあり、現在は4頭になった。

■個性豊かな4頭のウォンバット

30年前に来日し今年31才になるワインを筆頭に、食欲旺盛なフクや年頃になったコウ、唯一の女の子ユキ。この4頭の魅力や飼育での秘話を教えてもらった。

まず1頭目は、1989年1月生まれのワイン。2020年現在の年齢は31才で、人間でいえば「100才越え」のおじいちゃん。世界最高齢は32才なので、世界一になる日も遠くないはず。とても人懐っこく甘え上手で、青草が好物。

2頭目は2004年生まれのフク。気が強くて向かってくることもあるが、時には甘えてくるかわいらしい一面も。食べることが大好きで、夕方のエサの時間には誰よりも早く舎内で待つ食いしん坊。

続いて3頭目は2016年1月生まれコウ。ほかの3頭に比べると少し小柄だが、好奇心旺盛で、雨の日でもお構いなしによく走り回る活発な姿が人気。サツマイモの皮だけをきれいに残す器用さもある。

4頭目は紅一点、2016年1月生まれのユキ。タスマニア島の動物園で生まれた時からずっとコウと一緒に飼育されている。穴掘りや枝をかじることが大好きなおてんばさん。

飼育など日々ふれあうなかで、園長さんや飼育員さんだけが知っている一面もあるようだ。

「ワインは動物園育ちのせいか、実は若いころから穴掘りが苦手。飼育員が用意した木の箱に入って寝ています。フクは4頭の中でも一番警戒心が強く、なかなか仲よくなるのに時間がかかりました。今では近くに飼育員を見つけると走って寄ってきて、体をこすりつけて甘えてきます。その時の表情がとても穏やかでかわいいです。コウは外で遊ぶのが大好きで、時間になってもなかなか舎内に帰ってくれません。そのため、木のシェルター(簡易な寝床)でおびき寄せるなど、日々格闘中(苦笑)。ユキは舎内からシェルターを出すと、自分で好きな場所へ運びますが、その姿が無邪気で愛らしく、来園者を魅了します」

それぞれにチャームポイントがあり個性も豊か。なにかと悲観ムードが漂う昨今だが、見ているだけでユル~く、やさしい気持ちになれるウォンバットに会って、癒されてみるのもいいかもしれない。

■一方通行などのコロナ対策を実施

新型コロナウイルス感染拡大防止の対策については、「入退口は正面入口のみとし、見学順路は一方通行で、2mといった安全な間隔を確保して、立ち止まらず観覧していただいています。ふれあい広場は有料(1回15分¥100※完全入替制)になり、人数制限も設けています。ポニーの引馬は休止中。消毒液を随所に設置していますので、自由に利用してください」と園長の瀬島さん。

動物ともソーシャルディスタンスを保ち、安全に楽しみたい。

取材・文=下八重順子

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