ドラゴンクエストの敵モンスターにいそうな鋭い眼光でジロリ。アフリカ大陸の湿地帯に生息するハシビロコウは、“動かない鳥”として徐々に注目を集め、今や写真集も発売されるほどの人気者となっている。
正面から見ると迫力満点のハシビロコウだが、横から見ると頭の後ろに寝グセのような羽がピョン。特徴の一つである大きなクチバシも口角が上がっていて、どこか憎めない愛らしさが。コワすぎる顔とのギャップも魅力の一つとなっている。
■「神戸どうぶつ王国」で自然な姿を間近に観察
そんなハシビロコウを間近に観察できるのが、“花と動物と人とのふれあい共生”がテーマの「神戸どうぶつ王国」だ。四方をガラスハウスに囲まれた中庭に「アフリカの湿地」と呼ばれる広大な池があり、モモイロペリカンやオシドリなど、さまざまな鳥たちと一緒にオスのボンゴ、メスのマリンバの2羽が気ままに暮らしている。
今回は飼育員の長嶋さんに、謎の多い生態など、ハシビロコウの魅力を聞いてみた。
■ハシビロコウと言えば“動かない鳥”。が、実は…
「動かないイメージのあるハシビロコウですが、実際は意外と動くんですよ。飛んで移動もしますし、池に入って水浴びをすることも。活発なのはボンゴですね。行きたい場所があったら、人がいてもへっちゃら。お客さまの前を悠々と横切ったりもしています。クチバシの色で見分ける方法もありますが、2羽のうち大きい方がボンゴで、小さい方が少し臆病なマリンバ。すぐに見分けられると思いますよ」
エサの魚を確実に捕らえるために何時間でも動かずじっと待つといわれるハシビロコウだが、「神戸どうぶつ王国」の2羽は意外にも活発だそう。特に、ボンゴは池を泳いでいる魚を狙って、果敢にダイブをすることも。動くハシビロコウゆえ(?)、間違って木の枝を捕まえたりしているのだとか。
「木の破片がクチバシに刺さって、パニックになっていたこともありましたね。意外と言えば、人懐っこい一面もあって。ボンゴも初めはそうだったのですが、以前当園で飼育していた2羽は特に人に慣れていて、クチバシをカタカタ鳴らしたり、おじぎをしたりと、挨拶をしてくれました。クラッタリングという行為なのですが、人間に興味を持ちすぎると繁殖に影響が出るため、心を鬼にして無視していましたけどね」
■絶滅の危機も。飼育数は世界で40~50羽の希少種
表情はコワモテでたくましいハシビロコウだが、現在の生息数は5000~8000羽ほどといわれ、絶滅危惧種に指定。飼育数も世界で40~50羽しかいない(2019年時点)、実は希少な鳥なのだ。できるだけ自然の姿のまま、繁殖に影響が出ないように、一定の距離を保ちながら飼育しているそう。
「私は今も2羽のことが大好きなんですけど、向こうには嫌われてしまったかも。定期的に健康チェックをするために捕まえたりするので。イヤなことをする人と認知されてしまったようで、近付くと羽を広げて威嚇してきたりもしますから」
現在は世界でも2例のみ、国内では未だ0の繁殖成功に向けて、嫌われても(?)、愛情たっぷり&大切に飼育を続けている。
「繁殖に関しては、日々観察をしながら少しずつ。ボンゴが近付くと、マリンバは威嚇するような状況なので、まだ少し時間がかかりそう。もちろん、じーっとしていることもありますが、オスとメスの微妙な関係性や、たまに成功するハンティングシーン、運が良ければ頭の上を飛んで行く姿などが見られますので、コワモテだけどかわいい希少なハシビロコウにぜひ会いにきてください!」
取材・文=兄弟エレキ