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気付けば3本だけの「ひかりレールスター」 山陽新幹線のエース、その栄枯盛衰

  • 2018年10月28日
  • 乗りものニュース

山陽新幹線を代表する列車として活躍した「ひかりレールスター」が、ひそかに役目を終えようとしています。航空機からの顧客奪還という使命は、新しい列車たちが引き継ぐことになりそうです。

「ひかりレールスター」って何?

 山陽新幹線で8両編成の700系電車が走っています。しかも、白地に青ではなく、灰色の車体に窓まわりは黒(ダークグレー)、窓下に黄(サニーイエロー)の帯をあしらった独特な姿です。車体側面には「Rail Star」のロゴがあります。「i」の点が「★」で、彗星が尾をひいているようなデザイン。これが「ひかりレールスター」です。

 車体番号は7000番台が使われており、東海道・山陽新幹線の700系とは区別されています。「ひかりレールスター」という名前は、700系7000番台と、700系7000番台を使った「ひかり」に与えられた愛称です。

「ひかりレールスター」で運転する「ひかり」は、全盛期には25往復の定期列車に加えて臨時列車も設定されていました。しかしいまでは定期列車3本と臨時列車2本だけです。とても寂しくなりました。

 現在、700系7000番台は山陽新幹線の「こだま」を中心に運用されています。「ひかりレールスター」による「ひかり」の定期列車は、新大阪発博多行きの「ひかり443号」、博多発岡山行きの「ひかり440号」、博多発新大阪駅行きの「ひかり442号」です。さらに臨時列車として、姫路と博多を結ぶ「ひかり576号」「ひかり577号」が運行されています。

 700系7000番台は1999(平成11)年から2006(平成18)年にかけて16編成が製造されました。ほとんどの車両は製造から18年が経過しています。「ひかり」として走る「ひかりレールスター」は、このまま消えてしまいそうです。

 しかし「ひかりレールスター」こそ、まさに山陽新幹線のスターでした。栄光の列車はなぜ誕生し、衰退したのでしょうか。

航空機の乗客を奪還せよ!

 山陽新幹線は東海道新幹線を延伸する形で建設されました。1972(昭和47)年3月に新大阪〜岡山間が開業、1975(昭和50)年には博多まで開業して全通しました。当時は国内航空運賃も高く、東京〜博多間、新大阪〜博多間の高速化は歓迎されました。しかし、1986(昭和61)年ごろから国内航空の規制緩和が始まります。

 1987(昭和62)年に発足したJR西日本は、国内航空規制緩和による危機感から、山陽新幹線の魅力アップに着手します。1988(昭和63)年からは0系電車の普通車の5列シートを4列に改造した「ウエストひかり」を新大阪〜博多間で運行。短い編成にする一方で運行頻度を高くし、待たずに乗れる便利な列車にしました。1993(平成5)年には山陽新幹線で「のぞみ」の運行も始まり、京阪神〜九州北部間は山陽新幹線が優位でした。

 ところが、1998(平成10)年にスカイマークエアラインズ(現・スカイマーク)が羽田〜福岡間に初就航し、翌年に伊丹〜福岡線の運航を開始しました。スカイマークエアラインズは、機内サービスを減らす代わりに運賃を安くするという戦略です。しかしそれまで就航していた日本航空と全日空も値下げで対抗しました。結果、航空機が利用しやすくなり、山陽新幹線のシェアを脅かします。

 一方、「ウエストひかり」は増加した「のぞみ」を待避する必要に迫られ、所要時間が延びてしまいます。スピードの遅い0系のままでは航空路線の好調に対抗できません。そこで、当時の最新鋭車両だった700系を投入し、「ウエストひかり」のバージョンアップを図りました。こうして700系7000番台「ひかりレールスター」が誕生しました。

快適設備とサービスで「山陽のスター」に

 700系7000番台は8両編成で、すべて普通車です。1号車から5号車までが自由席、6号車から8号車までが指定席。自由席の比率を上げて「すぐに乗りたい」「予定が決まらない」という要望に対応しています。予約と荷物検査が必要な航空路線に対して「便利」な列車です。4号車から8号車までは「ウエストひかり」を受け継いで4列シートです。指定席を利用する人はゆったり。4号車と5号車の自由席はちょっとおトク感がありますね。

 5号車から8号車までの車端、壁側の座席は、テーブルが大きく電源コンセントを備えた「オフィスシート」です。コンセントは「ひかりレールスター」の誕生時はまだ珍しく、出張で利用する人にはうれしい装備でした。8号車は4人用個室が4部屋あります。ビジネスパーソンの打ち合わせ、グループ旅行、子ども連れに便利です。

 現在は廃止されてしまいましたが、ユニークなサービスとして「サイレンスカー」がありました。始発駅発車前や終着駅到着前などを除き、原則として車内放送をしません。座席のチケットホルダーにきっぷを入れておくと、車掌さんも声をかけずに確認してくれました。車内販売のワゴンも声を出さず、静かに通ります。車内で眠りたい、仕事や読書などに集中したいという人に歓迎されました。

 0系「ウエストひかり」より速い700系7000番台「ひかりレールスター」は、「のぞみ」の通過待ちも少なく、スピードアップと運行本数の増加を容易にしました。室内設備も好評で、ダイヤ改正のたびに運行本数を増やしました。停車駅パターンも増えて、2009(平成21)年ごろまでに定期列車だけでも25往復が設定されました。

「さくら」「みずほ」誕生の陰に…

 2008(平成20)年8月、「ひかりレールスター」の廃止方針が報じられました。当時、人気の絶頂にあった「ひかりレールスター」の廃止は話題になりました。しかし、廃止の理由は営業成績の低下ではありません。2011(平成23)年に九州新幹線と直通する新列車を設定するため、その列車に「ひかりレールスター」の役割を継承させよう、という前向きな理由でした。

「ひかりレールスター」の転換は2010(平成22)年3月ダイヤ改正から始まりました。東京〜広島間の「のぞみ」が博多まで延長されたため、時間帯の近い「ひかりレールスター」の定期列車のうち5往復が臨時列車になりました。

 2011(平成23)年3月12日のダイヤ改正で九州新幹線が全線開業。N700系の「みずほ」「さくら」が山陽・九州新幹線で直通運転を始めました。「みずほ」は「のぞみ」に相当する速達型。「さくら」は「ひかり」に相当する通過型の列車です。報道されていたように「ひかりレールスター」の一部が「さくら」に置き換わります。この傾向が今日まで続き「ひかりレールスター」は減便されていきました。「ひかり」の運用を失った「ひかりレールスター」の車両は「こだま」として走り始めます。「こだま」に使われた100系電車は2012(平成24)年3月に引退しました。

「さくら」のN700系は8両編成で、当初から九州新幹線と山陽新幹線向けに造られました。内訳は5列シートの自由席普通車が3両、4列シートの指定席普通車が4両、グリーン席と4列シートの普通車指定席を合わせた車両が1両です。4列シートの普通車指定席という部分が「ひかりレールスター」の名残でしょうか。「サイレンスカー」や個室はありませんが、グリーン席はあります。全盛期の「ウエストひかり」へ先祖返りしたともいえそうです。

 現在、「ひかりレールスター」は風前の灯火です。山陽新幹線内だけを走る「ひかり」はほかにもありますが、N700系を使っているため「ひかりレールスター」ではありません。もし、「ひかり」として走る「ひかりレールスター」が消滅するとどうなるでしょう。「こだまレールスター」に改名されてしまうでしょうか。

 JR東海が開発する次期型新幹線車両「N700S」は短い編成にも対応しているため、いずれ「さくら」もN700Sになるかもしれません。将来、700系7000番台が廃止されると、車両としての「ひかりレールスター」も消えてしまいます。しかし、「ウエストひかり」「ひかりレールスター」に与えられた「航空機というライバルに勝利する」という使命は、N700系の「のぞみ」「ひかり」「みずほ」「さくら」が引き継いでいます。

 ところで、2018年5月から姫路〜博多間で臨時列車の「ひかりレールスター」1往復が走り始めました。この臨時列車は同年秋の臨時列車としても引き継がれています。JR西日本はこの臨時列車専用の割引きっぷ「ひかり576早特きっぷ」「ひかり577早特きっぷ」を設定し、特設サイトも用意して宣伝中。このプロモーションが、「ひかりレールスター」の「最後のひかり」となるかもしれません。

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