漫画の連載開始から今年30周年を迎える『クレヨンしんちゃん』。テレビや映画シリーズで今も愛され続ける人気アニメに、「子供のころから好きだった」と話す山田裕貴がゲスト声優で出演する。
最新作の28作目は『映画クレヨンしんちゃん 激突!-ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』。王国の秘宝“ミラクルクレヨン”を手にしたしんのすけが、勇者となって世界を救う、のか?! という物語だ。山田は、天空の王国・ラクガキングダムのイケメン防衛大臣の声を演じ、アニメ声優に初挑戦する。
「好きだからこそ大切にしたい」と緊張感を持って臨んだ意気込み、大人の今見てわかった『クレヨンしんちゃん』の魅力など、作品への思いを語ってくれた。
■【ストーリー】
自由なラクガキをエネルギー源として空に浮かぶ王国「ラクガキングダム」。が、地上でラクガキが減り、エネルギー不足で滅亡寸前。王国軍は国の命運を賭け、地上への進撃を開始する。その下には、しんのすけたちが暮らす春日部が! 果たして、しんのすけは世界をお助け出来るのか!?
■【『クレヨンしんちゃん』との出会い】
僕らの時代は、金曜日の午後7時~7時半でした。子供のころにテレビでずっと見ていたので、お話をいただけてうれしかったです。母に報告したら『よくおしり出してたよね』って言われました(笑)。
■【声優初挑戦への意気込み】
作品に挑む時、どれも生半可な気持ちではやらない。でも、僕はほんとにアニメと声優さんが大好きで、好きだからこそ「参加できてよかった」「楽しかった」だけで終わりたくない気持ちがすごくありました。
せっかく同じステージでやらせていただくのに、ゲストだから俳優さんだから、ではなく、ちゃんとその世界になじんでたって言われるぐらいになりたいと。声優さんがどれだけすごいか身に染みてわかっていますから。もう、デビュー作に挑む感じでした。
■【ご自身の声のこと】
「鼻声だね」ってすごく言われますが、もともとこういう声なんです。でも、声がいいって言われてるからと言って、声優さんが出来るわけじゃない。声優さんはそんな甘いものじゃないですからね。
■【役柄について】
すごくかわいそうだと思います。防衛大臣なのになにも守れてない、自分の身さえも。何が正しくて何が間違っているのか気づけずに、自分の思想を貫いてみんなから信頼を失ってしまう。でも、すべては国に対する愛なんです。
声だけでキャラクターを作る、キャラクター性の強い世界観の中で声を生かすというのは、本当に初めてで。役の気持ちや感情はつかめても、その奥行きから心の機微までを声だけで表現する難しさをすごく感じました。
■【作品について①】
しんちゃんがおしり出して「うほほ~い!」ってやってるだけで笑ってた子供のころと、大人になってから観る感覚は、すごく違いました。今観ると、大人に刺さるメッセージ性のある作品だと思います。感動しました。
例えば、人の責任にする大人たち。子どもの純粋な叫びに大人が気付かなきゃいけないよっていうメッセージがたくさん入っていたり。これを子供の時に観ていても多分気付けない。刺さる部分ですね。
■【作品について②】
それから、今の世の中にピッタリ。今、何か一つ失敗したら、その人を集中的に叩くSNSが出て来る。なぜみんなその人のことを知らないのに、自分は全部を知ってるかのように言えるんだろうって、僕は普段からずっと思ってて。
それと同じことを表してる作品だと思います。時代背景を捉えた大人な作品。こんなに深いメッセージ性があるのかと、すごくすてきな作品だなと純粋に思えましたし、本当に改まりました。
■【作品について③】
あと、僕らが普段芝居をする中でとても意識している緊張と緩和のようなものを、見事に操っている作品だと思います。すごくフザケてるしんちゃんが、ちょっと悲しい顔をしただけで僕らも悲しくなるような。悲しい表情一つで伝わるものがすごく大きい。
そういう面でもすごく勉強になる、お芝居の教材のような作品だなぁと、観ていて思いました。
■【子供たちとお母さんへのメッセージ】
ちびっこのみんなには、楽しんでこの作品を観てほしい。しんちゃんの冒険、仲間って大切なんだとか、勇気を振り絞って何かをすること、みんなで一緒になって何かを作るということがどれだけ大事かということを。しんちゃんは誰もいじめてないし、誰も傷つけていない。そういうところを小さい子たちには知ってほしいなと思います。
親御さんたちは…自分の子供だからこそ見えていない部分もきっとたくさんあると思うので、子供ってこんなことを考えてるのかなって見直す機会に。ひとつ疑問に思うだけでも、普段の子供たちの行動に何か意味があるんじゃないかと思えるのではと。大人だからって完璧じゃない、気づけていないことがたくさんある、まだ成長の途中なんだなと思えるのではないかなと思って。
この『しんちゃん』を見て、学ばされることが多分たくさんあると思う。それはいくつになってもいつでも成長できるし、発見できるし、何かに気付くことが出来る。だから、考えることを止めないでほしいなぁとか思いながら…。僕が演じる防衛大臣も、自分の間違いに気づいてちゃんと謝れる人間だから、救われるキャラクターだなと思っています。
普段のお芝居では気付けないようなことを気付かせてくれる、すごく素敵な作品で、しんちゃん、すごいなと思いました。だからこれだけ長く続いてるんだろうなと。「しんちゃんは見なくていい」って思ってしまうお母さんたちも、これを機にだまされたと思って一度しんちゃんのおふざけに付き合ってみたら、おもしろいことが起きるんじゃないかな。
■【関西のこと】
関西には最近なかなか行けてませんが、僕は京都が大好きなんです。1人で神社やお寺に行って、ご朱印を集めたりしています。御朱印帳は3冊目ぐらいになりました。
やまだゆうき●1990年、愛知県生まれ。11年に「海賊戦隊ゴーカイジャー」で俳優デビュー。昨年の主演舞台「終わりのない」で、第74回文化庁芸術祭賞 演劇部門新人賞を受賞。7月までドラマ「特捜9 season3」に出演。ほか、映画は「燃えよ剣」「ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~」「東京リベンジャーズ」が近日公開
MOVIE
「映画クレヨンしんちゃん 激突!-ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」
原作:臼井儀人(らくだ社)
監督・脚本:京極尚彦 脚本:高田 亮
声の出演:小林由美子、ならはしみき、森川智之、こおろぎさとみ、神谷浩史 声の特別出演:山田裕貴
(’20 東宝) →近日公開予定
取材・文=高橋晴代/撮影=川田洋司
ヘアメイク= 小林純子/スタイリスト=森田晃嘉
衣装協力=ジェットン ショールーム (TEL)03-6804-1970