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陸自ヘリの救助活動、実際どうやっているの? 2015年9月、鬼怒川氾濫に飛んだUH-60JA

  • 2018年12月1日
  • 乗りものニュース

陸上自衛隊のヘリコプターによる救助活動は、実際のところどのように行われているのでしょうか。2015年9月、関東・東北豪雨にて救助にあたった、UH-60JAの機内の様子を追います。

鬼怒川氾濫、濁流が街並みを襲った「平成27年9月関東・東北豪雨」

 2015年9月10日、鬼怒川上流に集中して降り注いだ雨は、下流の堤防を決壊させるほどの勢いで増水し、茨城県常総市を中心とした広範囲に水害をもたらしました。のちに「関東・東北豪雨」と呼ばれる災害です。

 この雨の影響によって、茨城県を中心とした地域に大雨特別警報が発令され、同日9時5分に茨城県知事が陸上自衛隊施設学校(勝田駐屯地)に対して、孤立者の救助やボートによる避難支援、土嚢などによる水防活動等に関する災害派遣要請を行いました。

 防衛省・自衛隊は約11日間に及ぶこの派遣で、のべ人数約7535名、のべ車両数約2150両、航空機はのべ約105機を派遣し、人命救助作業等にあたりました。

 この災害は、朝からテレビ各局で生中継されました。押し寄せる濁流に、いまにも飲み込まれそうな家屋の屋根には、孤立し助けを求める住民の姿が映し出されていました。勢いを増す水流と、家屋の壁に次々と押し寄せる瓦礫に、万事休すかと思われたその時、1機の陸上自衛隊のヘリコプターが飛来しました。群馬県に司令部を置く第12旅団の多用途ヘリコプター、UH-60JAです。

 第12旅団第12ヘリコプター隊のUH-60JAは、現場に到着するや否や、すぐに人命救助活動を開始しました。当然のことながら、濁流が押し寄せている場所に着陸することはできません。また、家屋の屋根に降りることもできません。そうしたなかUH-60JAは、機体に取り付けられた「ホイスト」という装置を使って細いワイヤーに吊られた隊員を降ろしていきました。

救助のさなかの、機内の様子

 この「ホイストワイヤー」の先端にはフックが取り付けられていて、ハーネスを装着したUH-60JAに同乗する機上整備員(FE:フライトエンジニア)を吊り下げ、地上(家屋の上)まで降ろしていきます。機上整備員が孤立者(要救助者)を確保すると、もうひとりの機上整備員がホイストを巻き上げて機内に引き上げます。こうした動作を繰り返して、UH-60JAは多くの孤立者を救助しました。

 この救助を成功させた裏には、UH-60JAに搭乗する4名の卓越したチームワークがあったからこそといえます。

 UH-60JAには、機長と副機長の2名が操縦桿を操作し、人命救助などの場合には2名の機上整備員が同乗し、計4名でフライトするそうです。全員で機内から現場を確認し、機長の判断で救助する孤立者の優先順位を決定します。降下して救助する機上整備員のホイストを操作するのは、上述のように機内に残るもう1名の機上整備員になります。

 機長席の後ろに、ホイスト操作をする装置があるのですが、この装置は微妙な機体の移動もできるようになっています。つまり、UH-60JAには操縦桿が3本あるということになります。これは、機体の真下に下がるホイストワイヤーの行き先が、機長席などからは確認することが困難で、要救助者を収容する機体中央から直接真下を見ることができる機上整備員の方が、より正確な位置を把握することができるからです。

 この時、機長と副機長は機体の安定を最優先に考えて操縦し、2名の機上整備員が連携して孤立者の救助にあたります。機体を安定させる機長や副機長も、次に救助する孤立者の位置と、その周囲の状況をつねに監視しているため、飛行中には非常に高い集中力が要求されるとのことでした。

海や空とは異なる陸の事情とは?

 ちなみに、海上自衛隊と航空自衛隊もUH-60Jという、ほぼ同じ性能を持つ機体を持っていて、海上自衛隊は「降下救助員」と呼ばれる隊員が、航空自衛隊では「救難員」と呼ばれる隊員が要救助者の救助にあたっています。「降下救難員」も「救難員」も厳しい訓練を乗り越えた者だけが、その専門職に就くことができますが、陸上自衛隊では海空自衛隊のように「救助」を専門としたスペシャリストを養成しているわけではありません。

 実は陸上自衛隊の場合は、機上整備員が本来の任務に付随して行われる「付帯任務」として、救助任務にあたっているのです。訓練も、普段の作業の合間を縫って、ホイストなどを使用した訓練を独自に行っているといいます。

 こうした救助活動を実施できるのは、UH-60JAだけではありません。同じく陸上自衛隊が保有するUH-1Jもホイストを装備していることから、要救助者などを直接、機内に引き上げて救助することができます。

 大災害などの困難な現場に自らの身を投じて、要救助者を救助することができるのは、ひとえに高い使命感を持っているからなのでしょう。全自衛官は入隊時、万が一の際には「事に臨んでは危険を顧みず、身を持って責務の完遂に務め、もって国民の負託にこたえる」という、「服務の宣誓」を行いますが、それを体言しているというわけです。

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