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空母化で話題「いずも」と「かが」、乗ったらどんな船? 快適艦内と甲板塗料のヒミツ

  • 2018年12月21日
  • 乗りものニュース

事実上の空母化が話題の海自いずも型護衛艦「いずも」と「かが」、特徴的な甲板もさることながら、その艦内や生活区画の様子はどのようなものなのでしょうか。実際に乗艦してきました。

いずも型護衛艦、「事実上の空母」化へ

 2018年に入ってから、ささやかれ出したヘリコプター搭載護衛艦「いずも」型の空母化構想――それが2018年12月18日(火)、政府が決定した「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」において、「多機能のヘリコプター搭載護衛艦」としてほぼ現実のものとなりました。ここで言う「多機能」には、大規模災害対応のほか、短距離離陸・垂直着陸能力を有するF-35Bステルス戦闘機を搭載し、まるで航空母艦のような能力を持たせることも含みます。

 憲法上、日本は「攻撃型空母」を保有できません。戦後長らく封印されていた「空母」は復活しませんでしたが、どうやら、結論から言って海上自衛隊は、「空母は保有しない」ながらも「事実上の空母は保有する」という形になりそうです。

 改修されるのは「いずも」と「かが」の2隻となります。「いずも」は、2015年3月25日、「かが」は、2017年3月22日にそれぞれ就役しました。この2隻は同型艦であり、最初に建造された「いずも」の名前を取り、「いずも型」と呼びます。

「就役」とは、建造されていた工場におけるすべての工程が終了し、海上自衛隊へと引き渡されることです。我々がクルマを買った時に、ディーラーから鍵を受け取り、自分の愛車となる「納車」と同じようなものです。

 就役の式典は厳かに行われます。初代艦長は、真新しい自衛艦旗を受け取り、それを後部の旗竿に初めて掲げます。これにより海上自衛隊の1隻となったことを意味します。

 筆者(菊池雅之:軍事フォトジャーナリスト)は、初めて「いずも」の甲板に立った就役式の日のことをよく覚えています。やはり驚いたのは船体の大きさでした。全長が248mもあります。東京都庁(第1庁舎)の高さが243mですから、あれだけの建造物が横になっていると考えるとイメージがわきやすいでしょうか。広い甲板を艦首から艦尾までゆっくりと歩きました。これまで米海軍をはじめ、いくつもの海軍の空母や強襲揚陸艦などに乗艦取材した経験から、「これは立派な空母だ」との感想を抱いたものでした。

「かが」に乗ってみた

 2018年8月26日から10月30日にかけ、海上自衛隊は「平成30年度インド太平洋方面派遣訓練」を実施しました。英語表記である「Indo-Southeast Asia Deployment」の頭文字を取って「ISEAD2018」というコードネームで呼称されます。

 この「ISEAD2018」に「かが」と、護衛艦「いなづま」「すずつき」、そして5機のヘリコプターが参加しました。8月26日に、「かが」と「いなづま」は海上自衛隊呉基地(広島県呉市)を、「すずつき」は同佐世保基地(長崎県佐世保市)を出港。南シナ海を南下し、フィリピン・スービック(9月1日から9月5日)〜インドネシア・ジャカルタ(9月18日から9月22日)〜スリランカ・コロンボ(9月30日から10月4日)〜インド・ヴィシャカパトナム(10月7日から10月11日)〜シンガポール・チャンギ(10月18日から10月23日)と5か国を巡りました。10月30日に沖縄県の勝連(海上自衛隊沖縄基地)へと入港し、すべての航海を終えました。なお、「すずつき」はスリランカには寄らずにひと足先に帰国しました。

 筆者は、この航程の中で、スリランカからインドを経てシンガポールへ向かう航海を行う「かが」に同乗取材しました。

 筆者が生活したのは、艦首部分にある居住区画でした。ここは通常、司令部や「かが」の幹部は使いません。外から乗り込んでくるゲストに対応できる区画となっています。今航海では、筆者を含め、インドから乗り込んできたインド海軍研修員などが使用しました。3段ベッドとロッカーだけが並ぶ殺風景な場所です。その寝るためだけの区画から扉1枚隔て、テレビやソファのある休憩室が隣接しています。さらに、扉を抜け、廊下に出ると、すぐにお風呂やトイレ、洗濯室などもあるため、生活動線は非常に良かったです。

 これほど大きな船体であるにも関わらず、艦内は非常にシンプルで分かりやすいのが特徴です。船体の内側中央は格納庫スペースとなっています。その格納庫を取り囲むように、まっすぐな直線通路があります。あとは、階段を使い、上下に移動するだけなので、自分が艦種側を向かって歩いているのか、はたまた艦尾側を向かって歩いているのかさえ、しっかりと認識していれば、迷うことはありません。

広々とした格納庫、艦内には女性用区画も

 艦内で最も広いスペースを取っているのがやはり格納庫です。2018年現在、ここにはヘリコプターが置かれています。近い将来、ここにF-35Bも格納されるのでしょうか。いずれにせよ、広さは充分です。

 航空機だけでなく、車両を積載することもできます。2016年4月に発生した熊本大地震の際、「いずも」は、北海道小樽港で陸自災害派遣部隊の車両を載せ、福岡県博多港まで運んでおり、そうした輸送艦としても使えます。これも海自が言うところの「多用途運用」のひとつです。なお、資料には3t半トラック50台を載せられると書かれていますが、それは床面積を単純計算して、それぐらいなら大丈夫であるという数字でしかなく、実際に限界まで載せたことはありません。「車両を取り回すスペースも必要であり、実際のところそれほど載らないのではないでしょうか?」(護衛艦「かが」幹部)とのことです。

 艦内には女性区画もあります。これも、ほかの護衛艦よりもはるかに広いスペースとなっています。居住区や休憩室、風呂、トイレが集約されています。「かが」では、女性自衛官が約40名も乗艦しており、航海科や機関科、航空科とすべての職種に就いています。珍しいことに、立入検査隊(ほかの船舶に対し立入検査を実施する実行部隊)にも2名の女性自衛官が選抜されています。女性が生き生きと活躍する未来の海自の姿を、「かが」は見せてくれました。

 群司令以下、司令部幕僚などが使う「司令公室」と、「かが」の幹部が使う「士官室」という部屋があります。従来の護衛艦では、来客時の接遇から日々の執務、そして食事もこれら部屋で済ませていました。ですが、「かが」では、配膳や後片付けの効率性を追求した結果、食事に関しては、幹部であっても、海曹士と同じ食堂で食べていました。

最初からそのつもり? ほかとは違う塗料のヒミツ

 甲板に出てみると、ほかの護衛艦の甲板に比べて明るい灰色をしています。これは、滑り止め塗床材がこれまでの護衛艦とは違うからです。使用しているのはアメリカンセイフティ―社の「エポクゾ(MS-375G)」という塗料です。米海軍空母などにも使用されています。ジェット戦闘機の離発着時の炎(高熱)やジェット噴流に強く、ほとんどの酸やアルカリ、燃料などにも耐久性があります。まるで空母となる将来を見越していたかのように、「いずも」や、同じヘリコプター搭載護衛艦であるひゅうが型にも使用されています。

 乗員たちは、課業外には、艦上体育に汗を流します。艦内にふたつのトレーニング区画があるのですが、晴れた日は、飛行甲板上をジョギングします。筆者も走ってみました。手元のランニングウオッチで、1周の距離を計測すると、約500mもありました。5周も走ればなかなかの運動量となります。全速力で走る人、または20分や30分と時間を決め、ゆっくりとしたペースで走る人など様々でした。ただし、転ぶと、前述した甲板の頑丈な滑り止めが、まるで大根おろしを擦るように皮膚を擦ってくので、注意が必要です。

 今回の航海では、入隊してまだ数カ月という若い隊員もいました。「初めて乗る船が『かが』でよかった」と語っていました。訓練こそ厳しいものでしょうが、艦内生活はかなり快適なようです。それは筆者も大変よく理解できました。

 今後、「いずも」型がどう生まれ変わっていくのか、非常に楽しみです。

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