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軍用機、なぜわざわざ空中で給油? 日本周辺、2年で事故2件 それでも実施するワケ

  • 2018年12月8日
  • 乗りものニュース

軍用機の空中給油には、事故のリスクがあります。にもかかわらずなぜ、わざわざ空中で実施するのでしょうか。また空中給油の事故、地上への影響を過度に心配する必要はありません。

空中給油中の事故発生、2機が墜落

 2018年12月6日(木)の午前1時40分ごろ、高知県室戸岬沖の太平洋上において、アメリカ海兵隊の複座戦闘機F/A-18D「ホーネット」、同じくアメリカ海兵隊の空中給油機KC-130J「スーパーハーキュリーズ」の2機が墜落、両機の乗員7名が行方不明になる事故が発生しました。

 これを受けて米軍および自衛隊による捜索救難が行われ、同日正午ころまでにF/A-18Dの乗員2名を自衛隊機が救助、残念ながら1名は殉職しましたが、12月7日(金)現在もなお、KC-130Jの乗員5名の捜索が続いています。

 事故の原因は調査中であり、明らかにされていない要素もあるため断定することはできませんが、戦闘機と空中給油機の2機が墜落した原因は夜間空中給油訓練において、不意に接触したのではないかと見られます。

 日本周辺における、空中給油にかかわる重大事故としては、ちょうど2年前の2016年12月13日、沖縄沖東の海上においてアメリカ海兵隊のMV-22B「オスプレイ」がKC-130と接触し、MV-22Bが不時着大破するという事故があったばかりです。

 またF/A-18DとMV-22Bはどちらも、漏斗を逆さにした形状の「ドローグ」と呼ばれる給油機側の給油装置に対して、「プローブ」と呼ばれる受油装置を差し込むことで接続する、比較的難易度の高い空中給油方式を採用しています。よって、今回のF/A-18Dと2年前のMV-22Bの事故を結び付けて報じるメディアもあるようです。

事故は起きるだろうけど心配ない理由

 しかし、MV-22Bの事故ではプロップローター(プロペラ)が空中給油機側のドローグおよびホースを巻き込み損傷、MV-22Bは操縦可能な状態を保ったまま不時着し、KC-130は無事着陸しています。ジェット戦闘機であるF/A-18Dでは原理上MV-22Bのような巻き込みは発生しえないため、両事故における関連性は考えられません。

 とはいえ2年という短い期間において、日本周辺で連続して、おそらく空中給油に起因する事故が発生したことは事実です。基地周辺などにおいて、地上に被害がおよぶ懸念はないのでしょうか。

 結論としては今後、空中給油中において事故が発生したとしても、それが直接的に地上へ被害を与える可能性はほぼ無いと言えます。

 なぜならば、空中給油訓練はもともと衝突のリスクなどを勘案した上で、人口密集地の上空で行われることは無いからです。実際MV-22B、F/A-18Dどちらの事故も、日本の領海、領空の外であり、どの国にも属さない国際領域において発生しています。

 この原則はかなり徹底されており、航空ショーなどイベントにおいて空中給油の展示飛行を行う場合においてさえ、空中給油を模擬することはあっても、あくまである程度接近した「編隊飛行」にとどめ、実際に燃料を送り込める物理的に接続された状態とされることはまずありません。

 そのため、今回の墜落事故を過度に心配する必要は一切ありません。いずれ事故の原因について公式の発表が行われるはずであり、冷静にそれを待つのが賢明であると言えるでしょう。

なぜわざわざ空中で給油するの?

 なぜ接触というリスクをおかしてまで、空中給油をする必要があるのでしょうか。それは戦闘機など軍用機の能力は、空中給油機の支援がなければ、その能力を数分の1しか発揮できないためです。

 空中給油機の役割は、単に航続距離を延ばすだけではありません。あらゆる航空機にも言えることですが、戦闘機の最大搭載量(重量)は最大離陸重量を上回ります。簡単に言えば、その重さで飛べる(巡航できる)けど離陸はできない、という状態がありうるということです。もちろん燃料にも重さがあり、よって、たとえば重い爆弾やミサイルを搭載し燃料も満タン状態だと最大離陸重量を越える場合、燃料を減らして離陸し、しかるのちに空中で給油してやればよいということになります。そうすることで、戦闘機の搭載量の上限を事実上、引き上げることができるのです。

 また、近年はネットワークを活用した作戦が重要視されており、空中で作戦をアップデートすることで、即座に目標に対する攻撃を行えるような作戦が主流になりつつあります。これを行うにはつねに滞空している必要がありますから、空中給油機が欠かせません。飛行場にいちいち戻って再出撃しては、時間が掛かりすぎ非効率的だからです。

 こうした事情から、特にアメリカ軍は空中給油機を非常に大切にしており、全世界の8割に相当する600機もの空中給油機を保有しています。またアメリカ海軍などは、先駆けて無人機化するなどの取り組みを進めています。

 不意の接触、特に夜間におけるリスクは決して無視することのできない問題ですが、今後も空中給油機がなくなることは決して無いでしょう。

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