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「尾瀬夜行で新潟、抜けられる…!」超秘境バスルート 東武が商品化 酷道険道 遊覧船も

  • 2020年9月5日
  • 乗りものニュース

私鉄としては日本唯一の夜行列車、東武の「尾瀬夜行」を活用し、路線バスなどを乗り継ぎ新潟へ抜ける尾瀬横断ルートが商品化されました。「酷道」「険道」そして遊覧船を経由する同ルート、東武の担当者も太鼓判の秘境ぶりです。

「尾瀬夜行」ならではの半日コース

 東武鉄道が浅草〜会津高原尾瀬口(福島県南会津町)間で運行する夜行列車「尾瀬夜行23:55」(冬季はスキー列車「スノーパル23:55」)。東武トップツアーズの旅行商品として運行されるものですが、この私鉄唯一の夜行列車に代表されるように、東武グループは歴史的に尾瀬の観光誘客に力を注いできました。

 そうした東武トップツアーズが取り扱う尾瀬の旅行商品に、オプショナルツアーという形で2020年シーズンから追加されたコースがあります。「尾瀬夜行」下車後、バスなど公共交通を乗り継いで、新潟へ抜けるという周遊ルートです。

 尾瀬国立公園は福島、新潟、群馬の3県にまたがります。従来、バスとトレッキングにより県をまたぎ尾瀬を横断するための企画乗車券などが販売されていましたが、このたび発売された商品はトレッキングを前提としない、公共交通だけで福島県側から新潟県側へ抜けるというもの。次のような交通機関を経由します。

・1:東武鉄道「尾瀬夜行23:55」、浅草〜会津高原尾瀬口
・2:会津バス、会津高原尾瀬口駅〜尾瀬御池(みいけ) ※尾瀬沼山峠行き
・3:会津バス、尾瀬御池〜尾瀬口船着場(奥只見) ※尾瀬沼山峠発
・4:奥只見湖遊覧船、尾瀬口船着場〜奥只見船着場
・5:南越後観光バス、奥只見ダム〜浦佐駅東口

 浅草を23時55分に出発し、翌朝からバスなどを乗り継ぎ、新潟県南魚沼市の浦佐駅へ最短で12時55分に到着するルートです。浦佐駅からは上越新幹線で東京へ帰れます。

 いずれの交通機関も、おもに夏から秋にかけて運行され、それぞれの方面から「尾瀬へ到達する」ための交通機関であり、それらをつないで「抜ける」という概念のものではなかったのだとか。なお上記2のうち「尾瀬夜行」に接続する便、および3と4は完全予約制です。

 今回、実際にこのルートを走破した東武鉄道の担当者に話を聞きました。そこからわかったことは、「ここを路線バスが走るの!?」とも思えるほどの秘境ぶりです。

「洗い越し」のある酷道をバスがゆく! 尾瀬散策も可能

 例年なら6月からスタートする「尾瀬夜行23:55」ですが、2020年は新型コロナの影響で8月から、「1名で2席確保」というソーシャルディスタンスに配慮した形で運行されています。浅草から終点、会津高原尾瀬口駅には朝3時18分着。3時50分頃までは列車内で仮眠もできます。この列車の利用者専用の尾瀬沼山峠へ向かう会津バスは、4時20分に発車します。

 バスは国道352号をひた走り、福島県檜枝岐(ひのえまた)村の中心部を経由し、5時50分、尾瀬御池に到着します。バスはここからさらに20分、マイカー規制区間を走りハイカーを沼山峠まで運びます。大型駐車場と観光施設があるここ御池は、マイカーからシャトルバスへ乗り換える拠点ともなっているのです。

 しかし、尾瀬口乗船場行きのバスが来るのは9時20分。およそ3時間半も時間が空いてしまいますが、公共交通だけで尾瀬を越える今回のルートで唯一、「尾瀬らしい散策が楽しめるチャンス」なのだとか。

「駐車場の近くには板張りの遊歩道などがあり、御池田代、姫田代などを気軽に散策できます。清らかな湿原、季節の花々を楽しめるほか、ウグイスの谷渡りも聞こえてきます」(東武鉄道 担当者)

 また、御池の駐車場へ次々とやってくるバスも見どころとのこと。御池〜沼山峠のシャトルバスとして運行されている中国BYD製の電気バスなど、珍しい車両もあるそうです。なお、2020年は新型コロナの影響により、尾瀬の観光施設は休館・休業している箇所もあります。

 尾瀬御池9時20分発の尾瀬口乗船場行きバスに乗り換え、再び国道352号を進みます。御池から先は「樹海ライン」の異名を持ち、冬季には閉鎖される区間です。片側1車線ずつあった道は幅が狭まり、バス1台が通るのがやっと。さらには、沢水が道路に流れる箇所を横断する「洗い越し」もあるという、いわゆる「酷道」を走り抜け、新潟県へ入ります。

北欧のような風景 そして異次元空間の「険道」

 御池からバスで45分、奥只見ダム湖の「尾瀬口乗船場」に到着。バス停から階段を降りて「奥只見湖遊覧船」に乗り換え、一路、ダム湖を北上します。

 ダム湖とはいえ、両側から山々が迫る複雑な地形で、北欧のフィヨルド(氷河の侵食で形成された複雑な入り江)を思わせる風景だそう。湖の水をせき止めているダムの巨大な堤体に近い奥只見乗船場まで、40分の船旅です。ちなみにこの奥只見ダム、2000(平成12)年に映画化もされた真保裕一さんの小説『ホワイトアウト』の舞台でもあり、その内容を知っていれば、さらに楽しめるかもしれません。

 浦佐行きのバスは、ダムのレストハウスの駐車場から11時35分に発車します。このバスもまた、「酷道」352号に負けず劣らずの、県道ならぬ「険道」を走ります。

 ダムに通じる新潟県道50号の一部区間は「奥只見シルバーライン」といわれ、魚沼市上折立(かみおりたて)まで22kmのあいだに計18km、19か所ものトンネルが連続します。それぞれのトンネルは壁面にごつごつした岩肌が残り、断面も狭く、「異次元の空間を延々と走る宇宙船のような感じがする」(東武鉄道 担当者)のだとか。1950年代、奥只見ダムの建設用道路として3年の歳月をかけ完成し、新潟県に譲渡されて以降、一般車も走れるようになりました。

 バスはシルバーラインを通過したのち、栃尾又温泉、大湯温泉などを経て、魚沼地域の市街地へ。奥只見ダムから80分で浦佐駅へ到着します。

 なお今回は、おもに午前に各方面から「尾瀬へ向かう」便、あるいはその折り返し便をつなぎましたが、午後、「尾瀬から帰る」便どうしをつないでの横断も可能。ただし一部は予約が必要で、浦佐から福島側へ抜けるなど、「尾瀬夜行」を利用しない場合の会津バスや奥只見湖遊覧船の予約は、魚沼市観光協会が一括して受け付けています。

 東武の夏の夜行列車は、1960年代には日光や赤城方面へ、日に10本もの夜行列車が設定されていたそうですが、近年は道路の整備やクルマの進化もあり、唯一となった「尾瀬夜行」も厳しい状況が続いているといいます。一方、マイカーで尾瀬の山々を上ろうと、駐車場所の争奪戦のような状況も見られるとのこと。今回のルートをツアー商品にした背景について東武の担当者は、周遊ルートの開拓、そして「マイカーにはない公共交通のよさ」をアピールする狙いがあるといいます。

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