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東京の環状道路「環八」「環七」の下に環状地下鉄構想 そのメリットと課題は

  • 2018年10月25日
  • 乗りものニュース

東京は都心から郊外へ伸びる鉄道が放射状に多数整備されていますが、郊外同士を結ぶ環状方向の路線は多くありません。現在、環八通りと環七通りの下を通る環状地下鉄路線が構想されていますが、実現にはどのような課題があるのでしょうか。

郊外から郊外へ向かう環状路線

 東京を中心とした地域では、東京都心とその周辺の都市、郊外を結ぶ複数の鉄道路線が放射状に伸びています。

 これに対し、都心から外れた郊外同士を結ぶ鉄道路線は少なく、とくにJRの山手線と武蔵野線に挟まれた地域同士を結ぶ公共交通はバスに依存しているのが現状です。鉄道に比べて単に時間がかかるだけでなく、渋滞に巻き込まれるというリスクもあります。

 しかし、鉄道を整備しようという構想がないわけではありません。現在、都道311号環状八号線(環八)と都道318号環状七号線(環七)の地下を通る「区部周辺部環状公共交通」の整備が、沿線の自治体により検討されています。

 区部周辺部環状公共交通の構想区間は、羽田空港から田園調布、荻窪、赤羽、亀有などを経て京葉線が通る葛西臨海公園までを結ぶ約73km。海がある部分を除き、山手線の外側をほぼ一周します。ただし、羽田空港から田園調布駅までは既設の京急空港線、東急多摩川線と別の新線構想(蒲蒲線)があるため、実際の整備区間は田園調布〜赤羽〜葛西臨海公園間の約60kmになります。

 このうち田園調布〜赤羽間の約31kmは、環八の地下を通ることから「エイトライナー」、赤羽〜葛西臨海公園間の約29kmは環七にちなんで「メトロセブン」と呼ばれています。もともとはエイトライナーとメトロセブンの沿線自治体が別々に建設推進運動を展開していましたが、1997(平成9)年に両者が「連携」を宣言。これ以降は一体的な路線として扱われることが増えました。

 詳細なルートや駅の位置などは何も決まっていません。これまで行われた調査では、整備区間内の42か所に駅を設置することを想定。このうち約20駅は郊外と東京都心を結ぶ鉄道路線との連絡駅になると見られます。

 ちなみに、東急多摩川線に直通することも想定されており、この場合は東急田園調布駅の西側に設けられるエイトライナー田園調布駅から東急の多摩川駅までを結ぶ線路も建設されます。

使わない人も便利になる

 実際にこの路線が開業すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。まず考えられるのが、郊外から別の郊外への移動時間の短縮です。

 複数の路線から都心から放射状に伸びている現在の鉄道ネットワークは、郊外から都心へ通勤するのには便利です。しかし、郊外から別の地域の郊外に向かう場合、いったん都心に出る必要があり、時間がかかってしまいます。

 たとえば、東急東横線の田園調布駅(大田区)から西武新宿線の井荻駅(杉並区)に向かうとします。鉄道を使うルートは東急東横線〜JR山手線〜西武新宿線の23.0km。直線ルート(約15km)の1.5倍強という長さで、所要時間も平日日中で約50分かかります。また、少なくとも渋谷と高田馬場の2駅で乗り換えなければなりません。

 これがエイトライナーなら、途中の乗り換えが不要。距離と時間も短縮されます。田園調布〜井荻間の場合、直線距離より少し長い程度(約17km)になりそうですから、所要時間は10〜20分くらい短縮されると思われます。

 メリットがあるのはエイトライナーやメトロセブンの利用者だけではありません。郊外から都心にいったん入って別の郊外に向かう人がエイトライナーやメトロセブンの利用に切り替えれば、都心に向かう路線の利用者が減ります。これにより混雑が緩和されますから、エイトライナーやメトロセブンを使わない人にもメリットがあるのです。

 ただ、こうしたメリットはあるものの課題も山積しており、すぐに実現する可能性はひじょうに低いといえます。国土交通大臣の諮問機関・交通政策審議会も、2016年4月に答申した「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」で「(エイトライナーとメトロセブンは)事業性に課題がある」と記しており、早期の実現は困難だろうという見方を示しています。

 その最大の理由は「お金」。距離が比較的長い路線ということもあり、建設費は約1兆円かかるとされています。その一方で想定される利用者数は必ずしも多いとはいえません。郊外から都心に移動する人に比べ、郊外から別の郊外へ移動する人はそれほど多くないためです。

建設費だけではない「利便性」の課題

 そのため最近は「スマート・リニアメトロ」方式で建設することも検討されています。これは都営大江戸線などに導入された小型のリニアモーター地下鉄(リニアメトロ)を改良し、さらに小型化するもの。これによりトンネルを小さくするなどして建設費を抑えようというわけです。しかし、この方式を採用しても建設費は約9000億円かかるといわれています。

 また、スマート・リニアメトロは東急多摩川線の規格や仕様と異なるため、直通運転は不可能です。たとえば田園調布駅ではエイトライナーのホームを可能な限り東急多摩川線のホームの近くに建設するなど、乗り換え時間の短縮を図る必要があるでしょう。

 田園調布駅のほかにも、ほかの鉄道路線の駅との連絡が不便にならないよう、最大限に考慮する必要があるでしょう。乗り換えに時間がかかるようなら、全体の所要時間は都心にいったん出るルートと大して変わらなくなる可能性もあります。これではエイトライナーとメトロセブンを建設する意味が薄れてしまいます。

 ただ、環八、環七と交差している鉄道路線は、必ずしも交差する部分に駅を設けているわけではありません。たとえば環七通り(メトロセブン)と総武本線は、総武本線の新小岩駅から約1.5km、小岩駅から約1.2kmの地点で交差していますが、交差地点に総武本線の駅はありません。

 このような場合、メトロセブンを新小岩駅か小岩駅に迂回(うかい)させるか、あるいは交差地点に総武本線の新駅も整備しなければ、実質的には乗り換えできません。しかし、距離が長くなる迂回ルートは建設費を高くしてしまいますし、総武本線に新駅を設けるなら同線を運営するJR東日本の協力も必要です。

 このように、全体の建設費がひじょうに高くなる一方、安くしようとすれば利便性が低下する可能性があるというジレンマを抱えています。コストを抑えた場合はどの部分が不便になり、逆に便利にした場合はどのくらいのお金が追加で必要になるのかなど、さまざまなケースを想定した検討が今後も続けられることになるでしょう。

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